平昌オリンピックはかなり楽しむ事が出来た。皆さんは如何だったでしょうか?
事前に日本勢のメダル予想も行なっていたのだが、最終的には13個のメダルを獲得し、そのうち4つが金メダルという結果になった。今回のオリンピックについては、メダル獲得の有無に関わらず、日本選手団は、ある程度実力を発揮した選手が多かった印象である。
過去記事はこちらから→「平昌オリンピックメダル予想」
スピードスケート
・オランダ勢の強さが目立ったが、日本勢もしっかりオリンピックに照準を合わせて、実力を出し切った選手が多かったと感じた。
最初のメダルは女子1500mの高木美だった。得意種目であり、3000m同様身体はよく動いていたように感じたのだが、オランダのブストに0.2秒及ばず、銀メダルとなった。ラスト1週のバックストレート、ホームストレートでの伸びは見事だったのだが、ブストはその滑りの更に上を行ってみせた。
その高木美は1000mでも銅メダルを獲得してみせた。後半型の選手なのだが前半から速いラップタイムを叩き出し、後半もしっかり粘って見せた。高木美らしい滑りが出来たのではないだろうか?
もう1人のエース小平は、1500mの滑りを見て、調子の良さを感じさせていたため500m、1000mの2冠の可能性もあるのでは?と感じたのだが、1000mではカーブでわずかなミスが出てしまい、前半で加速しきれなかった部分もあり、テルモルスに敗れての銀メダルとなった。1分13秒82というタイム自体は素晴らしいタイムなのだが、もう少しタイムを縮められたとの思いも交錯しているのではないだろうか?
しかしW杯15連勝と敵なしの状態で迎えた500mでは圧巻の滑りを見せてくれた。36秒94という低地での世界記録と言うおまけつきで悲願の金メダルを獲得して見せた。オリンピック2連覇中で地元での3連覇を狙ったイ・サンファを圧倒しての金メダルと言う事で価値の高い金メダルとなった。
小平については長野県では学生時代から名の知れたスケーターだったのだが、バンクーバー、ソチでは個人種目でのメダルには届かず、年齢的にもこれ以上を望むのは難しいのかな?という思いも持っていたのだが、ソチオリンピック後のオランダ修行と結城コーチとの二人三脚での鍛錬で世界最速のスケーティング技術を身に付け、一気に能力が開花した印象である。これまでの日本女子スケート選手の常識を覆すような成長曲線を描いて世界のトップに躍り出てみせた。今大会での滑りも素人目に見ても滑りに力強さを感じ、特にバックストレート、ホームストレートでの伸びは抜群だった。ストイックにスケートと向き合い、コメントを聞いていても「求道者」という言葉がぴったり来るような雰囲気を醸し出している。自分のスケートをどこまでも追求する姿勢は、他の競技者のお手本にもなるのではないだろうか?見事な金メダルだった。
そしてもう一つ本命視されていた女子団体パシュートでは、決勝で強敵のオランダを圧倒する見事な滑りを披露してくれた。「個の力」では明らかにオランダの方が上なのだが、日本はこの団体パシュートで金メダルを獲るために練習して来た成果をオリンピックという大舞台で見せ付けてくれた。決勝は高木美、高木菜、佐藤の3選手で滑ったのだが、一糸乱れぬ隊列を組んで「個の力」で上回るオランダに勝利して見せた。団体パシュートという競技の奥深さを感じる事が出来た。今季の日本チームの躍進で団体パシュートという競技自体のレベルが一段上がってくると考えられる。日本が披露した滑りは世界に衝撃を与えたのではないだろうか?
新種目のマススタートでは団体パシュートで金メダルを獲得した高木菜が予選から自分のペースでレースを進める事に成功し、決勝ではスハウテン(オランダ)の後ろで待機し、最終コーナーで逆転し、金メダルを手繰り寄せて見せた。スハウテン、キム・ボルムを抑えての見事な金メダルだった。
マススタートに関しては、私は初めて見る種目だったのだが、各選手の駆け引きが非常に面白かった。しかしまだまだ発展途上の種目だと感じた。1位~3位に関しては、ゴールの順序で決まるのだが、それ以下の順位に関しては、中間スプリントのポイントによって決まってくるというルールが面白くもあり、分かり辛くもあるように感じた。個人的には3,4レース行い、全てのレースの合計ポイントで争うような形の方がより駆け引きが面白くなるのではないか?と感じた。マススタートという種目が今後どのように発展して行くか楽しみにしてみたい。
モーグル
・男子モーグルに関しては、事前記事で「堀島を始め面白いメンバーが揃った。」と書いたのだが、どちらかというと遠藤、西がハマッた時に面白いかな?という意味で記述したため原の銅メダルは予想外だった。それでも予選から3回の決勝と全て大きなミスなく滑りきった安定感は見事だった。解説の三浦氏が「今回のコブの固さが原に合っている。」ということを何度か発言していたのだが、本当に危なげない滑りを披露してくれた。ファイナルの最終滑走での滑りは興奮して観戦する事が出来た。第1エアのコーク720も独特のグラブを入れており、素人目に見ても楽しむ事が出来た。
また金メダルを獲得したキングズベリーの決勝の滑りは絶対王者らしい素晴らしいものだと感じた。そしてファイナルには残れなかったのだが、堀島のエアは迫力満点だったし、遠藤の攻めの滑りも十分に楽しめた。結果以外の部分で楽しめるのもフリースタイル系種目の醍醐味である。
スノーボードハーフパイプ
・男子ハーフパイプの平野VSホワイトは名勝負だった。私がこの競技を目にするのはオリンピックくらいであるため普段から今回のようなレベルの戦いが行なわれているのか分からない部分もあるのだが、平野の試技もホワイトの試技も見事だった。ソチオリンピックの際にもブログに記したのだが、ショーン・ホワイトの試技は素人目に見ても他の選手との違いを感じる事が出来、私はこの選手の試技が大好きなのだが、平野もすでに同レベルの力を持っている事をオリンピックという大舞台で示す事が出来たのではないだろうか?1回目でホワイトがトップに立ち、2回目で平野が逆転したものの、3回目でホワイトが更に上を行くというハイレベルな金メダル争いだった。
普段からハーフパイプを観戦しているファンの方々がこの戦いをどのように感じたのか気になるところである。個人的にはオリンピック史上に残るような名勝負だったように感じた(日本人絡みでという注釈は必要だが…)。お互いがお互いを刺激し合ってレベルアップし、私達スポーツファンに最高のエンターテインメントを与えてくれたと思う。リアルタイムで観戦できなかったのが残念だった。
ジャンプ
・天候不良や競技時間についてはかなり課題があったように感じたのだが、女子ノーマルヒルでは高梨が4年越しのメダル獲得に成功した。4年前は金メダル候補の大本命の中で失速し4位に終わりメダルを逃してしまったのだが、今回は自分の実力を出しきった中での銅メダル獲得となった。ある意味では金メダルのルンビ(ノルウェー)、銀メダルのアルトハイツ(ドイツ)に力負けしてしまった印象が残るのだが、それでも4年前の悪夢を振り払うジャンプを2本揃えたことは素晴らしい事だと思う。
・男子に関しては、戦前から苦戦が予想されていたのだが、風がめまぐるしく変わる条件の中で逆にチャンスが生まれてくる可能性もあるかな?と感じていたのだが、そう上手くは行かなかった。小林陵がノーマルヒル、ラージヒルと上位に喰らいついて見せたが、エースとして期待された兄の小林潤は強い追い風にフォームを崩されたのか自分のジャンプを見失ってしまい、団体戦のメンバーからも外れてしまった。もしかすると団体戦でメダルのチャンスがあるのかな?と思っていたのだが、小林潤がメンバー落ちしてしまった地点でかなり厳しい状況となってしまった。
前回大会でラージヒルと団体でメダルを獲得した最年長の葛西も最後まで自分本来のジャンプを披露することは出来なかった。しかし葛西の負けず嫌いの精神は衰える事がなく今回も「風が良くなかった。」とのコメントを残している。葛西ファンであればお馴染みだと思うのだが、いいジャンプが出来なかったときには必ずと言っていい程「風が良くなかった。」的なコメントを残すのが葛西である。負け惜しみっぽく感じる事もあるのだが、この気持ちがアスリートにとって大切な部分でもあるように感じる。まだまだ現役を続行すると言う事で今後の活躍を楽しみにしたいと思う。
個人的には20年前の長野オリンピックであどけない少年だったシモン・アマンがメダルこそ獲得出来なかったが、悪条件の中でしっかり自分のジャンプを披露した場面が印象に残った。元ゴールドメダリストの意地や凄みを感じる事の出来るジャンプだった。
ノルディック複合
・ノーマルヒルで渡部暁斗が2大会連続となる銀メダルを獲得した。もちろん金メダルを狙っていたと思うのだが、ジャンプで2大会連続金メダルを獲得したフレンツェルと差を広げられなかったのが全てだったのではないだろうか?逆に言うと今シーズンそこまで調子が良くなかったフレンツェルがオリンピックにしっかり合わせてきたと言う事なのだろう。フレンツェルを誉めるべきレースだったように感じる。
しかし渡部暁の安定感も際立っていた。ジャンプで3位に付けると後半のクロスカントリーでは後ろから追い上げてきたクラプファー、フレンツェルと3人で前を追い掛け、しっかり先頭に追いつくと、後ろから追いかけてきたルゼックらには追い付かせず、想定通りのレースが出来たのではないだろうか?フレンツェルの最後のスパートには付いて行くことが出来なかったが、負けてなお強しの印象が残る銀メダルだった。
・ラージヒルでは前半のジャンプで首位につけ、金メダルのチャンスもあるかな?と思ったのだが、約30秒差でスタートを切ったフレンツェル、ルゼック、リースレのドイツ勢3人が共闘しながら上手いレース運びをして、金、銀、銅を独占して見せた。ジャンプが終わった地点で渡部暁が後半のクロスカントリーは厳しいレースになるとコメントしていたのだが、コメント通りの厳しいレースとなってしまった。この辺りがノルディック複合という競技の難しさであり、面白さなのだと思う。渡部暁としては、1秒差でスタートしたリーベルと一緒に逃げるという事も頭の片隅にはあったかもしれないが、元々クロスカントリーの実力があるわけではないリーベルはあくまでも渡部暁の後ろについて体力を温存するゲームマネジメントを取った事から渡部暁は自力でドイツ勢の猛追から逃げ切るというマネジメントしか出来ない状況となってしまった。そして今回のレースに関しては、テレビで見るからに渡部暁のスキーが滑っていなかったため、想像以上に体力を使ってしまったのかもしれない。本人が納得出来るような快心のジャンプが出来ていただけに金メダルはおろかメダルまで逃してしまったのは残念だった。しかし渡部暁自身がコメントやれるだけのことはやった中での5位だっただけに仕方ない部分はあったのではないだろうか?悪いレースではなかった。
フィギュアスケート
・男子で羽生が2大会連続の金メダルという偉業を達成し、宇野も銀メダルに輝いた。日本勢のワンツーフィニッシュという最高の結果となった。それにしても羽生の調整力と精神力、集中力は流石オリンピックチャンピオンである。NHK杯直前で右足首を負傷し、その後ぶっつけ本番でのオリンピックと言う事で羽生にのしかかるプレッシャーは半端ないものだったと思うし、体調も万全に戻すところまでは至っていなかったと思う。それでもショート、フリーともに大きなミスなく滑りきってしまうのだから恐れ入る。私は普段フィギュアスケートをしっかり観戦することはないため、細かいことは分からないのだが、羽生はアスリートとしてもアーチストとしても非常に高いスキルを持った選手なのだと思う。アスリートと言う部分でいえば4回転ジャンプを高い精度で飛ぶ事が出来、ここ数年で男子フィギュアスケート界のレベルを引き上げる存在となったことは間違いないだろう。ネイサン・チェン、金博洋、宇野らが羽生の背中を追いかけて様々な4回転ジャンプに挑戦し、レベルアップを図ってきた。フィギュアスケートがスポーツである以上ジャンプの難度が上がって行くことはとても大切な事ではないだろうか?
しかし羽生の凄さはアスリートとしての凄さだけではなく、アーチストとしての凄さも兼ね備えている。この辺りは素人目には分かりづらい部分もあるのだが、羽生が演技している時間とその前後は会場の雰囲気含めて羽生の世界観に包まれているように感じる事がある。この辺りの表現力も羽生の魅力の1つなのだろう。
オリンピック連覇によって羽生は歴史に残るフィギュアスケーターとなった。
そして宇野も最初の4回転ジャンプで失敗してしまったが、その後立て直し、フリーでも高得点を叩き出し、銀メダルを獲得して見せた。インタビューを聞いてみると非常に不思議な雰囲気を持った若者だと感じるが、自分の滑りを客観視し、本番でも冷静に滑っている印象がある。今後羽生に続けるような存在になっていくだろうか?
カーリング
・カーリングはまだまだマイナー種目の1つではあるのだが、オリンピックごとに毎回話題を提供してくれているように感じる。今回は女子のLS北見が銅メダルを獲得して見せた。準決勝の韓国戦、3位決定戦のイギリス戦はどちらも好勝負だった。ゲーム展開は全く違うものだったのだが、どちらの試合もカーリングの面白さが詰まったゲームだったと思う。私はオリンピックでしかカーリングを観戦する事がないため、毎回ルールを忘れてしまうのだが、後攻の優位性、得点を上げたチームが次のエンドは先行になる、得点が入らなかった場合は、先攻後攻は入れ替わらない、といったところがカーリングと言うスポーツの特徴だろうか?敢えて得点しなかったり、1点を与えたりと試合全体を見渡しながらゲームを進める必要があり、「氷上のチェス」と言われるだけのことはあるなと感じた。しかし試合時間が長く、「今後どのように普及させていくか?」という部分には課題が残りそうである。
・男子のSC軽井沢クラブも予選敗退となってしまったが、格上からの勝利を含む4勝と日本最強チームとしての意地は見せてくれたと思う。
今回の記事は書き足し、書き足し書かせてもらったため、読み辛い部分もあるかと思いますが、ご了承下さい。日本選手団のメダルラッシュもあってとても楽しいオリンピック観戦が出来たと感じている。ウインタースポーツは普段観戦する機会が少ないため、ルールや駆け引き、選手の凄さが分かりづらかったりすることがあるのだが、解説者の皆さんが非常に分かりやすい言葉で説明を入れていたので、どの競技もある程度自分なりに見どころを抑えた中で観戦する事が出来た。解説者含めてアスリートの語彙力の向上も感じる事が出来る大会となった。
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コメント
私の悪い予想を覆し、13個のメダルを獲得して良かったです。
スピードスケートやスキージャンプとかは日本人はメダル獲れると子供の頃から
想っていたけど、フィギュアスケートとか採点物の競技で金メダルが獲れるなんて時代が来るなんて・・・。
欧米人に比べて手足が短く、伊藤みどりが超人的な技を披露しても”金”は難しい、ましては男子なんて・・・と思ったら羽生結弦という中性的な、まるで歌舞伎の女形を連想させる様な演技で2大会連続で金メダル獲るなんて想像もできなかったです。
後、カーリング女子メダル獲れて良かった。そして自分含めて日本人があらためてルールを覚えたと思います。日本中にカーリング場(ラウンド・ワンあたり)が出来たら流行りそうですね。
> でぶちゃんさんへ
時代は移り変わりますよね。採点競技も徐々にルール改正がなされてきていますよね。フィギュアスケートについても20年以上前に比べて採点方法がより明確化されてきていますよね。