今年も箱根駅伝は面白かった。駒大見事な三冠達成。100点のレースを展開した中大のプレッシャーを跳ねのける横綱相撲だった。それでは復路を中心にチームごと振り返ってみたい。
総合優勝 駒大
・大八木監督が常勝チームを作り上げたのは2000年代初頭だった。その後も常に強いチームを作っていたのだが、箱根では、噛み合わないこともあり、中々総合優勝に手が届かないシーズンが続いていた。しかし前々回大会で最終10区での大逆転優勝を飾って以降、また強い駒大が帰ってきた印象である。層の厚いチームだからこその三冠達成である。4年生の層が非常に暑い青山学院大や完璧な駅伝をした中大を退けての箱根総合優勝、シーズン三冠達成は、非常に価値の高いものとなった。
復路に関しては、8区の花尾がエントリーを外れ、スーパールーキー佐藤も起用出来ない状況だったのだが、6区の1年生伊藤が58分22秒という好タイムで区間賞を獲得すると、その後のランナーも全員が区間5位以内でまとめ、追いかける中大との差を守ってみせた。おそらく1ミスでもあれば、中大にひっくり返されていた可能性があっただけに、そのプレッシャーの中で逃げ切ったことに強さを感じさせてくれた。
2位 中大
・往路の能力の高いランナーがしっかり結果を残し、復路のコツコツと力を付けてきた上級性も常に攻めの走りで実力を出し切ってみせた。上位でレースを進めることが出来たからこその復路の好走だったと思うのだが、藤原監督就任以降徐々にチームを整え、ついに総合2位にたどり着いた。往路の5人は、どのランナーも箱根を通過点にしたいような力のあるランナーである。
復路に関しては、駒大がノーミスでレースを進める中、中大もよく粘ってみせた。6区若林が58分39秒の好タイムで流れを維持すると7区以降も駒大との差を詰め切れない中でもしっかり力を出し切ってみせた。箱根駅伝のような長丁場のレースでは、単独走でもしっかり走れる上級生の存在は必要である。
3位 青山学院大
・特殊区間を予定していたランナーにアクシデントがあると青山学院と言えでも難しいレースになってしまうことを思い知る箱根駅伝となった。当初6区予定だった脇田を5区に置かざるを得なくなってしまったことから歯車が狂ってしまった。しかしそれでも9区岸本の快走で3位を確保したのだから、素晴らしい。
4年生が7人走ったのだが、チーム内で素晴らしい競争が出来ており、来シーズン以降も簡単には崩れないチームになっているのではないだろうか?今回の3位についても個人的には「負けて尚強し。」という印象を持っている。
4位 國學院大
・今シーズンは出雲駅伝2位、全日本大学駅伝2位と結果を残していたチームらしい、素晴らしい走りを見せてくれたのではないだろうか?エース格中西を欠き、復路は苦戦も予想されたのだが、起用された1,2年生が結果を残してくれた。往路終了時点で前田監督が「4位で悔しがれるチームになった。」とコメントを残していたが、本当にその通りだと思う。今の2年生が卒業するまでに総合優勝を狙いたい所だろう。
5位 順大
・力のあるランナーは多いのだが、今大会は凸凹の多い駅伝になってしまった。それでも復路のポイントとなると思われた7区浅井、8区平が区間3位、10区の西澤が区間賞という好走で、チーム順位を引き上げてみせた。来シーズンに向けて主力格の4年生は抜けてしまうのだが、スーパールーキーと呼ばれるであろう吉岡(佐久長聖高)が入学してくる来シーズン以降も楽しみである。
6位 早大
・花田監督の想定通りにレースの流れに乗ることが出来たのではないだろうか?復路では山口が欠場となり、鈴木も実力を発揮しきれたとは言えなかったのだが、6区北村の58分台の好走で復路の流れも作れたことが大きかった。8区~10区の選手も区間中位で踏ん張ってみせた。いいレースが出来たのではないだろうか?
7位 法大
・坪田監督が仕上がりに自信を見せていただけのことはあった。チーム全体の底上げが進んでいることを感じることが出来た。6区武田で勢いを付けるところまでは想像できたのだが、8区宗像の区間賞には驚かされた。9区中園も上位で繋ぎ、総合7位に繋げてみせた。これまではサプライズ的なシード権獲得が多かった印象なのだが、今回はしっかり実力通りのシード獲得という印象である。
8位 創価大
・注目された7区葛西は見事な走りで区間賞を獲得してみせた。おそらく本調子にまで持っていけなかったと思うのだが、これまでの経験を活かす見事な走りだったと思う。往路と復路バランスよく選手を配置した中で上位で戦えたことは来シーズンに繋がるはずである。前々回大会の往路優勝、総合2位のインパクトが非常に強かったのだが、復路の戦いぶりを見ていると8位でもチーム力は付いてきていることを感じさせてくれた。
9位 城西大
・城西大は、往路の躍進はメンバー的にあり得ると思っていたのだが、復路で1,2年生中心のメンバーでここまで粘るとは思ってもみなかった。斎藤、キムタイ以外にも20キロ以上の距離をしっかり走れるランナーが育ってきていることを感じることが出来た。5区山本唯が残る来年も非常に楽しみである。
10位 東洋大
・往路の前半で大きく出遅れながらも、ギリギリシードに滑り込んでみせた。この辺りは東洋大の伝統がなせる業だろうか?8区木本の区間賞、9区梅崎の区間4位の好走でシードラインまで上げることが出来た。5区前田の力走を復路に活かすことが出来ていた。苦しいチーム状況でも諦めずに戦うことが出来ていた。
11位 東京国際大
・復路にも粘って走れるランナーは残しているかな?という印象があったのだが、追い上げたかった8区宗像がブレーキ気味になってしまったことが痛かった。ヴィンセントというワールドクラスのランナーと一緒に成長した4年生がごっそり抜けてしまう来シーズンは大事な1年になると思うのだが、しっかり箱根路に戻ることは出来るだろうか?個人的には東京国際大もチームとしての伝統のようなものが出来始めていると感じているため、簡単には崩れないチームにはなっていると思う。
12位 明大
・トラックではしっかりタイムを残すことが出来ているのだが、ロード、駅伝で中々結果を出すことが出来ない。これが明大の悪い伝統のようになってしまっているのが気になる。箱根駅伝というものだけに捉われる必要はないのだが、学生にとって一番の大舞台となっているだけにもう少し何とかしたい所があるのではないだろうか?6区堀が上手く立ち上がり、7区杉が区間賞を獲得し、8区に加藤を配置出来ていたため、シードには届くかと思っていたのだが、加藤が伸び切らず、9区、10区でも苦しんでしまった。1区富田、7区杉が区間賞を取ったことを思うと残念な結果である。
13位 帝京大
・戦前から苦戦が予想されていたのだが、やはり現状のメンバーでもシード争いに絡むことも難しかった。しかし帝京大は、今シーズンは新たなチームを作っていくための1年であるため、今の下級生が3年、4年になる頃にもう一度シード争いに絡めるチームを作りたいというところだろう。全く光の見えないレースではなかった。
その他の大学
・山梨学院大、国士館大は留学生頼みをどこかで脱却する必要がある。上位の大学に比べてスカウティングで苦戦しているが、4年間で戦えるランナーを育てなければならない。大東大は厳しい往路となってしまい、その状況を打開するだけの戦力はなかったが、チーム状態は上向きであるため、来シーズン以降も楽しみである。逆に東海大は、黄金世代と呼ばれた世代に総合優勝1回に終わってしまって以降、チーム状態が下降線を辿っている。石原や花岡、今回走れなかった吉田などはいるのだが、来シーズンはどうだろか?立大は、しっかり襷を繋げたこと、4年生抜きで箱根の舞台を経験できたことが大きい。元々大学のブランド力もあるため、これからが楽しみである。
シューズ革命以降、学生ランナーの中間層の底上げが進んでいる印象である。もう10000m28分台、5000m13分台は、一流の証とは言えなくなっている。タイムも飛躍的に伸びてきており、箱根駅伝ではレースの流れに乗ることが非常に重要になってきている。層を厚くすることとゲームチェンジャーの存在両方を兼ね備えていなければ総合優勝は難しい時代に突入している。今回の駒大はまさにそういったチームを作り上げたのではないだろうか?
一時は時代から取り残されそうになった駒大大八木監督がもう一度復権したことも印象に残った。何はともあれ、駒大の見事な総合優勝だった。
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