ラグビーW杯日本大会は20日、準々決勝が行われ、世界ランキング6位の日本代表が同4位の南アフリカ代表と対戦。前半を終えて2点ビハインドと善戦したが、後半に21失点を喫して3―26で敗れ、史上初の4強進出はならなかった。
(スポニチアネックス引用)
日本代表にとって初めてのワールドカップ決勝トーナメントの相手は、前回大会で大金星をあげた南アフリカだった。簡単に試合をまとめるならばフィジカルバトルで削られての力負けということになるのだが、両チーム共に負けたら終わりの決勝トーナメントで優勝候補南アフリカと対戦できたことだけでも日本ラグビー史に残ることである。
前半から日本は自陣からでも積極的にボールを動かし、今日のために準備していたであろうスペシャルプレーも惜しみなく披露し、試合のペースを握ろうとした。見ていて面白さを感じるような多彩な攻撃だったのだが、南アフリカのディフェンスは全く崩れなかった。素早い出足で日本のオープンな攻撃を遮断し、前進を許さなかった。
スクラムで押し込まれ、前半4分には早くも先制トライを許してしまった。しかし南アフリカの選手が危険なタックルによるシンビンで10分間退場となってからは多少ペースを取り戻し、福岡の素早い突破からトライチャンスを迎える場面もあった。トライは奪えなかったもののその後相手ボールスクラムで反則を誘い、田村のPGで3点を返すことに成功した。その後はボールを保持出来ても前進は阻まれるというじりじりした展開が続き、そのまま3-5というロースコアで前半を折り返すこととなった。中々ゲインラインを突破出来ず、南アフリカのディフェンス面でのプレッシャーを感じる前半戦となったのだが、相手にボールを持たせずに得点を許さなかった日本のゲームマネジメントも上手く機能しているように感じる前半戦となった。
しかし後半に入るとフィジカルの面で差が表れはじめ、日本は自陣でのゲームを余儀なくされる。そんな中で反則を犯してしまい、PG3本で点差を広げられると後半残り20分からはゲームを完全に支配されてしまい、2つのトライを追加され、3-26で敗戦となってしまった。
正直南アフリカの強くて規律も守られたディフェンスの前にトライチャンスを作ることさえほとんど出来なかった。前半に相手がシンビンで1人少なくなっている時間帯に敵陣5メートルラインまで攻め入った場面と3-21とリードされた後半30分頃に敵陣5メートルラインでマイボールラインアウトを獲得した場面くらいだったのではないだろうか?
前半の場面は反則でチャンスを潰し、後半の場面はマイボールラインアウトを確保できずにチャンスを潰してしまった。今日に関しては、スクラム、ラインアウトでも圧倒されてしまい、後半はフィジカルの差もはっきりと出ていた。モールで大きく押し込まれてしまう場面含めて世界のトップとの差を改めて感じさせられるゲームとなった。
それでもここ5,6年でのラグビー日本代表の進化は凄まじいものであったと感じるし、これまでに根付いてきたラグビー文化とはまた違った文化を根付かせてくれたように感じる。自国開催のワールドカップで結果を残す為に努力して来たことが今大会の躍進に繋がったことは間違いないし、素晴らしいことだったと思う。
ラグビーという競技は、その競技性からポジションによって多様な選手が必要になるスポーツである。また各国の代表要件もサッカーやオリンピックと異なるため、様々なバックボーンを持った選手が集まってくる。重くて力自慢の選手から高くて強い選手、スピードで相手を圧倒する選手に試合をコントロールする選手、国籍も日本国籍の選手ばかりではないのだが、それでも1つの目標に向かって努力し、1つにまとまるということ自体が素晴らしいことである。もちろんスポーツに関しては「勝利」というはっきりとした目標があるため、1人1人の選手がまとまりやすいという部分はあるのだが、今大会のラグビー日本代表の試合を見ている中で「日本」という国の今後を考えたときに今回のラグビー日本代表チームの姿がお手本になるのではないか?という壮大なことまで頭をよぎってしまった。仕事でもプライベートでも私達は様々な人と関わりながら生きている。価値観の合わない人もいれば波長の合わない人、苦手な人も当然のように存在する。しかしそれらの人達と上手く繋がる事が出来たとすれば、これまでには考えられなかった力を発揮する事があるのだと思う。人は他人の支えがなければ生きて行けないと同時に、どんな人でもどこかで必ず人の役に立っているはずなのである。そんな人達が上手くまとまる事が出来れば、今よりもほんの少しいい世の中が出来るのではないだろうか?そんなことを感じさせてくれる今大会の日本代表の戦いぶりだった。
話しは大きく逸れてしまったのだが、今日のゲームでレベルの高いラグビーというものをまた新たに知る事が出来た。特に南アフリカのSHデクラークの判断力とキックの正確性、攻撃時のスピードとディフェンス時の身体を張る姿に世界のトップレベルのSHの姿を感じる事が出来た。
日本も今日の試合含めてどの試合でも準備して来た事をしっかり発揮していたと思う。前回大会のチームも素晴らしかったのだが、今回のチームも素晴らしかった。このチームがもう見られないということにどこか寂しさを感じている。
P.S 今大会で日本中のラグビー熱が一気に高まっただけに次回以降のワールドカップが重要になってきますね。この熱量は、いわゆる「にわかファン」含めた一時的なブームであるため、このままの熱が続くことはないのだが、ラグビーというスポーツの面白さは今後も発信し続けていかなければならない。そして4年後はまた結果が求められる。ラグビーはまだ強豪国が限られているため、私の印象だとこれまではアルゼンチンが入ったグループが「死の組」になるイメージだったのだが、今後は日本が入る組も「死の組」となりそうである。今大会以上に厳しい予選プールを勝ち抜ける力を保持する事が出来るだろうか?
そしてサンウルブズが消滅してしまうことも痛いところである。スーパーラグビーに日本のチームが参加し、多くの日本人選手が高いレベルでのプレーを経験出来た事が今大会の躍進に繋がった部分も間違いなくあったと思うのだが…その中で代表チームのレベルをどう向上させていくのだろうか?
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コメント
私も感動しました。
大分ラグビーブームに遅れて観戦しましたが、想像以上に日本強いなと感じました。
ラグビーのノーサイドの精神も美しく素晴らしいです。
15年大会キャプテンの廣瀬さんが日本代表チームに「代表選手を憧れの存在にする」という意識付けをしたという話を聞いて感心しました。ロッカーの掃除もそれから意識的に代表選手はしていたのだと。
今のにわかブームもただ勝つだけでなく憧れの代表を演じる努力を続けてきたから開花したのかな、と思いました
来年はオリンピック。
21年にプロリーグ化を目指しているそうですし、このまま順調にいけばラグビーブームが根付きそうです
いつも読ませて頂いています。
ありがとうございます。
私はラグビー経験者で、南アフリカ戦をスタジアムで観戦できました。負けはしましたが、ベスト8で日本対南アフリカの試合を見れた事が本当に奇跡で感動しました。
ラグビーの記事まで書いて頂き、そしてその分析もヤクルトの記事同様に大変深い内容で感激しました。
今後も取り上げて頂けると非常に嬉しいです!
ラグビー経験者にとっては、日本の躍進ももちろんですが、ラグビーを見たことがない人やよく知らなかった人に、ラグビーの良さを知ってもらえた事が何より嬉しい事でした。
かつてないこのラグビー熱が途切れないで続いてほしいなと思います。
> saboさんへ
90年代前半まではラグビーも人気スポーツだった記憶があるのですが、日本独自の文化(ガラパゴス化)の中で盛り上がっていた印象なんですよね。
新しいラグビー文化が生まれたように感じます。
> 闘将さんへ
現地観戦お疲れ様でした。歴史的な試合に立ち合う事が出来たのですね。
私はラグビー経験者ではないのですが、小学生の頃は秋になるとラグビーの試合をよくテレビ観戦していました。当時は地上波での放送も多かったですし…
今大会で新たなラグビー文化が日本に根付きそうな雰囲気を感じています。
ほぼ、にわかですが、簡単に感想を。
まず、野球などと違い、こちら側にフィールドがなく、求めても容易に手が届かないだろう本場のラグビー文化を、W杯という最高の舞台と共に、この国に招致されたご苦労に敬意を表します。ホスト国としてのチームはもちろん、今も現地で働くスタッフ、ボランティア、全国で携わった方々すべて、この大会を愛し、楽しまれたからこそ多くの人に感動が広がったのだろうと思われます。
最後に南アの強さを見せつけられたのも良かったです。強豪国の強さをファンも身を持って知ることで、次の目標も見えた気がします。
わたし的には、あの行き先知れずの楕円のボールだからこそ、可能性があるのだということを教えられたことが大きいですね。
> パインさんへ
今回のワールドカップはティア1の国以外で行なわれた初めてのワールドカップでしたっけ?まだ準決勝、決勝は残っていますが、大いに盛り上がったという部分は評価出来ますよね。台風での試合中止などは今後の課題だとは思うのですが、ホスト国日本の快進撃もあって大いに楽しむ事が出来ました。