まずはオリックスとオリックスファンに拍手を。

日本シリーズ第7戦
ヤクルト4-5オリックス(ヤクルト2勝1分け4敗)

昨年、今年と2年続けてヒリヒリするような素晴らしい日本シリーズを見させてもらった。昨年はヤクルトが激闘を制し、オリックスファンからも称賛の言葉を貰うことが多かったシリーズだったように感じる。今年も激闘続きのシリーズとなった。5戦目、6戦目、7戦目とヤクルト側に守備でも致命的なミスが出てしまったことで、激闘に多少水を差す形になってしまったことが残念ではあるのだが、ワンミスが勝負を分ける、実力が拮抗した日本シリーズだったことに違いはない。今はヤクルトファンとして明日のゲームが見られなくなってしまったこと、2年連続日本一のチャンスを逸してしまったことによる脱力感が強いのだが、まずは日本一となったオリックスとオリックスファンの皆様に拍手を送りたい。
オリックスは今シーズン、後半巻き返して大激戦を制して、2連覇を達成していたのだが、シリーズで戦ってみて、リリーフ陣を中心にしっかり戦力を整えてきたことを感じることが出来た。昨年以上に強いチームだと感じた。もちろんヤクルトもそんなオリックスと互角に戦えるだけの力はあったのだが、それだけにタイムリーエラーによる失点の連続があまりにも痛かった。もっといい日本シリーズに出来たのではないか?もっと勝てたのではないか?2年連続日本一に手が届いていたのではないか?という悔しさを来シーズンに繋げてもらいたい。第4戦からの4連敗については、攻守ともにミスが敗戦に直結してしまった。「負けに不思議の負けなし。」、故野村克也氏の言葉が染みる日本シリーズとなった。

ヤクルト先発サイスニードは、シリーズの流れ的にも絶対に先制点は許したくなかったのだが、試合開始の初球のストレートを太田に捉えられ、打球はセンターバックスクリーンに飛び込む、先頭打者ホームランとなり、わずか1球で先制点を許してしまった。太田が最も腕を伸ばして捉えられる真ん中低めにボールが入ってしまった。悪いボールとは言えないのだが、痛い失点になってしまったのは間違いない。その後のピンチを凌いで何とか試合は崩さなかったものの、シリーズの流れを考えるとヤクルトにとっては重くのしかかる1点になってしまった。
しかしサイスニードの調子自体は、まずまず良かったのではないだろうか?初回のピンチを凌いだところからペースを取り戻し、2回~4回までは、オリックス打線をパーフェクトに抑えてみせた。しかしヤクルト打線も宮城を捉えられない中で、5回に大きな落とし穴が待っていた。先頭の伏見にヒットを許すと、続く宮城の送りバントがチャージをかけた村上とサイスニードの間に転がるバントヒットとなり、ピンチが広がると、何と続く太田の送りバントも村上が判断を誤り、内野安打にしてしまい、思わぬ形で0アウト満塁のピンチを招いてしまった。もう1つも負けられない状況で1点すら許したくなかったがために気持ちばかりが先走ることとなってしまった。それでも続く宗をファーストオスナの好守もありダブルプレーに仕留め、何とか2アウト2,3塁まで持っていくことが出来たのだが、続く中川圭に四球を与えると、4番吉田正には、インコースを狙ったストレートが押し出し死球となってしまい、与えたくなかった1点を与えてしまうと続く杉本のセンターフライを塩見が落球してしまい、これが走者一掃のタイムリーエラーとなってしまった。スコアは0-5と大差が付いてしまい、非常に苦しい展開となってしまった。これが短期決戦の怖さなのだろう。4戦目で拙攻が続き、攻めの継投を選択したオリックスに完封負けを喫してしまい、第5戦ではタイムリーエラーも絡む中で逆転サヨナラ負けを喫してしまったことにより、シリーズの流れを失ってしまった。オリックスの投手陣から中々得点を奪えないというプレッシャーがじわじわとヤクルトを追い込んでいくことになったのではないだろうか?普段以上に緊張感が高い中で戦う中で、普段では考えられないようなミスが続出してしまった。今日の5回表の4失点は、今シリーズのヤクルトを象徴するようなイニングとなってしまった。
それでもその後、大西ー田口ー石山ー清水というリリーフ陣が試合を壊さなかったのは見事だった。オリックスのリリーフ陣は強力だったのだが、ヤクルトはヤクルトでリリーフ陣は奮闘してくれた。今日は、0-5と大差が付いている場面でも気持ちのこもった投球を披露してくれた田口の投球が印象的だった。今シーズン何度も嫌な流れを断ち切り、チームに流れを呼び込んだ田口らしい投球を見せてくれたのではないだろうか?

打線は、今日も先発宮城に苦しんだ。前回は山田の3ランホームランが飛び出し、黒星を付けることが出来ていたのだが、昨年の2戦目、今年の3戦目、そして今日の7戦目と、いずれもしっかり自分の投球を披露してくれたところに宮城の投手としてのセンスの良さを感じさせられることとなった。前回の登板時にも書いたのだが、これだけ打者が打てないコースにボールを集められる投手は中々いない。こういった技巧的ピッチングに特徴のある一流のサウスポー投手というのは滅多にお目に掛かれない。ボールのキレ、コントロール、緩急を使って打者を抑え込んでいく姿は、方々の玄人が絶賛するだけのことはある。今日であれば、5回裏の1アウト1,3塁代打川端という場面で川端に1回もバットを振らせずに三振を奪った投球が見事だった。カウント球も勝負球もストレートであり、間にボールとなる変化球を交えていたのだが、おそらく手を出しても内野ゴロになってしまうようなコースにボールを集めることが出来ており、百戦錬磨の川端に何もさせなかった。こんな投球はeスポーツであれば可能なのかもしれないが、現実の世界でやってのけてしまうのだから驚いてしまう。同学年の怪物佐々木朗希、ヤクルトのエース候補奥川恭伸という超高校級の投手に囲まれて、高校時代は多少影が薄くなっていたのだが、宮城は宮城で違ったタイプの怪物である。メカニック的に再現性が非常に高いため、常に投手優位な状況で打者を観察しながら投げていることが伺える。昨年、今年のシリーズで2つ黒星を付けることが出来たものの、素晴らしい投手という印象ばかりが残った。
それでも打線は8回に見せ場は作ってくれた。この回からマウンドに上がった山崎颯から塩見、丸山和の連打でチャンスを作ると、山田は三振に倒れてしまったものの、村上にタイムリーが飛び出し、1点を返すと、続くオスナがカウント2-1からの変化球を捉え、打球はライナーでレフトスタンドへ飛び込む3ランホームランとなり、点差を一気に1点差まで縮めてみせた。CSファイナルステージから、このオスナのバットで何度もチームを勝利に導いてもらってきたのだが、今日も仕事を果たしてくれた。村上という稀代の大打者の後ろを任される打者は、誰であろうとも難しさがあると思うのだが、様々なプレッシャーが掛かる中でも本当によく結果を残してくれた。最終的に勝利には繋がらなかったのだが、神宮球場の雰囲気を一変させる見事な一撃だった。
この一発で流れが変わりそうな雰囲気もあったのだが、その後は比嘉ーワゲスパックのリレーの前に完全に勢いを断たれてしまった。ここはもうオリックスのリリーフ陣に脱帽である。

オリックスは間違いなく強いチームだったのだが、ヤクルトもそのオリックスに勝てるだけの力は持っていたと思う。それだけにミスが続いてしまっての4連敗という結果は、非常に悔いが残る結果となってしまった。打撃でも守備でも精彩を欠いてしまった山田、村上、四球やエラーが絡む中で勝利を逃してしまい、今日はベンチから外れてしまったマクガフ、試合の流れを渡してしまうタイムリーエラーを喫してしまった塩見とチームを引っ張らなければならない主力のミスで日本一を逸してしまったということも言えるシリーズとなってしまった。シーズン中であれば、こういったゲームがあれば反省して次戦以降で取り返すことも可能なのだが、日本シリーズという短期決戦では、日本シリーズ中にしか取り返すことは出来ない。4連敗を喫してしまったゲームはいずれも反省材料の多いゲームだったのだが、もう来シーズンの開幕戦まで公式戦は行われないのである。選手たちは持っていきようのない悔しさを抱えてオフシーズンを過ごすこととなる。この悔しさを来シーズンに繋げてもらいたい。今シリーズが終了したことにより、チームは来季に向けてまた作り直していくこととなる。今シーズン長岡や内山壮、木澤が飛び出したように、また新たなメンバーも加えながら、強いヤクルトを維持していってもらいたい。
日本一になるチャンスを逃してしまった印象が残り、一ファンとしても悔しいものがこみあげてきているのだが、それでも2年続けて日本シリーズで素晴らしい戦いを見せてくれたヤクルトスワローズの選手、首脳陣、関係者の皆様には感謝したい。やはりこういった頂上決戦をヒリヒリした気持ちで観戦できることは幸せなことである。
ヤクルトファンの皆様応燕お疲れさまでした。そしてオリックスファンの皆様日本一おめでとうございます。


にほんブログ村 野球ブログ 東京ヤクルトスワローズへ
にほんブログ村








コメント

  1. 名無し より:

    今年も誠にお疲れ様でした。
    最後は勝てませんでしたが、選手たちの意地は見られたと思います。
    来年もこの時期まで試合を見たいですね。
    来年3月のWBCも今から楽しみです。

  2. アーム より:

    自ら勝利の女神を手放してしまった形になって悔しすぎる日本シリーズでした。

    ただヤクルトの維持も見れたし、オリックスの日本一になるんだという執念も見れた日本シリーズでした。


    来年もこの舞台にヤクルトが立てるように充実したオフシーズンを送ってくれることを願っていますが、心配なのはマクガフ、塩見、山田は来年にも影響が残らないといいですが。。。

    FIYSさんも毎試合、詳しく丁寧にヤクルトの記事を書いてくれてありがとうございます!

    今までずっと読むだけの自分でしたが今年、初めてコメントして楽しかったです(^^)

  3. 超匿名 より:

     無念の敗退でしたね。ファン贔屓もあるかもですが、世間の予想と違ってヤクルト有利だと思っていたので二勝後の逆転四連敗に結構ショックを受けています。試合後の監督の涙を見てこちらも泣きそうになってしまいました。シリーズ前にヤクルトが敗れるパターンは山本に二勝を許した場合だと予想していましたが、山本どうこうではなく守備ミスと相手のリリーフ陣がイメージ以上に良かったですね。
     投で心配なのはマクガフです。オリックスと相性が悪いのか、大舞台に弱いのか、そもそも抑え失格なのかということは私みたいな素人にはわかりませんが、首脳陣にはそこら辺の分析をしてもらいたいですね。個人的には次にシリーズでオリックス相手に戦う時に九回を任せることに、期待より不安の方が大きいです。
     打の方は山田ですね。ホームラン一本打ったことよりも、シーズンに続いてシリーズも打率が寂しい数字で終わったことが気になりました。ここまで打てないものかと。まだ30歳なのにこのまま下り坂ではこちらも寂しい。体の状態がどうなのかわからないですけれど、オフに鍛えなおして復活してもらいたい。
     最後にポストシーズンも全試合更新お疲れさまでした。もう一つの野村監督超えとなるシーズン三連覇を期待して来季を待ちたいと思います。

  4. JEF九郎 より:

    まずはオリックスファンの皆様、26年振りの日本一、誠におめでとうございます。随分鍛えられたチームで、そつがなく、強かったです。神宮にいらっしゃったファンの方々も穏やかな方々が多く、オリさんと二年連続で頂上決戦出来てよかったなと率直に感じました。


    今年に関しては完全に力負けかなと。
    ヤクルトは昨年から追い掛ける展開は少なく無く、その中で多くの劇的勝利をものにしてきましたが、第二戦・七戦と秘技『燕の呼吸壱の型:燕返し』を発動させながらも、試合をひっくり返す迄には至らずでした。


    第七戦を現地で観てきたので触れると、私が着目してた監督の感ピューター的には、高津さんが最後少しブレたというか悩みが出た結論が裏目に出たかなと思ってます。


    ・二番 レフト キブレハン
    ・代打の切り方


    高津さんは選手を信じるマネジメントが特徴だと思いますが、マグガフや山田を使い続けた一方、今年青木を押し退けレギュラー格に成長した山崎は動かしてしまった。

    確かに打つ方は不調で、山田も絶不調の中不安はあったと思います。しかも相手先発は宮城。

    ただ、結果論ですがその判断があの5回のラオウさんの左中間タイムリーで、キブレハンのカバーミスが発動し、2失点で済んだ可能性が高いプレーを3失点にしてしまい、燕返しで追いつかない点差にしてしまいました。

    因みにあのプレー、ちょうど席が打球が落ちた正面の最前列だったのですが、塩見のエラーではなく、寧ろ塩見だから追いついて補球チャンスが生じたと捉える方が自然だと思います。また、センターが補給に行った中で、本来はキブレハンはカバーに回らなければならないところを、彼まで補球に行ってしまった。あれが山崎なら足もありますし、塩見と守り慣れてる中で1塁ランナーはホームには帰れなかったような気がしてしまうのです。

    また、今度はキブレハンをスタメンで使った事で、打つ方のカードの切り方がチグハグになった印象が有りました。川端のところもキブレハンの方が宮城としては投げづらかったような気がします。


    長文になっちゃいましたが、そんなこんなで不安要素少なく、そつなく試合を運べたオリさん強かったなと。また、私的には比嘉投手こそMVPかなと。再三の火消しお見事でした!


    最後にFIYSさん、今年も1年間大変お疲れ様でした。コメ中々出来ませんでしたが、いつも楽しみに拝読してます。ありがとうございました!

  5. FIYS より:

    名無しさんへ

    そうですね。この時期まで贔屓チームの試合が見られることは幸せですよね。来年もこの時期まで応援したいですよね。

  6. FIYS より:

    アームさんへ

    沢山コメントを頂きありがとうございました。アームさんのように反応して頂くとブログを書く励みになります。

    悔しい日本シリーズとなってしまいましたが、来年はリーグ3連覇、日本一奪回を期待したいと思います。

  7. FIYS より:

    超匿名さんへ

    終わってみれば、2連覇のチャンスがあった日本シリーズでしたよね。こういったチャンスは中々巡ってこないのでモノにしたかったですよね。

    マクガフに関しては、昨年は失敗がありながらも良く投げてくれたという評価をしていました。今年は四球や自らのエラーが絡んだ中での失点ということで精神的なダメージが心配ですよね。

  8. FIYS より:

    JEF九郎さんへ

    2年続けてリーグチャンピオンのオリックスと戦えたことは良かったですよね。5~7戦が自らのミスで勝利を手放してしまったのは残念でしたが、昨年に引き続き面白いシリーズでしたよね。

    いつもブログを読んで下さりありがとうございます。

  9. sabo より:

    追い上げながらペナント優勝し勢いそのまま日本シリーズに迎えた去年に比べて

    今年の日本シリーズは2戦目と5戦目をしっかり勝っておけばスワローズが優勝できたと思いますが、実力自体はオリックスにあったかな。勝敗数4対2というのは実力通りだと感じます

    オリックスは数と質を揃えすぎるくらい揃えたリリーフ陣は噂通りでしたが、私が一番感心したのは吉田中川杉本外野手の守備が想定より上手かったことですね

    一方で我がスワローズが想像以上に健闘したのは去年同様先発陣が結果を残したことでしょう
    うちの先発でも中村のリードで吉田杉本らを抑えられた
    (シーズン中は打たれちゃうのは中6日の疲労やなんやなんでしょうね)
    投球に関しては対戦相手を研究して丁寧に突くというシーズン中やっていたのが正しかったのだと思います

    それにしてもMVPは杉本ってのは……かなり不満です(笑)
    俺としては断然に宇田川でしょう!優秀選手賞にすら選ばれないのはやはりまだリリーフへの評価が間違ってると思われます
    杉本のOPS.541でしょ。本塁打0で三振10。
    せめて2勝無失点の山崎福とかあると思うけどなぁ

    こんな選考だとちょっとシーズンのB9GGもどうなるか心配です

  10. FIYS より:

    saboさんへ

    そうですね。2戦目、5戦目(特に5戦目)は勝っておきたかったですよね。

    昨年のシリーズもそうでしたが、MVP争いは混沌としていましたね。確かに宇田川は素晴らしい投手でしたね。

タイトルとURLをコピーしました