2023MGC展望

陸上競技


2024年のパリオリンピックマラソン代表選考会であるMGCが10月15日に迫ってきた。これまでマラソンの代表選考は、複数の選考レースから代表選手を選ぶ形をとっており、揉めることが多かった。しかし2019年にMGCという上位2名までが自動的に代表に選ばれるフォーマットのレースが始まり、状況は一変した。多くの選手、関係者、マラソンファンが納得する形のシステムが採用されたことは画期的だった。当初はあくまでも東京オリンピックの代表選考会に限っての実施ということだったのだが、パリオリンピックの選考会も同様の形で行われることとなった。個人的には大歓迎である。前回の2019年同様、今年のMGCも非常に面白いレースが展開されそうである。
過去記事は下記の通り
MGCは期待通りの面白さだった! | ヤクルトファンの日記 (ysfan-nikki.com)

男子(61名)
・前回大会に比べて、MGCの切符を勝ち取ったランナーの数が約2倍に増えている。これは、この4年間でマラソンを含む陸上長距離界のタイムが大幅に上がってきたことを示しているのではないだろうか?世界との差が縮まったとは言えないのだが、前回大会以上に激しい代表争いが繰り広げられそうである。
メンバーは以下のリンク先の通り
【MGCへの道】MGC出場権獲得者(ファイナリスト)一覧:日本陸上競技連盟公式サイト (jaaf.or.jp)

前回大会は、初めての試みであり、どういう展開が繰り広げられるのか読めない部分もある中、4強と謳われた内の1人である設楽悠(Honda)が飛び出し、一人旅が続くレースとなったのだが、その設楽が失速すると後方集団で激しい駆け引きが行われ、最終的には2時間11分台のタイムで優勝した中村(富士通)と服部(トヨタ自動車)が2枚の切符を手にすることとなった。
ペースメーカーが付かないレースということもあり、ハイペースのサバイバルレースにはなりづらいと予想する。前回大会は、その空気を打破するように、設楽が飛び出したのだが、同様のペースを作ることはかなりの実力者でなければ難しいと思われる。やはり2時間10分を超えるようなペースでレースが推移していく可能性が高いだろうか?
前回の中村もそうだったのだが、スローな展開になればなるほど、誰が五輪切符を手にしても不思議ではない展開になると思われる。今大会は、一応、前日本記録保持者で東京オリンピックで6位入賞を果たしている大迫(Nike)と現日本記録保持者である鈴木(富士通)が2強と目されているが、大迫も鈴木も決して盤石であるとは言えないのではないだろうか?両者ともに速さと強さを兼ね備えた日本を代表するマラソンランナーではあるのだが、大迫は東京オリンピック後に一度は引退を表明し、多少なりともブランクを作った経緯があり、鈴木は、コンディション不良もあり、2022年の東京マラソン以後、マラソンを走っていない。現状どの程度のコンディションに仕上げてきているか読みづらい部分がある。両者ともに本来の状態に戻っているのであれば、ある程度の高速レースの方が戦いやすいという気持ちはあるのかもしれないが(他の選手を振るい落とすという意味でも。)、前回大会の設楽のように一人で飛び出すタイプの選手でもないため、自ら高速レースに持ち込む可能性はそれ程高くないのかもしれない。大迫にしろ鈴木にしろ、もし序盤からハイペースでレースを作るようであれば、それは状態が良い証拠なのかもしれない。どちらにせよ、この2人は他の選手からマークされる存在になりそうである。
この2強を崩す可能性があるランナーは誰になるのか?という部分に関しても、多くの候補者がいることに違いはないのだが、大迫、鈴木に比べるとどのランナーも決め手に欠ける印象もある。
2時間5分台のタイムを持ち、今夏の世界陸上であわやメダルという所まで期待を抱かせた山下(三菱重工)、昨年の世界陸上で2時間8分台のタイムを出した西山雄(トヨタ自動車)、スピードと勝負強さを兼ね備えた印象のある細谷(黒崎播磨)、前回大会で見せ場を作った大塚(九電工)、橋本(中央発條)、前回大会の4強の一角井上(三菱重工)、ゴールドコースト・マラソンを好タイムで制した小山直(Honda)辺りも有力候補である。
ここまで名前を挙げたランナーも一部であり、國學院大の躍進に貢献した浦野(富士通)、土方(旭化成)、青山学院大時代の活躍も印象的な神野(セルソース)、下田(GMO)、吉田(GMO)、横田(JR東日本)、ベテランの岡本(中国電力)、今井(トヨタ自動車九州)、川内(AD損保)、大石(トヨタ自動車)辺りも虎視眈々と代表権を狙っているだろうし、其田(JR東日本)、聞谷(トヨタ紡織)、湯澤(SGホールディングス)、市山(サンベルクス)にも展開によってはチャンスが巡ってくるはずである。
ここに名前を挙げてない選手が代表権を得ても何ら不思議のないレースになりそうである。まずはどういったレース展開になるのか注目である。個人的には小山直(Honda)、西山雄(トヨタ自動車)に特に注目してみたい。

女子(24名)
・女子も男子同様、前回大会に比べて、MGCの切符を勝ち取ったランナーは大幅に増えている。今大会に出場をしない2時間19分台の自己記録を持っている新谷(積水化学)、今夏の世界陸上で13位に入った松田(ダイハツ)もかなりの実力者であるため、この2人が出場しないことがレースにどんな影響を与えてくるだろうか?
女子に関しては、まずは東京オリンピックで8位入賞を果たした一山(資生堂)が軸になると予想する。他のランナーに比べてスピード、スタミナ共に一段上のレベルにあるランナーだと感じるため、夫である鈴木同様、コンディションが整っているのであれば、大本命と見て良いのではないだろうか?
その一山の背中を追いたいのだが、2時間21分台の自己記録を持つ安藤(ワコール)と東京オリンピック組の鈴木亜(日本郵政グループ)、前田穂(天満屋)ではないだろうか?個人的には、この4人による代表争いになる可能性が高いのではないか?と見立てている。
その他にはスピードのある細田(エディオン)、今夏の世界陸上を経験した加世田(ダイハツ)、若手の鈴木優(第一生命グループ)、実績のある前田彩(ダイハツ)、岩出(デンソー)、上杉(スターズ)辺りの名前を挙げることも出来る。
男子に比べると前回大会から明確に台頭してきた選手が少なく、少し寂しさも感じるのだが、前回の代表3名と安定感のある安藤を切り崩すようなランナーが出てくるだろうか?

どちらにせよ、男子も女子も激しい代表争いが繰り広げられそうである。




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