新年早々、日本では大きな出来事が続いており、新年の挨拶をすることすらためらいそうになるのだが、改めまして、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
毎年新年一発目の記事は、箱根駅伝の振り返り記事となっており、今年も同様に箱根駅伝の振り返り記事から書いていきたいと思う。事前記事は、下記のリンク先よりご確認ください。
第100回箱根駅伝ポイント | ヤクルトファンの日記 (ysfan-nikki.com)
事前記事では、①駒大に背中を見せられるチームが現れるか?、②5区山上り、③シード権予想、④その他
という4点のポイントを挙げてまとめさせてもらった。私の挙げた4つのポイントに注目してみても非常に面白いレース展開になったことが分かると思う。それでは各大学ごとに簡単に振り返っていきたい。
総合優勝 青山学院大
・今大会の大本命は、2年連続3冠を狙う駒大だったことは間違いない。しかしここ10年、大学長距離界を引っ張ってきた青山学院大は、箱根駅伝に関しては、毎年素晴らしいチームを作り上げ続けてきた実績があり、優勝出来なかった年に関しても「負けて尚強し」という印象を残す大会が多かったと記憶している。このブログでもそのようは表現を何度か使わさせてもらっていた。
その青山学院大が、チームとしての実力を如何なく発揮し、3区で駒大を逆転すると、そこからは1度もトップを奪われることなく大会新記録となる10時間41分25秒という驚異的な記録で総合優勝を果たしてみせた。やはり原監督が作り上げたチームは簡単には崩れなかったし、最強と謳われる駒大相手でも怯まないメンタル面の強さも感じさせてくれた。
それにしても駒大の三本柱、篠原ー鈴木ー佐藤が1区~3区で想定通りの走りを見せたにも関わらず、3区終了時点で首位に立ったことには驚いた。1区荒巻が先頭の篠原に喰らい付く勇気を感じる走りを見せると、2区黒田、3区太田が連続区間賞で、それぞれ、鈴木、佐藤を上回ってみせた。黒田の上り坂と後半の強さ、太田の佐藤相手でも怯まずに突っ込んでいった走りには興奮させられた。そして4区佐藤も区間賞の走りで駒大山川を引き離すと、5区若林も従来の区間記録を上回るタイムで山を駆け上り、完全に主導権を掴んでみせた。
復路は、6区野村が、駒大帰山を引き離し、7区以降は、危なげない走りで駒大を寄せ付けなかった。青山学院の強い時は、今大会のように圧倒的な勝利を収めることが多いのだが、今回は、2年連続三冠を狙った駒大相手に力でねじ伏せた所に大きな価値があると感じた。
それにしても3区太田の走りには、驚いた。佐藤やキムタイを寄せ付けずに59分47秒というタイムを叩き出したのだから、個人的には金栗四三杯(MVP)を受賞しても良かったのではないか?と感じる程のインパクトだった。
2位 駒大
・1区に当日変更で三本柱の一角篠原を投入すると、駿河台大のレマイヤンを振り切り、区間賞を獲得する理想的なスタートを切り、この時点で駒大が総合優勝に大きく近付いたと感じたのだが、それでも勝てないのが箱根駅伝というものなのだろう。篠原、鈴木、佐藤がほぼ完璧なレースをしても、3区終了時点でトップに立ったのは青山学院大だった。3区終了時点では、4秒差というタイム差だったのだが、青山学院の4区佐藤がスタートからハイペースで飛ばし、このペースに山川が追いすがることが出来なかった。強いて言えば、この4区山川が駒大にとっては多少誤算だったのかもしれない(それでも区間6位ではありますが…)。
正直、往路の山川、復路の6区帰山にもう少し走ってもらいたかったという部分はあったかもしれないが、その他の選手は大きなミスなく走り切っている。これだけのパフォーマンスを見せても優勝出来なかった事については、青山学院大を褒める他ないのではないだろうか?
昨年山区間を担った山川、伊藤に事前段階でアクシデントがあったようだが、駒大もほぼ実力を発揮した中での2位である。だからこそ衝撃も大きいのだが…。
3位 城西大
・下馬評でも表彰台に上がる可能性のあるチームと言われていたが、往路の5人が完璧な走りを見せ、総合3位という大学史上最高順位を記録してみせた。出雲、全日本に続いて、理想的なレースを展開したことから、今年度の城西大は、地力のあるチームであったことが証明された。
それにしても野村ー斎藤ーキムタイー山中ー山本唯の往路5人のリレーは、素晴らしかった。野村が区間3位で立ち上がると、斎藤、キムタイという実力者が他校のランナーに見劣りしない走りを見せ、山中も4年生らしい走りで続くと、山本唯は、2年連続区間賞を区間新記録で達成してみせた。
復路は、往路に比べてメンバー的には落ちると思っていたのだが、上位で走るメリットを活かしながら、きっちり走り、総合3位を死守してみせた。理想通りの展開に持ち込めたのではないだろうか?
4位 東洋大
・私は、今シーズンの東洋大の出来からすると、シード権を逃す可能性もあるのでは?と感じていたのだが、2区梅崎の快走もあり、往路で4位を確保すると、復路も9区吉田の区間2位、10区岸本の区間賞もあり、3位も見える中での4位と大いに箱根路を盛り上げてみせた。東洋大は過去にも黒崎や松山のように、下馬評はそれ程高くなくても快走する2区巧者のランナーを輩出しているのだが、今回は、梅崎がその役割を果たしてみせた。下級生時に2区で快走した松山が2区に入れなかった時点で厳しくなったと感じていたのだが、梅崎、松山ともに素晴らしい走りを見せてくれた。青山学院大の原監督程、近年は結果を出せていないかもしれないが、酒井監督も大学長距離界の名監督である。今回の4位という結果は見事としか言いようがない。
5位 國學院大
・戦前は、駒大+3強の中の一校に数えられていたのだが、大会前にアクシデントがあり、山本を起用できなかったり、上原を5区に起用せざるを得なくなったり、というチーム事情があり、1区で勝負を掛けた伊地知も失速し、区間17位に沈むなど誤算もあったのだが、エース平林の快走と、箱根の距離だと厳しいかな?と思われた、複数の1,2年生の好走もあり、5位を確保してみせた。表彰台、あわよくば総合優勝も視野に入れていた中での5位という結果には、満足していないと思うのだが、ポジティブに捉えられる5位だと感じる。伊地知、平林以外は、全員1,2年生というオーダーで勝ち取った5位という順位には価値がある。辻原、田中、吉田らの1年生の走りには驚かされた。
6位 法大
・ここ数年の法大は、箱根駅伝というものをしっかり攻略してきている印象である。過去にはポジティブサプライズを数多く見せてくれる伏兵、という印象があったのだが、最近は、「個の力」に劣ってもしっかりレースの流れに乗り、6区山下りから攻勢をかける形がハマっている。
2区松永を始めとする1区~3区のメンバーも他校の実力者の前によく喰らい付くことが出来たと思う。準備段階を含めて、シードを獲得するコツのようなものを掴み始めているように感じる。復路で3つ順位を上げる走りは見事だった。
7位 早大
・5区伊藤、6区北村という計算の出来る経験者を体調不良で欠くというピンチに陥っていたのだが、粘り強く戦い、シードを確保してみせた。エース石塚も4区区間13位に沈んでしまい、下手をすると一気にシードを失う可能性もあったと思うのだが、2区山口が渡辺康幸氏の早大記録を上回る快走を披露し、5区の1年生工藤も区間6位で見事に山上りを攻略してみせた。復路の上級生ランナーもしぶとい走りを見せ、7位を確保してみせた。来季に繋がる駅伝になったのではないだろうか?
8位 創価大
・ハマれば、優勝争いに絡む可能性もあると思われていたのだが、いわゆる凸凹駅伝となってしまい、上位に喰い込むことは出来なかった。しかしこういった安定感のない駅伝になってしまってもしっかりシード権を確保したところに創価大の成長を感じることが出来た。
1区桑田、2区ムチーニが良い位置で襷を持ってきてくれていただけに、3区山森、4区野沢、5区吉田響が実力を出し切れなかったことはややもったいなかったか?それでも耐える年になると思われた今年度もしっかり結果を残したところに強さも感じさせてくれた。
9位 帝京大
・メンバー的に苦しいと思われていた昨年の箱根でもシード権争いには、顔を出せていたため、昨年以上にメンバーが揃っていると感じる今年は、十分シードが狙えるとは思っていたが、5区、6区でこれだけ苦戦しながらもシードを獲得できるのは流石帝京大である。中野監督の手腕も高く評価されている。帝京大と言えば、繋ぎの2区や山要員を無理やり作らないことで知られているが、各自のランナーが4年間という時間の中できっちり成長してきているのが素晴らしい。学生スポーツの理想の一つであり、お手本となるようなチーム作りが出来ているのではないだろうか?7区に入った小野の区間2位は4年間の集大成だったのではないだろうか?
10位 大東大
・1区西川の転倒や8区ワンジルの大ブレーキなど、ヒヤッとする場面もあったのだが、実力的にはやはり予選会校の中では№1だったのではないだろうか?5区菊地、6区佐竹の快走は、往年の「山の大東」を思わせたし、復路の好走には、層の厚さを感じさせてくれた。後はワンジルが大砲としての役割を果たせるようになれば、グッと上位が近付くはずである。個人的には、5位以内もあるかな?と思っていたため、順位的には物足りなくも感じるが、稼ぎたいランナーが稼げなかった中でのシード獲得は見事である。真名子監督の今後のチーム作りにも注目したい。
13位 中大
・個人的に応援している中大は、昨年の総合2位から、今年は総合優勝を目指したのだが、10日程前から風邪症状が出る選手が続出してしまい、大会への出場も危ぶまれていたという事情があったようだ。そんな中で上位に喰い込むのはあまりにも厳しかった。それでも各ランナーに強い気持ちを感じることが出来たし、感染を免れた4区湯浅、7区吉居駿が、結果を出したことで、今年度の中大は強かったということを多少なりとも証明できたのではないだろうか?
藤原監督は、自身も日本のトップランナーとして活躍してきた人物であり、大会当日にコンディションを作ることの大切さを誰よりも分かっている人物だと思う。だからこそ監督としての責任も感じているはずである。往路終了時には、「総合成績によっては今後のことも考えなければならない。」といった少し意味深にも感じるコメントを残していたのだが、可能であれば、もう一度箱根駅伝及び三大駅伝での優勝を狙えるチームを作ってもらいたい。
優勝候補の一角に数えられたチームがシード権を逃し、13位に沈んでしまった場合、どうしても悲壮感が漂ってしまうのだが、今回の中大に関しては、1月2日、3日時点での実力は、発揮してくれたのではないだろうか?「良いチームを作り上げていたんだな。」ということは伝わってくるレース内容だった(もちろんファンとして残念な気持ちもあるが…)。
その他の大学の印象も簡単に。
5区、10区で苦しみシードを落としてしまった東海大、留学生ランナーに依存したチームから脱却したように見えた国士館大、予選会直前に上野監督解任という大きな出来事がありながら、昨年以上に戦えるチームに仕上がっていた立大、悪循環からようやく脱出の兆しが見えた日大、エース格山崎を欠き、苦しみながらも復路で見せ場を作った日体大、復路で大きく崩れ、シードを失った順大、レマイヤン、倉島の好走が来季に繋がるであろう駿河台大、大エース吉田でも挽回が難しかった中央学院大、選手個々のポテンシャルの高さが駅伝に繋がらない明大、大後監督が退任し、新たなチーム作りが始まる神奈川大、直前の怪我で前田が往路を回避することになったものの高槻、並木、深堀が好走した東農大、国士館大とは逆に留学生ランナー依存が続く山梨学院大、各チームすでに来シーズンに向けての戦いは始まっているはずである。何チームが本戦に戻ってくることが出来るだろうか?
最後にまだ触れられなかった気になる部分を簡単に…
・三浦(順大)は、4年間ブレーキなく走り切った。それでも区間上位で走り切れなかった所に、関東学生長距離界のレベルアップを感じた(それとともに塩尻和也というランナーの特異性も改めて感じることが出来た。)
・箱根のタイムはまだまだ上がると予想する。ここ5,6年のシューズ革命によりタイムは飛躍的に伸びている。ギアの向上と選手、首脳陣の意識の変化、厚底シューズネイティブ世代の台頭など、今後もタイムが伸びる要素が多々あるように感じる。
・それだけに体調不良などのアクシデントはごまかしが利かなくなる。特に感染症対策は、全大学共通の課題。レギュレーション含めて運営面でも何らかの変更があっても驚かない。
・万全の前田(東農大)の走りを見てみたかった。
・吉岡(順大)ももう一度前田と切磋琢磨してもらいたい。今回の走りは来季に向けての光明が見えた。
・1区佐藤圭汰(駒大)も見てみたかったかな?
・渡辺康幸氏の解説は技術論から戦術論まだ幅広く、選手目線でも監督目線でも語ることが出来るため、非常に分かりやすく、興味深い。
箱根駅伝というモンスターコンテンツには、どうしても賛否両論付きまとい、メリットもデメリットもあるのだが、個人的には大いに楽しめている。今年は復路は全く見れませんでしたが、それでも楽しむことが出来ました。
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コメント
まずは時勢を考えて今年もよろしくお願いしますとだけにします。
駒沢に勝つなら青学だろうとは思いましたが、総合記録を大きく更新するタイムで圧勝した強さには呆然としました。
地元が大きく関係する大会ということで、往路3区を現地観戦しました。沿道に集まる人は目の前を通過する全ての選手に声援を送って、彼らの後押しをする光景に胸が熱くなります。この応援の仕方はプロ野球とは違う点ですね。
超匿名さんへ
箱根駅伝は地元が関わる大会なのですね。私は毎年テレビ観戦ですが、現地の雰囲気はまた独特のものなのでしょうね。
青山学院大がこれだけ圧勝するとは思いませんでした。