21、22年に連覇した理由が見えた試合

ヤクルト４－３DeNA

CS争い真っ只中のDeNA、先発の東が好投し、ヤクルトは、0－3と3点のビハインドという試合展開となり、7回も2アウトランナーなしとなっていた。正直勝ち筋が全く見えてこない試合展開に映ったのだが、ここから長岡、西川、サンタナの3連打で2点を返し、1点差とすると、続く村上が東のスライダーを完璧に捉えると、打球はライトスタンドに弾丸ライナーで突き刺さる2ランホームランとなり、逆転勝利を飾ってみせた。今シーズンの戦いぶりからすると信じられないような逆転劇だったのだが、こういった苦しい展開でことごとく仕事をしてくれていたのが、21年、22年シーズンの村上だった。こういった村上の一打を勝利に繋げてきたのが、高津ヤクルトである。それだけ村上に依存したチーム作りになってしまっていたのかもしれないが、こういった勝ち方が出来るヤクルトであれば、相手チームは脅威を感じたはずである。ヤクルトにとっては、完全な消化試合で、ビジター横浜スタジアムで、この展開のゲームをひっくり返せるのは、本来のヤクルトの実力なのかもしれない。その実力がありながら最下位争いを繰り広げてしまっている現実を考えると寂しい気持ちにもなるものである。

ここに来てようやく目に見えて状態が上がってきている村上は、やはりNPB屈指の打者であることを証明してくれている。海の向こうでは、大谷翔平が50－50をクリアし、その後も数字を伸ばし続けている。大谷翔平は、日本球史に残る選手であることに違いはないし、村上であったとしてもまだまだ比較できる存在ではないと思っているのだが、21年、22年シーズン（特に22年シーズン）の村上は、NPB史に残るような活躍をしてくれたことは間違いない。「ここで打ってくれれば…」とヤクルトファンが願う場面でことごとく結果を残し、リーグ優勝、日本一に貢献してくれたのである。どんな劣勢でも、相手がどんな好投手でも結果を残す姿に驚きを感じさせてくれた。今日の東からの一発は、その当時の村上の姿を思い出させてくれた。昨シーズン、今シーズンと圧倒的なスタッツを残している東相手に東の武器であるスライダーを完璧に捉えた一撃は、村上の能力の高さを存分に示してくれた。東がマウンドでうずくまってしまったところを見ても分かるように、非常に重要な場面で結果を残してみせた。やはり高津ヤクルトの一番の武器は、村上の存在であることを再認識することが出来た。日本球界的な言葉を使わせてもらうと、いわゆる「4番の仕事」をしてくれたのではないだろうか？
山田のコンディション不良と不振、塩見の長期離脱があり、チームとして苦しかったことに違いはないのだが、今日も結果を残した長岡の成長、サンタナの好調さもあり、村上が今日のような打撃を披露していれば、もう少しチームの勝ち星も増えたように感じる。おそらく来シーズンは、まだヤクルトでプレーしていると思われるため、もう一度21年シーズン、22年シーズンのような活躍を見せてもらいたい。チームを勝利に導く打撃が出来る男、それが村上宗隆である。

投手陣では、先発の小川が5回3失点という数字を残した。QSも達成出来ておらず、数字だけを見れば、あまり良い投球内容とは思えないし、4回の伊藤への押し出し四球なども小川らしからぬ投球だったのだが、ストレートの球速が140キロ程でも多彩な変化球を駆使して、DeNA打線と対峙する姿に、小川が長年に渡ってヤクルトの先発ローテを守っている理由を感じさせてくれた。今シーズンは、コンディション不良による離脱期間もあり、数字が残せていないのだが、私は、小川はまだやれると信じている。来シーズンもう一度ヤクルトの先発ローテの中心の一角を担ってもらいたい。
そして今シーズン、飛躍の1年となった丸山翔に、プロ初勝利が転がり込んだ。リリーフ投手の勝ち星は、運の要素もあり、重要なスタッツではないのかもしれないが、やはり投手として勝ち星が付くことは気分的には多少なりとも落ち着くのではないだろうか？スライダーが使える球種となったことで、投球の幅が広がり、上手くアウトを重ねられるようになってきている印象である。来シーズンどんな役割で投げているのか楽しみな投手である。
7回以降の田口－ロドリゲスー小澤のリレーも見事だった。リードは1点のみであり、緊迫した展開だったのだが、3投手ともに安定した投球を披露してくれた。

村上の一打と積極的な抜擢で戦力に仕立て上げたリリーフ陣の活躍によってもたらされた勝利は、やはり21年、22年にリーグ連覇を果たしたことを思い出させてくれた。