ボクシングファンに永遠に語り継がれるであろう、WBC世界スーパーバンタム級の新王者・長谷川穂積(35)=真正=の奇跡の3階級制覇となった。16日、エディオンアリーナ大阪で強打の王者ウーゴ・ルイス(メキシコ)に挑み、9回終了TKO勝ち。1カ月半前に左手親指を脱臼骨折しながら、圧倒的不利の下馬評を覆し、最後はロープ際の猛烈な打撃戦を制した。
(デイリースポーツ引用)
更新が遅くなってしまったのだが、どうしても書きたい記事だったので記しておきたいと思う。長谷川穂積については過去にこんな記事も書いているので貼り付けておきたい。→「長谷川穂積」
私がボクシングを見始めてから様々な日本人選手を見てきたのだが、長谷川の登場以降、日本人ボクサーのレベルが上がったのではないか?と感じさせるほど、他のボクサーに影響を与えた選手だと思っている。辰吉を2度リングに沈め、西岡の4度の挑戦を跳ね返したウィラポンからベルトを奪取した試合は、スピード感溢れるボクシングで日本ボクシング界が新時代に突入するのでは?という期待感を抱かせたし、そのウィラポンとの再戦で見事なカウンターを決めてKO勝ちしたときには大興奮したし、様々なタイプの挑戦者を次々にKOで葬っていった時には、異次元の強さを感じさせてくれた。持ち前のスピードを活かした打たせずに打つボクシングはどこまでもスタイリッシュに感じたし、魅力に溢れていた。相手に何もさせないような試合も印象に残っているのだが、KO出来なくてもディフェンス面で魅了する試合もあり、見ていてワクワクするボクサーだった。
しかし過去記事にも記してあるように、2010年の11度目の防衛戦でモンティエルにKO負けして以降、これまでの長谷川のようなスタイリッシュなスタイルのボクシングが影を潜めてしまった。長谷川の気持ちの強さが裏目に出ているのかな?とも思ったのだが、おそらく単純に以前のような相手を華麗に捌くスタイルが出来なくなってしまったためにこういったスタイルを選ばざるを得なかったのではないだろうか?パンチを被弾することも増え、それとともに打たれ脆さを露呈することも増えていった。正直キコ・マルチネス戦でKO負けで引退するものだと思ったのだが、長谷川はそれでも現役に拘った。しかしその後も完全復活と呼べるような試合はなく、正直今回のウーゴ・ルイス戦もかなり不利な戦いになることが予想された。
しかし今回のルイスとの世界戦はその不利な予想を覆してTKO勝利を飾って見せた。正直初回のバッティングでルイスが鼻から出血し、本来の力を出せなくなったという幸運も重なったのでは?と感じる部分もあるのだが、初回から踏み込んでの左ボディストレートがたびたびヒットするなどパンチ力のあるチャンピオン相手に互角以上に渡り合って見せた。そして公開採点で2-1とリードを奪った後の9回にドラマが待っていた。ルイスの左アッパーを被弾し、ぐらついたところにルイスがここが勝負所とばかりにロープに詰めて長谷川に連打を浴びせてきたのだ。最近の長谷川の試合を見ているファンであればかなり嫌な予感がした方が多いのではないだろうか?しかしロープ際で長谷川はルイスのパンチに応戦して見せた。この場面は、もう漫画「はじめの一歩」の世界だった(宮田一郎の試合でこんな試合展開があったように記憶している。)。チャンスとばかりに打ち込んでくる相手に対して打ちあってより多くの有効打をヒットさせ、相手をリング中央まで戻して見せた。テレビの実況も解説も「打ち合ってはいけない。」と絶叫する中で長谷川は打ち勝って見せた。数秒前まで絶体絶命のピンチに追い込まれていると感じていた長谷川が最後は主導権を奪って9ラウンドを終えてみせたのだ。会場の「穂積コール」も含めて鳥肌ものだった。そして10回のリングにルイスが上がることはなかった。長谷川のパンチがルイスの心を折ったのではないだろうか?大興奮の9回TKO勝利となった。
10度防衛していた頃に今の長谷川の姿は想像できなかった。その頃とはボクシングスタイルも変化し、ファンの長谷川に対する視線も変化してきているように感じるのだが、この試合がこれまでの長谷川の試合の中でも記憶に残る試合になったことは確かではないだろうか?このシチュエーションでこの試合展開となると「辰吉VSシリモンコン」戦を思い出した。あの試合も辰吉絶対不利の中で若き王者シリモンコンをリングに沈めて大興奮したことを覚えている。まさか長谷川穂積の試合を見て辰吉丈一郎の試合を思い出すことになるとは思いもしなかった。
私はいわゆる「全盛期」の長谷川のボクシングが大好きだったため、今のボクシングは正直怖くて怖くて見ていられないくらいである。ファンの勝手な願いとして「引き際を間違えないで欲しい。」と思っているのだが、長谷川はまだチャンピオンとしてリングに戻ってくるのだろうか?この決断は長谷川本人にしか出せないことだし、私達ファンは見守るしかないのだろう。
前回の記事では「お疲れ様でした。」という言葉を使ってしまったのだが、今回は「おめでとうございます。」である。もうすぐ36歳となる伝説のボクサー長谷川穂積の歴史を見ることが出来ている私は幸せ者である。
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