昨日幕を閉じた第98回高校野球選手権大会は、古豪作新学院(栃木)がエース今井を中心に投打ががっちり噛み合い、54年ぶりに全国制覇を果たしてみせた。非常に強いチームだった。
それでは振り返っていきたいのだが、今大会はオリンピックも重なったためやはり観戦時間はかなり限られてしまった。注目選手は沢山いたのだが、その選手達の姿を追うことで精一杯であり、試合をしっかり見ることは出来なかったと感じている。ご了承いただきたい。
過去記事はこちらから→「第98回高校野球選手権大会注目選手」
まずは優勝した作新学院について少し触れておきたい。33歳の小針監督は若くして作新学院の監督となり、チームを一気に全国レベルのチームに育て上げてみせた。私は長野県出身なので、長野県のチームは毎年注目しているのだが、小針監督が指揮を取るようになってから09年の長野日大、12年の佐久長聖、15年の上田西と私が記憶しているだけで3回作新学院と対戦している。どの年も非常に骨太なチームだと感じた。09年は現巨人の松崎を要して強力打線を形成していたし、12年はここ数年の長野県の代表高の中では力があると見ていた佐久長聖を粉砕する迫力あるチームだったし、15年は初戦で完封勝利を収めた2年生エース草海を子ども扱いして見せた。
小針監督のもとめきめきと力を付けている印象だったのだが、今大会でもエース今井が見事なピッチングを見せると3試合連続ホームランを記録した入江など迫力満点の打線も繋がり、決勝までほぼ危なげなく勝ち上がってみせた。大会前は本命視とまではされていなかったのだが、終わってみれば一番強いチームが優勝したという印象である。33歳の青年監督だがすでに小針監督は高校球界の名将である。
さてここからは選手個人を振り返ってみたい。
履正社の寺島は、完成度の高さを見せ付けてくれた。ここ数年で甲子園に出場したサウスポーの中では現中日の濱田達郎(愛工大名電)と同格くらいの完成度の高さだったと感じる。濱田の場合、最後の選手権は本来の調子から程遠かったため、3年の夏の投球自体では寺島の方が上に感じる。ストレートに関しては威力もコントロールも申し分なかった。変化球はスライダーを中心に良くまとまっていた。おそらく昨年の小笠原(東海大相模→中日)よりも寺島の方が上なのでは?と評する専門家が多いのではないだろうか?ドラフト1位で消えそうである。
同じ履正社のサウスポー山口は常総学院打線に掴まってしまい、良いところは見せられなかったのだが、スリークォーターから投げ込まれるストレートは切れ味抜群だった。今後鍛えていけば面白い投手になりそうである。光るものは見せてくれた。
埼玉県予選で圧倒的な数字を残した花咲徳栄の高橋は、予選に比べてボールが走らず苦しんだ。これまでも感じていたどこかもっさりとした印象が拭いきれなかった。それでもストレートの威力は超高校級であり、こちらもプロ志望届けを出せばドラフト1位で消える可能性がありそうである。
横浜の藤平もストレートのキレが抜群だった。高めのストレートに振り遅れたり、差し込まれたりする打者の姿が目立った。ストレートを軸にこれだけ三振を奪えるところは魅力的である。寺島、高橋同様ドラフト1位で消える可能性が高そうである。
常総学院の鈴木もセンバツ同様上手さだけでなく力強さも加わった投球も見せてくれた。下級生時から甲子園のマウンドを経験し、その投球センスは群を抜いていたのだが、それだけではない部分も見せてくれた。しかし伸びしろという意味ではどうだろうか?プロのスカウトがどのような評価をするのか気になる選手である。
広島新庄の堀は昨年よりも成長した姿を見せてくれたのではないだろうか?去年はとにかく全力で投げ込むイメージだったのだが、今年はいい意味で打者を見下ろしながら投げることが出来たのではないだろうか?やはり切れ味抜群のストレートは魅力的だった。
木更津総合の早川は、高校レベルでは圧倒的な完成度を誇っていた。ゆったりとしたフォームから球速表示以上に感じるであろうストレートを投げ込んでおり、コントロールも抜群だった。現巨人の杉内のような投手に成長して行くのだろうか?大学進学が濃厚とのことだが、今後の4年間で1つ武器になる変化球を習得することが出来るだろうか?それが出来れば4年後にはドラフトの目玉になっているのではないだろうか?
創志学園の髙田、近江の京山は初戦で打ち込まれ姿を消してしまったのだが、いずれもフォームが綺麗であり、腕の振りもしなやかだった。10年前であれば世代トップを狙えるようなボールを投げていたと思う。それでも打ち込まれてしまうのだから高校球界のレベルは年々高くなっていると感じる。
松山聖陵のアドゥワは、190センチを超える長身ではあるのだが、ボディバランスが良く、フィールディングも軽快だった。それだけで才能である。完成するまでにはまだまだ時間は掛かりそうだが、しっかり鍛えればプロでの活躍も見込めそうである。
最後に事前記事では名前を上げなかったのだが、やはり作新学院の今井が名実ともに今大会№1投手だったのではないだろうか?150キロを超えるストレートにスライダー、空振りを奪えるフォークと素晴らしかった。もう少しコントロールに難があり、粗い投手なのでは?と感じていたのだが、そんなイメージとはかけ離れた投手だった。大会前までは寺島、藤平、高橋のBIG3と呼ばれていたが、この今井もその3人に肩を並べたと見て良さそうだ。いわゆるドラ1レベルの投手である。
野手では、中京の今井が、数字こそ平凡であり一発も飛び出さなかったのだが、しっかりフルスイングすることが出来ていた。やはりあれだけ振れるということはそれだけで魅力的である。本人がプロ志望であるのであれば下位で指名される可能性もあるだろうか?
鶴岡東の丸山は高校生とは思えないような身体つきをしており、今井同様しっかりスイングすることが出来る強打者だと感じた。守備、走塁面までは確認できなかったのだが、この選手も素材としては相当面白いと感じる。
いわゆる清宮世代と呼ばれる2年生の中では履正社の安田の2年生とは思えない逞しい身体と豪快な打球が印象に残った。また横浜の増田は横浜らしい華のあるプレーヤーに感じた。木更津総合の峯村、常総学院の宮里は少しスランプ気味だったため、また来年に向けて状態を上げていってもらいたいと感じた。
プロ注目の東邦藤嶋、秀岳館九鬼はしっかり結果を残して見せた。藤嶋はあくまでも投手志望との話もあるのだが、やはりより魅力を感じるのは右中間方向へも長打を放てる打撃である。個人的には完全に打者として見てみたいと感じる。即プロの方が良いのか?大学、社会人を経由した方が良いのか?本人の選択はどちらだろうか?
九鬼に関しては、何かと話題を振りまいた秀岳館で捕手としてしっかりチームを支えて見せた。打撃はまだまだ粗くプロレベルからすると厳しい印象なのだが、鍛治舎監督から鍛えられた捕手としての実力は今大会でも上位ではないだろうか?この選手もドラフトに掛かる可能性はあるだろうか?
今大会はほとんど見ることが出来なかったため振り返りもイマイチの内容になってしまったのだが、皆様の中では印象に残る選手はいましたか?特にヤクルトのドラフト目線という意味で気になった選手がいれば是非コメントいただければと思う。
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コメント
私も藤嶋が是非欲しいと思いました。投手志望は残念ですが、打撃の方が唯一無二の存在と言っていいと思うくらい、素晴らしいです。高卒外野手はヤクルトにどうしても欲しいですから、上位指名してもいいと思います。野手に転向はいつでもできますし。
それから一塁手でしたら作新の入江。今井の影に隠れたですが、投手としても良いものを感じましたし、何より身体能力が高そうです。
捕手は小川監督推奨である明徳の古賀も良かったですが、北海の佐藤大はまだ二年生なのですね。私はこの捕手が攻守ともに良く来年に期待かと思います。
やっぱり戦前の予想通り寺嶋が1番の評価ですね、右打者へのクロスファイヤのコントロールも威力もあるので杉内の体が大きくなったようなイメージですね。
ドラフトは寺嶋か創価大の田中の二者択一ですね。
他はあまりいなかったですが作新の今井は優勝したから勝てる投手なんでしょうね、
それと藤嶋は打者ですよね、中日も地元なんだしこういう選手を取った方が人気でると思うのですけどね。
> trefoglinefanさんへ
走守という意味では分からない部分もあるのですが、藤嶋のバッティングはパンチ力もあって魅力的ですよね。
明徳の古賀は見れなかったのですが、課題とされていたバッティングでもかなりの数字を残したんですよね?高校時代の中村のようなタイプでしょうか?
> kさんへ
寺島良かったですね。早いテンポで自分の空間に相手を引き込んでいくような投手としてのテクニックも見せてくれていたように感じます。ドラフト1位で消える選手でしょうね。