山中VSモレノ

「ボクシング・ＷＢＣ世界バンタム級タイトルマッチ」（２２日、大田区総合体育館）

　王者・山中慎介（３２）＝帝拳＝が２－１の僅差判定で、挑戦者で同級２位のアンセルモ・モレノ（３０）＝パナマ＝を下し、９度目の防衛に成功した。世界王座９連続防衛は日本選手として、具志堅用高（１３回）、長谷川穂積（１０回）、内山高志（１０回＝継続中）に続き歴代４位。（日刊スポーツ引用）

過去にWBAの世界バンタム級で１２度の防衛を果たした強豪アンセルモ・モレノ挑戦者に迎えた今回の世界タイトルマッチは戦前に予想されていた通りの展開となった。「左ストレート」という明確な武器がある山中に対して技巧派モレノが山中のパンチを交わしながらポイントを奪いに行くという展開が１ラウンドから１２ラウンドまで続いていった。これだけパンチ力のある山中相手にも自分のペースでしっかりボクシングをやりきるモレノはやはり強敵だった。
今日のボクシングはどちらかというとモレノペースで進んだゲームだと思うのだが、それでもしっかり判定勝ちで防衛に成功した山中は、ただただパンチ力があるだけのボクサーではないところを証明してくれたのではないだろうか？

サウスポー同士の一戦は初回から両者のジャブの突き合いが続いた。山中は、強烈な左ストレートで世界戦でもKO勝ちを量産していたのだが、右を上手く使えずに攻撃が単調になるという課題も抱えていた。しかし今日の山中は右を積極的に使い、大砲の左が当たらなくてもモレノとポイント上で互角に渡り合ってみせた。これが山中の凄さだと思う。決して見栄えの良いボクシングではなかったし、モレノに上手く捌かれている印象もあったのだが、それでも右ジャブをしっかりを出し続けることによってモレノの一方的な展開になることを許さなかった。おそらく試合前から得意の左ストレートがモレノにヒットしないことも想定した中で練習を重ねてきたのだと思う。並みのボクサーであれば完全にモレノにペースを握られポイントアウトを許してしまう展開だと思うのだが、山中はそれを許さなかった。「紙一重」の戦いだったと思うし、会場が日本でなければ判定が逆になっていてもおかしくないような展開だったとは思うが、モレノはそれほどの強敵である。今日のような展開になることも想定してしっかり準備してきた山中陣営に拍手を送りたいと思う。

素人目には明確にどちらかに振り分けられるラウンドが少なく、９回はモレノ、１０回は山中くらいしかはっきりと優劣をつけることが出来なかった為、判定の瞬間まで気が抜けなかったが、１０ラウンド以降に山中が気持ちでモレノを上回ったのが一番の勝因に感じた。モレノのディフェンススキル、クリンチワークも見事だったが、その中でも手を出し続けた山中が接戦をモノにして見せた。世界的なテクニシャン相手に防衛を成功させたことで今後の楽しみも広がってきた。ラスベガスでの世界戦への期待もより一層膨らんできた。次回はまた山中らしいKO勝利に期待したい。


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