ウサイン・ボルトのラストランと日本短距離陣の奮闘

今日は、現在ロンドンで行われている世界陸上について触れてみたい。
過去記事はこちらから→「世界陸上と織田裕二」、「陸上男子短距離が面白い」、「陸上日本選手権100m決勝の面白さ

まずはウサイン・ボルトからである。今回の世界陸上をラストランの舞台にすると言うことは以前から公言していたのだが、今回は調整が間に合っていなかった印象である。もちろん年齢的な衰えという事もあったと思うのだが、万全な状態ではない中でも何とか世界陸上に間に合わせたというところだったのではないだろうか?
100mではガトリン、コールマンに破れ3位に終わり、4×100mリレーに全てを掛けていたと思うのだが、結果は左足太もも裏を痛めての途中棄権という衝撃的な結末となってしまった。
しかしボルトの功績が色あせることはない。世界を代表するスーパースターであることに変わりはない。私は1991年の東京世界陸上から陸上競技の面白さに目覚めたのだが、年齢を重ねるごとに時差の問題などもあり、世界陸上やオリンピックをリアルタイムで観戦する機会は減っていた。それとともに学生時代にテレビ観戦していた頃のような熱量は薄れていったのだが、それでもウサイン・ボルトの登場には度肝を抜かれた。大阪世界陸上の200mで銀メダルを獲得したことは記憶に残っていないのだが、翌2008年の北京オリンピックでの走りはとんでもなかった。この時すでに100mの世界記録保持者となっていたのだが、同郷のアサファ・パウエルが記録上は世界最速ながら大きな大会で結果を残せていなかった事もあり、個人的にはこの時点でボルトが本命とは思っていなかった。しかし決勝の舞台ではラストで喜びのパフォーマンスをしながらゴールに飛び込みながらも9秒69という世界新記録を叩きだすという異次元の走りを披露してくれた。とんでもないスプリンターが現われたと思ったのだが、ここから約10年に渡って世界のトップを走り続けてくれた。196センチという長身ながら圧倒的な加速力を武器に他の追随を許さなかった走りは世界の短距離界に新たな時代を告げたのではないだろうか?
衝撃の北京オリンピック翌年のベルリン世界陸上での100m9秒58、200m19秒19という記録は今後数十年破られることはないのではないか?と感じさせるほど突出した記録だし、オリンピックや世界陸上といった大舞台でしっかり結果を残し続けた事も素晴らしいことである。

陸上競技、特にスプリント種目は誰よりも早く走ると言う人間としての勝負の原点のようなシンプルな種目である。その種目で圧倒的な傑出度で勝利を重ねたボルトは世界中から愛され、尊敬されるアスリートである。今回の100mとリレーでは残念な結果に終わってしまったが、これほどのスプリンターを自分が生きている時代に見られたことはスポーツファンにとっては幸せなことである。私も「地球に生まれて良かった。」という言葉を使いたくなる。

そして日本のスプリンター勢が今回の世界陸上でも存在感を示してくれた。先の日本選手権で100m、200mの二冠に輝いたサニブラウンは、決勝進出のチャンスが大いにあった100mのセミファイナルでスタート直後につまずくというミスがあり、決勝進出は逃してしまったのだが、得意の200mでは、セミファイナルで2着となりしっかり着順でファイナル進出を決めてみせた。タイム自体は自己記録の更新はならなかったが、世界の強豪がひしめくセミファイナルでしっかり2着を獲ったことがまず凄いし、決勝でも苦手のスタートで善戦し、万全の状態で走れていればメダル圏内に食い込むだけの力があることを証明してくれた。まだまだ18歳という年齢だけにこれからしっかり身体作りを行う事が出来れば世界を代表するスプリンターになるのではないだろうか?楽しみな逸材である。

そしてリレーではそのサニブラウンを欠きながらも多田、飯塚、桐生、藤光というメンバー構成で銅メダルを獲得してみせた。昨年のリオオリンピックでの銀メダルの快走に比べれると劣ってしまうのだが、それでもサニブラウン、ケンブリッジ飛鳥という現在の日本№1,2と思われるスプリンターを欠きながらもこれだけのレースが出来た事に日本短距離陣の成長を感じる事が出来る。出来ればオリンピックや世界陸上の大舞台でコンスタントに37秒台を記録するようなチームを作り続けてもらいたいのだが、簡単な事ではない。しかし25年程前までは決勝に残りさえすれば快挙と呼ばれていた日本リレーチームがコンスタントに決勝に残れる国となり、今後はコンスタントにメダル争いに絡める国になりつつある。ここのレベルも上がっており、もしかすると2020年の東京オリンピックでは9秒台カルテットでメンバーを構成出来るようになっている可能性もある。他の国々もリレー種目に力を入れてきており、簡単にメダルを獲れるとは思えないが、それでも今後の日本短距離界は常に注目を浴びる存在になりそうである。それにしても今回の銅メダルはジャマイカの棄権があったものの新生多田、200mを得意とする飯塚、日本選手権で苦汁をなめた桐生、ベテランのマルチスプリンター藤光での銅メダルと言う事で非常に価値の高いものである。今後日本国内でもハイレベルな争いが見られそうである。

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