リカルド・ロペスで知った「戦慄」という感情

ボクシング


思い出ショートショート⑳

以前「戦慄が走る!日本人歴代№1ボクサー井上尚弥! | ヤクルトファンの日記 (ysfan-nikki.com)」というブログ記事を書き、その中で『「戦慄が走る」という体験はスポーツ観戦が趣味である方にとってはよくあることだと思うのだが、応援している選手の相手選手だったり、応援しているチームの相手チームに対して抱く事が多い感情だと思っている。しかし井上に関しては、ここ2試合、圧倒的な勝利を飾ってくれたのだが、その勝利に興奮するという感情よりも「恐ろしいボクサーだ。」という恐怖のような感情が先走ってしまった。こんな経験は中々出来るものではない。』ということを書かせてもらった。
この「戦慄が走る」という感情を私が最初に感じたのは、おそらくリカルド・ロペスだったように記憶している。小学生になったばかりの私は、当時からスポーツ観戦が趣味であり、ボクシングに関しても地上波で放送される世界戦は、楽しみに見ていた。当時はまだ日本人ボクサーが「国を背負って戦う」という空気感があり、当然私も日本人ボクサーに強く感情移入をしながらテレビ観戦を行っていた。当時数少なかった日本人チャンピオンの一人である大橋秀行の世界タイトルマッチも楽しみにしていたのだが、挑戦者のリカルド・ロペスは、「最強の挑戦者」と紹介されていた。それでも当時のテレビ中継では、大橋にも十分勝機はあるという論調だったように記憶している。しかし実際には、ロペスの華麗なフットワークと絶え間なく出し続ける左ジャブ、強烈で多彩な右のパンチの前に主導権を握られてしまい、4回に強烈な右ストレートで大橋がダウンを喫すると、そのダメージから回復することなく、5回にもダウンを奪われ、大橋は、そのままTKO負けとなってしまった。
子どもながらにリカルド・ロペスに対して「何て強いボクサーなんだ…」と恐ろしさを感じたものである。特に4回の右ストレートで大橋が右手をマットに付けた場面は、そのパンチの伸びと強さに圧倒されたものである。
ロペスは、その後ミニマム級、ライトフライ級という軽量級で絶対王者として君臨し、10年以上に渡って世界王者であり続けた。軽量級のボクサーとしては破格のパンチ力を持ち合わせるとともにフットワークや距離感という部分でも抜群のモノを持ち、打たせずに打つスタイルは、ボクサーの理想形のように映った。アマ・プロ通じて1回も負けることなくリングを後にしたまさに伝説のボクサーである。そんな伝説のボクサーの試合をテレビ観戦出来たことは、今では、良い記憶となっているのだが、大橋が圧倒された時の恐怖感は忘れることが出来ない。いわゆる「オーラのあるボクサー」だった。









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