稲葉監督を労いたい

オリンピック

東京オリンピックの野球で日本が金メダルに輝いた。自国開催で「日本のため」にオリンピック競技として復活してもらったような印象が強く、オリンピックの種目としてどうなのかな?という思いはあるのだが、メジャーの選手が出場せず、国内のトップチームで臨んでいるチームも日本と韓国のみというような状況で、負けたら非難が集中し、勝っても「当たり前だ。」と言われるような空気感の中で戦い抜いた稲葉監督を労いたい気持ちが強い。
私自身、今回のような参加国数、参加選手、レギュレーションで「野球」をオリンピック種目に加えるということには反対である。今回のオリンピックで野球が復活したからと言って「野球」という競技が世界に普及していくとは思えないし、正直日本の野球人口に歯止めがかかるとも思えない。お粗末な大会だと思っている。
しかし日本には日本で本気でオリンピックの金メダルを取りに行かなければならない事情があることも重々承知しているつもりである。「野球」は日本の人気スポーツの一つであり、オリンピックの「野球」に関しても、公開競技で行われたロサンゼルスで金、ソウルで銀、正式競技となったバルセロナで銅、アトランタで銀とアマチュア選手で輝かしい結果を残し続けてきた。日本人にとってオリンピックは一大イベントであり、大きく報道され続けてきたのだが、「野球」に関しては、金属バットを使用したアマチュア選手のみの大会となっており、他競技に比べて扱いも小さかった印象がある。もちろんアマチュア選手にとってはオリンピックは一つの大きな目標となっており、オリンピックを目指してドラフトが凍結される選手もいたし、「ミスターアマチュア野球」杉浦正則氏のように「打倒キューバ」に執念を燃やす選手もいた。しかしトップ選手が出ていないことへの違和感があったことも事実である。
プロの選手が解禁となったのは、2000年のシドニーオリンピックの予選からである。当時はまだプロとアマの壁が今以上に大きくプロの選手を派遣するのかどうか?派遣するとしたらどのような形で派遣するのか?などかなりの議論があったことを覚えている。シドニーの予選、本戦ともにプロ・アマ混成チームで戦ったのだが、この時はメダルを逃してしまった。その後アテネ、北京はオールプロで大会に臨み、他国のメンバーと比較した中で常に「金メダル」が期待され続けたのが、アテネは銅メダル、北京は4位に終わり、そのままオリンピック競技から消滅することになってしまった。
おそらく日本球界にはプロを派遣した中で戦ったオリンピックで思うような結果を残せなかったということが痛恨の出来事として残っているのだと思う。だからこそ今回のような歪なレギュレーションでのオリンピックであっても選手、首脳陣、スタッフは他競技の選手とはまた違った種類のプレッシャーも感じながら、全力で金メダルを取りに行く必要があった。

私のような穿った考え方をしている野球ファンは、今回のオリンピックを純粋に楽しむことは出来なかったのではないか?と推測するのだが、「勝って当たり前」というプレッシャーがある中で競り合いをことごとく勝利しながら5戦全勝で金メダルを獲得したという部分については、選手、首脳陣を大いに称えたいと感じている。日本には日本の野球文化があり、稲葉監督も様々なしがらみの中で采配を揮う必要があり、非常に困難なタスクを担っていたのだが、選手の選考方法、采配含め、今回のオリンピックに合わせた形でしっかり監督の責任を果たしてくれたと思う。おそらく今後も大会のレベルやレギュレーションの問題もあり、優勝しても高く評価されないようなことがあると想像するのだが、時間をかけて完成度の高いチームを作ったことで、他国に比べて競り合いに強い、野球巧者のチームにを作ったことは間違いないと感じる。稲葉監督には是非「オリンピック優勝監督」としてこれからも胸を張り続けてもらいたい。

P.S ヤクルトファン目線で行くと国際試合では慣れないDHでの出場が増える山田がシーズンとはまた違った積極性でチームを引っ張ったこと、村上の決勝での左中間への一発はワールドクラスの一発だと感じたこと、マクガフが代表チームでもフル回転していたことが印象に残りました。ペナントレースへの影響は心配ですが、各国の代表として全力プレーをする姿はヤクルトファンとして誇れるものとなりました。

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コメント

  1. sabo より:

    「勝って当然」と言われるプレッシャーを押しのけての金メダルは素晴らしい。正直想像以上に危ない試合が多かったし、その中で勝ちぬけるのは流石オールジャパンでした

    そしてMVPには山田哲人が選ばれましたね
    打って走っての活躍は負傷まえのトリプルスリーを思い起こさせました
    というか「山田全然走れるじゃん」ですよ
    ペナント中はどこかまだ完治しきれないなかでのプレーだったのかと考えましたけど、これならまだ来年はトリプルスリー狙えるくらい足は問題無いでしょう

  2. FIYS より:

    saboさんへ

    稲葉監督へのプレッシャーは非常に大きかったと思うのですが、チーム全体で跳ね除けましたね。

    山田は国際大会では積極的にスイングを掛ける姿が印象的です。初見の投手でもしっかり盗塁を決める姿は、「流石山田。」といった感じでしょうか。

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