第93回箱根駅伝振り返り

明けましておめでとうございます。今年も箱根駅伝の振り返り記事から書いていきたいと思う。今年も諸事情により復路は全くテレビ観戦できなかったのだが簡単にまとめたい。
区間エントリーの記事はこちらから→「第93回箱根駅伝区間エントリー
前回大会の記事はこちらから→「第92回箱根駅伝振り返り

区間エントリー時の記事では青山学院も磐石の状態ではないのでは?という記事を書いたのだが、終わってみれば青山学院の層の厚さと総合力の高さが際立つレースとなった。鈴木を起用できず、主力の田村がブレーキを起こしながらも2位に7分以上の差を付けた所に改めて強さを感じることが出来た。
それでは各大学ごとに振り返っていきたい。

優勝 青山学院大学
・昨年圧勝したメンバーから久保田、神野、小椋といった主力が抜けたのだが、それでも総合力の高さは他のチームの追随を許さなかった。正直往路のメンバーに田村、下田、鈴木の名前がなかった地点で何かしらアクシデントが起きているのでは?と感じたのだが、田村、下田に関しては最初から復路に起用する予定だったようだ(田村は直前に体調を崩して復路に回らざるを得なかった事情もあったようだが…)。
往路のメンバーに関しては、他大学を圧倒できるだけのメンバーには感じなかったのだが、それでも1区の梶谷が東洋大の服部と4秒差で繋ぐと2区のエース一色が神奈川大学の鈴木に振り切られたものの1時間7分台の好タイムを記録すると3区秋山が区間賞の走りでトップに立ち、そのまま10区までトップを譲らなかった。
5区の貞永は区間8位ということで昨年までの神野のような走りは出来なかったものの他の区間で各ランナーがしっかり自分の力を発揮することができたことが往路優勝、総合優勝につながったのではないだろうか?
原監督の育成力、采配、分析力も素晴らしい。こうなると当分は青山学院の時代が続くように感じられる。一色が抜けても下田、田村のダブルエースが穴を埋めるだろうし、5区、6区も経験者が残ることになるだけに簡単に崩れることはなさそうである。連勝記録がどこまで続くのか注目されるようなチームになる可能性もありそうである。

2位 東洋大
・東洋大に関しては、出雲、全日本と上位に食い込むことが出来ず、今回の箱根も厳しいレースになるのでは?との予想もあったのだが、1区の服部の区間賞でレースの波に乗るとそのまま層の厚さも活かしながら上位をキープし続け、最終的には9区野村の区間賞の走りなどもあり、2位に食い込んで見せた。欲を言えば1区にエースの服部を起用しただけに本来であればもっと積極的に仕掛けて青山学院などとの差を広げた中で2区に繋ぎたかった気持ちもあると思うのだが、これは高望みしすぎだろうか?いくら服部とは言え他の大学も1区に主力を配置していただけに自分から引っ張ってそのまま逃げ切るだけの力はなかっただろうか?
それでも2区山本、3区口町、4区櫻岡と実力者が大きく崩れることなく走れたことで上手く上位争いの中でレースを進めることが出来たように感じる。9年連続3位以内という記録も立派である。

3位 早稲田大学
・早稲田も実力のある上級生を中心に素晴らしいレースを見せてくれたと感じる。特に往路は武田ー永山ー平ー鈴木ー安井としっかり実力を出し切り青山学院に33秒差まで迫ってみせた。実力者がブレーキなく走ることが出来れば、青山学院とも張り合えることを示してくれたのではないだろうか?復路にも駒を残していただけにひょっとすると総合優勝も狙えるのでは?という予感もしていたのだが、復路は苦戦し順位を落としてしまった。来年は主力だった4年生が多数抜けてしまうため苦しい布陣になることも予想されるが、今年の4年生がそうだったように4年間でしっかり20キロ以上の距離に対応できるようになった選手を育てることが出来ているためチームの勢いは持続するのではないだろうか?優勝は難しくても上位争いが出来る状態には仕上げてくるのではないだろうか?

4位 順天堂大学
・久々に強い順天堂大学が戻ってきた印象である。特に2年連続で2区に登場した塩尻の積極的な走りは印象に残った。前半から突っ込んで入りながらも後半もしっかり粘って区間5位でまとめてみせた。流石オリンピックランナーである。チームにも勢いを与え、その後の4区栃木の区間賞、5区山田の好走につなげて見せた。
復路も9区聞谷が区間3位、10区作田が区間賞と上級生が奮闘し、総合4位でゴールに飛び込んでみせた。塩尻という大エース候補を擁しており、5区に関しても山田に目処が立ったため来年も今年のような快走を見せてくれるかもしれない。個人的に今大会で特に印象に残った選手の1人が塩尻だった。3000m障害で培ったスピードと粘りのある走りで後方から一色や鈴木らで形成していた先頭集団に迫ろうかという勢いで追い上げていった場面は塩尻というランナーが只速いだけのランナーではないことを示していたのではないだろうか?

5位 神奈川大学
・ここ10年ほど箱根駅伝では苦戦が続いていた神奈川大学が今大会は2区鈴木の区間賞の好走を活かす形で5位に食い込んでみせた。鈴木が実力者ということは分かっていたし、その鈴木が好走すればシード権争いに絡む可能性もあるとは感じていたのだが、鈴木の1時間7分17秒というタイムと区間賞という結果は予想以上だったし、その後のランナーの奮闘も予想以上だった。1区山藤、2区鈴木と他大学のエース級と張り合える選手が出てきたことがチームに勢いを与える形となった。来年もシード権を確保するようだと強かった時代の神奈川大学に戻る可能性もありそうである。それだけに山藤、鈴木が残る来年の箱根は重要になりそうである。今大会の鈴木の走りは本当に見事だった。

6位 中央学院大学
・中央学院も地力のあるところを見せてくれた。期待の1年生2区高砂、3区横川、9区藤田は箱根駅伝の厳しさを思い知ることとなったが、3人ともに20キロを蹴る距離にも関わらず積極的な走りを見せており、潜在能力の高さは見せ付けてくれた。ルーキーといえば今大会に関しては東海大学が注目されていたのだが、中央学院の1年生も今後大学長距離界の中心を担っていくような予感を感じさせてくれた。
そしてルーキーが苦しんだ中でもそれをしっかり上級生がカバーしてみせた。実力者の1区大森、7区海老沢太が堅実な走りを見せ、5区細谷、6区樋口が山で好走し、10区村上が区間上位で走って見せた。来年度以降は三大駅伝のどの大会でも上位に食い込んでくる可能性を感じさせてくれた。

7位 日体大
終わってみれば非常にもったいないレースになってしまったのではないだろうか?1区に起用したエース小松の失速でレースプランが大きく崩れてしまったのではないだろうか?スローペースになった1区で先頭を引っ張る場面も目立ったのだが、その中で無駄に体力を消耗してしまったのだろうか?最後まで先頭集団に喰らい付くことが出来たならば2区以降のランナーはもう少し良いタイムで走れた可能性もあったように感じる。元々繋ぎの2区という形で抜擢されたであろう小町が苦しい走りに終始するなど、往路は最後までシード圏内に入ることが出来なかった。
それでも復路は山下りのスペシャリスト秋山が58分1秒という素晴らしいタイム(区間新記録)で走りぬけ、チームを一気にシード圏内に押し上げると他のランナーもシード圏外に落ちることなく襷を繋いで見せた。それだけにやはり小松の失速が痛かったのではないだろうか?

8位 法政大学
法政大学のこの順位には驚いた。シード権を獲得するには個々の能力が足りず、層も薄いと感じていたのだが往路のランナーが大崩れすることなく自分の力を発揮すると復路では6区佐藤の好走で勢いに乗り、他のランナーもある意味では実力以上の走りを見せてくれたのではないだろうか?前回シード権を獲得した時にも同じようなことを記したと思うのだが、法政大学がこの箱根駅伝で時折見せてくれる戦前の予想を覆すような好走は見ていて本当に心地のいいモノである。来年も今大会と同じようなレースを見せることが出来るだろうか?

9位 駒沢大学
・2000年代の大学長距離界を常に引っ張ってきた駒沢大学だが、ここ数年は大きなブレーキが出てしまい、ミスミス優勝のチャンスを逃してしまっている印象である。今大会に関しても1区西山、2区工藤、3区下、4区中谷、5区大塚と主力を往路に並べ途中までは往路優勝も狙える位置でレースを進めていたのだが、何とか箱根に間に合わせた中谷が本来の実力からは考えられないようなブレーキを起こしてしまい、優勝戦線から大きく脱落してしまった。西山、工藤、下とまずまずの走りを見せ、5区の大塚は期待通りの走りで区間賞を獲得しただけに4区中谷のブレーキがあまりにも痛かった。
復路は元々苦しい布陣となっており、区間上位で走るランナーはいなかったが、来年度以降に向けて各ランナーが経験を積めたことがプラスポイントだろうか?

10位 東海大
・ギリギリでシード権を獲得したのは、戦前から注目度の高かった東海大学だった。往路は1年生4人を投入したのだが、1区鬼塚以外は本来の実力を発揮することが出来ず、終始苦しいレース展開となってしまった。それでも復路では7区に起用された石橋が区間賞を獲得するなど上級生が盛り返し、何とかシードに滑り込んで見せた。中央学院の1年生同様東海大学に関しても区間上位で走れたランナーは少なかったが、20キロ以上の距離に慣れてくれば一気にエース格のランナーになり得る選手がゴロゴロいることには変わりはないだろう。来年は優勝争いに絡むチームに成長していなくてはならないチームである。

シード権を獲得できなかったチームの中ではやはり優勝候補にも名前が上がっていた山梨学院大学が主力のインフルエンザと故障によってベストメンバーからは程遠い布陣となってしまい、17位に沈んでしまったのが印象に残った。1区間の距離が20キロを超える長丁場の箱根駅伝はスタートラインに立つまでの調整が非常に大事になってくる。ごまかしの利かない距離の駅伝大会だけにしっかりとコンディションを整えることの重要性を改めて感じさせてくれる出来事となった。その他のチームの中では5区で苦しんだものの往路から上位から中位でレースを進めた帝京大学の安定感にも感心した。シードが取れなかったことは残念だったが、例年のチーム以上に下級生が好走していたため来年以降も面白いチームを作ってくれそうである。

今大会も最終的には青山学院大学の圧勝に終わったのだが、見応えのある面白いレースになったと感じる。個人的にはやはり5区の距離が短縮になったこともよりレースのバランスが取れるようになり、これまで以上に戦術面などの駆け引きも楽しめるようになったと感じている。最近は三大駅伝の中でも箱根駅伝くらいしか力を入れて観戦することは無くなってしまったが、来年の大会も大いに楽しみたいと思う。

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