WBCの好きな所、苦手な所


WBCの第5回大会が開催中であるのだが、今大会も日本では大いに盛り上がっている。今大会は、特に大谷やダルビッシュなどの大物メジャーリーガーも参加しており、過去の大会と比べても一段と盛り上がっている印象がある。私自身も何だかんだとテレビ観戦をし、楽しませてもらっている。
しかし以前のブログ記事でも少しだけ触れているのだが、どこかこの「WBC」という大会にモヤモヤした気持ちを持ち続けているのも事実である。そこで今日は改めて私がこの「WBC」という大会をどのように感じているのか、自分自身で整理してみたいと思う。

WBCの好きな所
①メジャーリーガーが参加した中での国別対抗戦が実現したこと。
・私達のようなアラフォー世代より上の年齢の野球ファンからすると、世界トップレベルの選手が参加した中で行われる国別対抗戦が実現したことは夢のような話である。
サッカーやバスケットボールに比べて世界に普及しているスポーツではないため、オリンピックでも84年のロサンゼルス大会から最初は公開競技として始まり、プロの選手の出場が認められたのは、00年のシドニー大会からである。しかしバリバリのメジャーリーガーが出場することはなく、本当に国のトップレベルの選手を揃える国は日本を含め、数か国しかなかった印象である。08年の北京オリンピックを最後に一旦オリンピック競技から除外されてしまった(東京オリンピックで一旦復帰)のは、トップ選手が揃わないことも要因の一つだったと思われる。
オリンピックが真の世界一決定戦となり得ない状況が続いている中で始まったのが、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)だった。最初にWBCが開催されるという報道がされた時には、確か好意的に報道された訳ではなく、MLBが主導して力づくで大会が開催されることが決まってしまったというニュアンスの報道もあったように記憶している。
実際に第1回大会についても私自身は、最初はそれ程興味を持てずにいたのだが、第1ラウンドで格下と思われていた韓国に敗れたこと、第2ラウンドのアメリカ戦で疑惑の判定で勝ち切れず、サヨナラ負けしたあたりからのめり込み、最後は夢中で観戦していたことを思い出す。メジャーで実績のある選手を揃えていたアメリカやドミニカ共和国、プエルトリコ、ベネズエラなどがどういったモチベーションで戦っていたかは分からないのだが、やはりメジャーリーガーが参戦した中での国別対抗戦は華やかなものだった。
日本国内では、90年代からサッカーのワールドカップ絡みの国際試合は人気のコンテンツとなっており、野球関係者やファンの間では「野球でもサッカーのような国際試合があれば良いのに…」という声は高まっていた。そんな声に応えるような大会がWBCだったということも言えるのではないだろうか?

②野球先進国とは言えない国の様々な選手や野球文化に触れることが出来ること。
・WBCが始まるときに私が期待していたのは、この後に書く「バリバリのメジャーリーガーとNPB選手との対決」だったのだが、実際にWBCが始まってみると、メジャーリーガー以外の選手が高いモチベーションで戦う姿が印象に残った。第1回大会では、どちらかと言うと野球先進国と言えるのかもしれないが、同じアジアの韓国のパワフルかつスピーディーな野球に驚かされたし、メジャーリーガーが揃っている国々を倒して決勝に進出したキューバの底力に脅威を感じたことを覚えている。
第3回大会では、ブラジルの日本流の野球も組み合わさった野球や台湾の爽やかな戦いぶりが印象的だったし、17年大会は、イスラエルがほぼアメリカ出身選手だったもののイスラエルの名のもとにチームが一つにまとまっており、印象に残っている。
今大会でもチェコがヨーロッパの野球事情、野球文化というもので新たな風を吹かしてくれたし、準々決勝で日本と対戦するイタリアの野球も興味深いものがある。13年大会、17年大会のオランダもそうだったのだが、これまでそれ程野球の国別対抗戦で名前が挙がってこなかった国が、WBCのレギュレーションの中で結果を残したことにより、多少なりとも野球文化の広がりを感じることが出来たのは、野球観戦が趣味である私にとっては大きな出来事だった。

③バリバリのメジャーリーガーとNPB選手との対決が見られること。
・この部分がWBCが開催されるにあたって個人的に最も興味深い部分だったのだが、ここに関しては、私の期待通りに事は進まなかった。第1回は、メジャーリーガーが揃ったチームとの対戦は、アメリカ戦だけだったし(メキシコもメジャーのトップ選手が数人いたが。)、第2回でもアメリカとの対戦はあったのだが、韓国、キューバとばかり戦っている印象が残っている。第3回でようやくアメリカ以外でメジャーリーガーを揃えたプエルトリコとのゲームを見ることが出来たのだが、第4回もアメリカ(一応オランダも主力はバリバリのメジャーリーガーでしたかね?)との対戦に留まり、未だにドミニカ共和国やベネズエラと戦えていないのは残念である。しかし名のあるメジャーリーガーにNPBの選手が真っ向勝負する姿は非常に興味深く、これまで感じることが出来なかった新鮮な感情で野球観戦を楽しむことが出来る。今大会も何とか準決勝まで勝ち上がってもらい、バリバリのメジャーリーガーとの対戦が見たい所である。

④日本国内の多くの人々に野球の面白さを伝えることが出来ること。
・2006年くらいという年は、すでに巨人一極集中のNPBが徐々に崩れてきており、地上波での野球中継も減り始めていた記憶がある。野球離れという言葉も少しずつ聞く機会が多くなっていたのだが、そんな中で日本中で大きく報道されるWBCが野球の面白さを伝えてくれた。この大会を見て育った子どもたちが今の日本代表を支えている。そう考えると、これまでのWBCで戦ってきた日本代表選手達の姿がしっかり下の世代に受け継がれていることを感じることが出来る。これはWBCという大会がもたらした、大きなプラスポイントだと感じている。

WBCの苦手な所
①MLB機構中心の運営が続いていること。

・このことについては、好きな所の①にも記した通りであり、元々は「スーパーワールドカップ」というものが開催される予定になっていたものが、「9.11」が絡んだ中で白紙に戻り、突如としてMLB機構が中心となって、「ワールド・ベースボール・クラッシック」というものの開催が発表されるという流れがあった。第1回当時は私も「何か胡散臭そうな大会だな。」という印象を持っていた。最近は地上波の番組ではあまり報道されていないため、現在どのようになっているのか分からないのだが、収益の分配率もMLB機構が多く手にするとの報道もあったと記憶している。MLB機構は、WBCを開催することで、新たな選手を発掘したいという思いが強いのではないか?という見立ても成り立ちそうである。MLBで高額の契約を結んでいる選手の出場には難色を示しながら、他国の優秀な選手をMLBに招き入れようとするための大会のように感じてしまう部分があることも事実である。
苦手な部分の②、③にもつながってくるのだが、やはり本来であれば、第三者機関が運営するような大会が望ましいように感じる(現在のMLBの状態からすると無理な願いだとは感じるが…)。

②大会の公平性に欠けること。
・②については、野球の世界一を決める大会にしては、開催地や組み合わせ、日程や試合時間などが国によって偏りがあり過ぎるように感じる。もちろん大会を運営するためにやむを得ない部分もあるのかもしれないが、サッカーのワールドカップと比べるとあまりにも公平性に欠けると感じる。この部分に関しては、個人的には大いに不満であり、第1回から17年が経過しても状況が変わらないことに残念な気持ちを抱いている。日本はどちらかというと開催地や組み合わせ、日程、試合時間については、恩恵を受けている部分が大きいと思う。収益を上げるためにやむを得ない部分があることは何となく理解しているが、以前「バレーボール・ワールドカップ」に抱いていた違和感や不信感と似たものを感じている。「真の野球世界一決定戦」と言うのであれば、やはり参加国がある程度公平な状態で戦える環境を整えてもらいたいと感じる。

③ルール・レギュレーションが分かりづらいこと。
・球数制限や登板間隔がルールで定められていることについては、17年の時を経て、自分の中でも必要なことだと頭を整理することは出来ているのだが、大会の勝ち上がり方式の複雑さについては、何とか改善してもらいたい気持ちがある。今大会では、プールAが大混戦となり、5チームの勝敗が全て2勝2敗で並ぶという出来事があったのだが、どのチームが勝ち上がるか?という部分が非常に分かりづらい。失点率というものが、最優先になっているのだが、前回大会ではこのことで一旦は勝ち上がりと発表されたメキシコの勝ち上がりが取り消される事態にもなっている。このような運営がなされていては、選手、首脳陣があまりに気の毒である。
私自身ルールやレギュレーションについては、調べても分かりづらいことが多く、ニュースなどで確認しながら観戦している状態である。

WBCは、野球ファンにとって非常に魅力的なイベントではあるのだが、その反面まだまだ多くの課題を抱えているイベントであることを感じる。今大会については、日本国内でもおそらく台湾やアメリカでも大いに盛り上がっている様子があるが、大会の課題や矛盾点などについても少し考えたくなるような報道が少しはあっても良いと思う。




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