もうこのブログで選手としての「上野裕一郎」について触れることはないだろうな。と思っていたのだが、今日の都道府県対抗男子駅伝での走りが素晴らしかったため、もう一度このブログで触れてみることとした。
上記のブログ記事の通り、上野は、2年前の都道府県対抗男子駅伝で長野県チームのアンカーを任され、見事に優勝のゴールテープを切ってみせた。すでに立大の監督となっており、選手として練習に専念できる環境ではなく、正直他の日本のトップランナーと比べるとかなり厳しいのではないか?と見ていたのだが、そんな中でも他のランナーと互角に渡り合った中での走りは感動的なものだった。
その後は、立大の監督として、どういった選手を育て、立大の陸上長距離陣がどのような成長を遂げていくか楽しみにしていたのだが、上野自身の不祥事により、立大監督を解任されることとなってしまった。上野裕一郎のファンとしては、非常に残念な出来事であった。
その後の身の振り方というものは非常に難しいものがあったと思うのだが、上野は、ランナーとして走り続けることを選択した。「ひらまつ病院」に所属し、トラックでもロードでももう一度現役ランナーとして記録を残し始めると、年始のニューイヤー駅伝では、3区15.3キロという距離で区間6位という成績を残し、陸上長距離ファンを驚かせていたのだが、今日の都道府県対抗男子駅伝では、3区8.5キロという距離で区間3位のタイムで走り切ってみせた。
都道府県対抗男子駅伝は、ニューイヤー駅伝や箱根駅伝などと比べるとどこかお祭り的な雰囲気もあり、選手のモチベーションも各々違ってくるのかもしれないが、それでも他の日本トップクラスのランナー相手に区間3位(区間賞の塩尻とは5秒差)という成績を残したのは見事としか言いようがない。高校時代から常に注目を集めてきたランナーなのだが、紆余曲折を経て39歳となった今でも、これだけの走りを披露できるということは驚きである。年齢を重ね、多少身体も大きくなったように感じ、全盛期に比べると走りに重さのようなものを感じる部分もあるのだが、爆発力は健在である。今日のレースでは、他のランナーと競り合いながら上手くまとめた印象もあり、ここに来て駅伝巧者と呼びたくなるような巧さを感じるレースを見せてくれた。
駅伝で見せる集中力の高さと爆発力は、唯一無二である。不祥事に関しては、一ファンとしても擁護できることはないのだが、今日の走りを見て、改めて魅力的なランナーであると感じた。佐賀県チームの6位入賞に大いに貢献したのではないだろうか?競技に取り組む姿勢や考え方、練習法などは若いランナーの手本になる部分もあるのではないだろうか?
レースは長野県チームが4連覇を果たしたのだが、3区では佐久長聖高校の後輩吉岡のタイムを上野が大きく上回ってみせた。こういった走りで周りを驚かせてくれる上野裕一郎のことが私は好きである。
P.S 今日の上野の走りは見事なものだったのだが、もう一つの視点としては、やはりカーボンシューズ登場以降の記録というものは、冷静に見ていかなければならないと感じた。私は上野に関しては、すでに全盛期は過ぎたと思っているし、昨年出したトラックの記録に関してもやはりシューズなどギアの機能向上があったからこそのタイムという見方をしている。私自身長距離種目のタイムに関しては、中々昔の基準が頭から離れず、各種トラック、駅伝での好記録に心を踊らせてしまうことも多いのだが、今日のメンバーで大ベテランの上野が区間3位になったことに関しては、多少危機感のようなものも感じている。カーボンシューズ登場以降の各ランナーのタイムをカーボンシューズ登場前のランナーの記録と比較することはあまり意味をなさないのかもしれない。私は、箱根駅伝をはじめとする各種駅伝大会を観戦することは大好きなのだが、本当に世界との距離が縮まっているかどうか?という部分については、冷静な目で判断していきたいと思っている。
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