雄平引退へ

選手

ヤクルト・雄平外野手(37)が今季限りで現役を引退することが28日、分かった。2003年に東北高からドラフト1巡目で投手として入団し、10年シーズンに野手へ転向。持ち前のフルスイングで、15年にリーグ優勝を決めた試合では決勝打を放った。通算で18勝、881安打を記録した背番号41が19年間、着続けた燕のユニホームを脱ぐ。
(サンケイスポーツ引用)

今シーズンは出場機会を失っていただけに「もしかしたら。」という覚悟は出来ていたのだが、ついに引退の報道が流れてきた。高校時代からスター選手であったこともあり、思い出深い選手の一人である。
ドラフトの記事や高校時代のブログ記事などで何度か触れてきたのだが、東北高校時代のピッチングは当時かなりの衝撃を覚えた。確か2学年上に後藤という横浜べスターズにドラフト指名される好投手がいたのだが、その後藤を差し置いて、当時1年生だった高井雄平が宮城県のライバル校である仙台育英に完封勝利を収めたということがあったように記憶している(記憶違いだったら申し訳ありません)。東北高校入学直後からすでに世代のトップランナーだった有名人である。左腕から150キロを超えるストレートを投げ込み、スライダーのキレは高校生では攻略困難なレベルだった。投げるボールの破壊力は当時の高校球界では抜けた存在だったのではないだろうか?打撃と身体能力の高さにも目を見張るものがあったのだが、私は「投手高井」に大いに期待していた。そんな高井雄平がヤクルトに入団することになり、どんな投手に成長していくのか非常に楽しみにしていたことを覚えている。
ルーキーイヤーから先発のマウンドを経験し、初登板となった神宮での巨人戦はテレビ中継もされていたため、観戦できたことも覚えている。勝ち投手にはなれなかったが、巨人相手にも堂々としたピッチングを披露し、打席では高橋尚成からフェンス直撃の2ベースヒットを放ち、度肝を抜かれたことも覚えている。プロの打者相手でもストレート、変化球ともに空振りを奪うことが出来、投手として素晴らしい才能を持っていることを感じさせてくれたのだが、2年目以降は制球難に苦しむこととなる。中々思うような投球が出来ず、投球フォーム含め試行錯誤している様子が見られた。そんな日々が続く中でいつの間にか入団当初の輝きは失われてしまった。

そして2009年シーズン終了後に打者に転向することとなる。もちろん高校時代からそのバッティングセンスの高さも評価されていたのだが、入団からすでに7年が経過しており、その間投手として必死にもがいてきたため、非常に難しい挑戦であることは明らかだった。打撃はもちろんのこと守備、走塁面でも課題は多く、その課題を克服するために2軍で血の滲むような努力を続けてきたことは周知の事実である。野手「雄平」として1軍での出場機会を得たのは、野手転向3年目の2012年シーズンだった。そこから徐々に出場機会を増やしつつあったのだが、2013年には右膝の負傷により、長期離脱となってしまった。正直私個人としては、この段階で雄平は選手としてかなり厳しい立場に置かれてしまったと思っていたのだが、雄平のプロ野球選手としての最盛期は、この後に訪れた。2014年シーズンに初めてレギュラーに定着すると以前に比べて打席で粘れるようになり、フルスイングしながらも率も残せる打者として3割を超える打率に23本のホームランを放ち、ベストナインを獲得すると翌2015年シーズンには、個人成績は落としてしまったのだが、チームのリーグ優勝に貢献し、優勝を決めるサヨナラヒットも放ち、ヤクルトにはなくてはならない存在となっていった。野手として1軍に定着したのがすでに30歳の時だったことを考えるとプロ野球の歴史の中で稀有な存在だったことが浮かび上がってくる。そこからヤクルトになくてはならない存在になったのだからその努力は大いに称えられるべきである。高校時代はスーパースターだったのだが、決して器用な選手という印象はなく、野手転向が遅かったこともあり、守備、走塁面に関しても本当にゆっくりと力を付けていった印象である。スーパースターという立場を経験した人間がこれだけ泥臭い努力を重ねてプロの世界でも才能を開花させたという事実が何より尊く感じる。
打撃面に関しては、37歳という年齢でもまだまだ伸びしろがありそうな雰囲気もあっただけに、もしかするともう一度キャリアハイのような数字を残す可能性もあるのでは?と密かに期待していた部分もあったのだが、今シーズンで引退ということになってしまった。

高校時代のスーパースターとしての姿、ゴールデンルーキーとしてマウンドで躍動した姿、スランプに陥り試行錯誤している姿、野手転向直後の2軍でもがいている姿、野手として初めて1軍で出場している姿、レギュラーを獲得し、チームの軸として活躍している姿、ベテランになっても良くも悪くも若々しさを感じさせてくれた姿、高井雄平という選手にはその時々で様々な姿を見せてもらったと感じている。19年間のプロ野球生活本当にお疲れさまでした。そしてありがとうございました。

にほんブログ村 野球ブログ 東京ヤクルトスワローズへ
にほんブログ村








コメント

  1. 超匿名 より:

     一軍で全く出場していなかったので、そろそろ危ないかなと思っていました。残念です。スワローズではどちらかというと細身の選手が多い中、太い腕からの豪快なスイングでのホームランが忘れられません。稀な経歴から得た経験を後進に伝えていって欲しいですね。お疲れさまでした。

  2. FIYS より:

    超匿名さんへ

    プロ野球選手の中でも中々濃厚な野球人生を送っていますよね。フルスイングしながらしっかりボールにコンタクトできる技術を見ているとやはり打者としてのセンスも持ち合わせていたことを感じますよね。

  3. JEF九郎 より:

    『雄平って誰だろ』

    当時、神宮までは頑張れば徒歩圏内だったため、暇な休日に試合があれば、良く夕食と散歩がてら足を運んでましたが、今ほどデイリーに情報を追いかけていなかったので、最初彼があの高井とは気がつきませんでした。

    上背は無いですが、上田に並ぶアスリート型外野手が彗星の如く現れ、強烈な印象を受けた記憶が今でも甦ります。

    野手転向からここまでの実績を積み上げるには、並大抵の努力でなかったことは容易に想像がつきます。

    何度か遠征先の宿舎でお見掛けした際もファンに笑顔で対応していましたし、人柄も素敵な方だったのではないでしょうか。

    可能であれば彼の中で蓄積された経験値を、若い選手に受け継いでいっていただければと強く願います。

    長い間大変お疲れ様でした。

  4. FIYS より:

    JEF九郎さんへ

    身体能力の高さは野手として活かせるようになりましたよね。ある程度投手として実績がある中での野手転向ということで非常に難しいチャレンジだったはずなのですが、主力選手になりましたからね。人柄含めて素晴らしい選手ですよね。

  5. sabo より:

    投手から野手転向した選手はいても18勝してから野手転向した選手はいないんじゃないか
    そして野手転向してど真ん中が当たらない状況から3年ほどで結果を見せたのも凄い
    2014の飛躍。2015優勝決定サヨナラタイムリーヒットも懐かしい

    引退試合では見事ヒットを打ちましたね。
    ストレート縛りとはいえ森浦は外のコーナーを突く本気勝負だったと思います
    それを一発勝負で打っちゃうんですから雄平は持ってるなぁ
    正直二軍で打てていないので無理だろうと思ってましたが雄平は2015優勝決定サヨナラタイムリーといい「持ってる男」ですね

    引退後は指導者の道を希望するという記事が出ていましたが無事楽天のコーチとして招聘されそうですね
    雄平はプレイスタイルはワイルドですが、練習では投手としても野手としてもすぐフォームチェックのポイントを増やしてしまう「気にしい」な性格らしく、その繊細な部分が上手く指導に活かせたら名コーチになれるのではと感じてます

    しかしYouTuberやタレントとかにならなくて良かった(笑)
    多分向いてないと思ってたし

  6. FIYS より:

    saboさんへ

    投手としてもモノになりかけましたからね。私は投手高井により魅力を感じていました。しかし野手に転向してからの努力は並大抵のものではないのでしょうね。不器用でも結果を残しましたからね。2015年の優勝決定タイムリーはいつまでも記憶されるでしょうね。

タイトルとURLをコピーしました