小川泰弘ノーヒットノーラン達成

ヤクルト9-0DeNA

レアなものを見せてもらった。ノーヒットノーランには運も必要なのだが、今日の小川の投球内容はノーヒットノーランに値する見事な投球内容だった。それにしてもチームは5連敗中、相手は先週の登板時に打ち込まれた強力打線のDeNA、相手先発はエース今永、猛暑の中での屋外球場横浜スタジアムと厳しい条件の中でのゲームだったのだが、その中でのノーヒットノーランは見事としか言いようがない。

先週のゲームと同じマッチアップとなった今日のゲーム、何とかリベンジを果たしたい小川は初回から気持ちの入った投球を見せてくれた。1回表のチャンスを味方打線が潰してしまい、嫌な雰囲気の中でのスタートとなったのだが、初回、2回とそれぞれ、四球、エラーのランナーは出したものの、ストレート、変化球ともに抜群のキレとコントロールがあり、調子良さを感じさせてくれた。
3回に山田哲、青木の連続タイムリー2ベースヒットで味方打線が3点をプレゼントすると、続く4回にも今永のコントロール、守備の乱れもあり、更に3点を追加し、試合の流れをがっちり掴むと、ここからは、小川の独壇場となった。ストレートは常時140キロ台中盤を記録し、そのストレートが打者の内外角にビシビシと決まっていた。また多少甘く入っても空振り、ファールでカウントを稼ぐ場面もあり、やはり小川の生命線はストレートだと認識できる投球となった。ストレートが走っていれば、変化球も活きてくる。多少ボールを動かして打者の芯を外すカットボール、カウント球としても勝負球としても使えるチェンジアップ、フォークを有効活用し、DeNA打線に的を絞らせなかった。これだけコントロール良く投げ続けながら的を絞らせないという投球は中々出来るものではない。小川の凄みを感じさせてくれる投球だった。
そして今日のゲームでは小川のもう一つの武器である精神面の強さも感じさせてくれた。相手先発が今永ということもあり、いつも以上に立ち上がりにはプレッシャーを感じていたと思うのだが、そんなプレッシャーをはねのけるようにアウトカウントを重ねていった。試合展開的にもノーヒットノーランを意識できる展開となり、本人も5回くらいから意識していたとのコメントが出てきているが、そんな中でも自分のペースを崩さずに投げ続けられることも素晴らしいスキルの一つである。今日のゲームでは若手の濱田、廣岡のエラーもあり、2,3個余計にアウトを稼がなければならなかったのだが、表情一つ変えずに投げ切ってみせた。特に廣岡の落球は8回の本来であればダブルプレーが奪える場面でのミスであり、かなりガックリ来ても仕方ないような場面なのだが、その後の0アウト1,2塁のピンチでもしっかりアウトを重ねたところに小川の強さを感じることが出来た。廣岡を助けるノーヒットノーランにもなったのではないだろうか?
7回くらいからはおそらく完全に狙いに行っていたと思うのだが、狙いに行ってしっかりノーヒットノーランを達成してしまうのだから恐れ入ってしまう。9回で135球を投げ、被安打0、奪三振10、与四死球3でのノーヒットノーラン達成。135球を投げ切った身体のダメージが心配であるなどと言う野暮なことは今日は書かなくていいだろう。小川の凄みが詰まった135球の芸術的なピッチングだった。小川投手ノーヒットノーラン達成おめでとうございます。

小川の大記録達成があったため、打線についてはおまけ程度に触れておきたいと思う。DeNA先発の今永はコントロールに苦しみ、いつもの安定感は影を潜めていた。しかし初回のチャンスを潰してしまい、2回もあっさり抑え込まれてしまったため、今日も苦しい展開になることも予感させていたのだが、3回に山田哲、青木の連続タイムリー2ベースが飛び出し、試合の流れを掴んでみせた。復帰後初ヒットがタイムリーとなった山田哲に関しては、チャンスでいい仕事をしてくれたという感想以外は持ち合わせていない。今永のインコースのストレートを上手く捌いたとは思うが、登録抹消される前もインコースを何とか捌き、フォロースルーで右手を放すようなヒットは見られていた。この一本で復調が期待できるという類のヒットには感じなかった。それでも今永を攻略する一打は今日のゲームに限って言えば、大きな一打となった。
その後は相手の自滅もあり、上手く追加点を奪えた印象である。小川のノーヒットノーラン達成を手助けするような9得点となった。

P.S ノーヒットノーランは中々見れないので、やはり応援するチームの投手が達成してくれると嬉しいですよね。私自身はブロス、石井一、ガトームソンのノーノーをリアルタイムで見ているので、今日の小川で4人目となります。
ブロスの時は東京ドームでの巨人戦で確か死球が1つあっただけの完全試合未遂だったと思います。ルーキーだったライト稲葉のダイビングキャッチが印象に残っています(打者は川相だったかな。)。
石井一のノーヒットノーランは優勝争い真っ只中で追い上げてくる横浜の勢いを力でねじ伏せた伝説のノーヒットノーランですね。当時の横浜はチームとして勢いに乗っており、翌年はマシンガン打線で日本一に輝くようなチームでしたからその横浜を子ども扱いするような快投は強烈なインパクトを残してくれました。
ガトームソンのノーヒットノーランはまだ球団創設2年目で戦力が整っていなかった楽天から記録したものである。最後のアウトを当時ルーキーだったレフト飯原がガチガチになりながらもなんとか捕球したシーンが印象的でした。
やはりノーヒットノーランというものはファンにとっても特別なものですよね。スポーツニュースなどで大きく扱われるので、私の中にもしっかり記憶に残っています。

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コメント

  1. JEF九郎 より:

    2013年の楽天でのまーくんみたいなピッチャーが居れば…。そんなことを思い浮かべていた矢先の出来事でした。

    チーム状況は最悪。そして相手は日本を代表する左腕に成長した今永、そして超強力DeNA打線。
    絶望的な状況で迎えた1戦で、このままズルズルと行くのか、、、今年もココで力尽きてしまうのか、、、っと半ば諦め気味に眺めていたので、歓びと驚きが入り混じる不思議な気持ちになりました。

    小川自身、コンスタントに毎年ローテーションは守ってはいたものの、成績自体はルーキーイヤーと優勝した15年以来2桁勝利も無く、今年は開幕投手も大ベテラン石川に譲る形となっており、心に期するものがあったのでしょう。そんな強い想いを最高のイミングで発揮してくれたと思います。ありがとうと言いたいです。

    お陰で今日は反転攻勢に向けた大事な1戦とする事ができました。相手は平良とこれまた難敵ではありますが、勇気をもって挑んでいって欲しいと思います。

    ※ 今週発売になる来週の巨人戦、現地行っちゃおうかな。

  2. 超匿名 より:

     小川はお見事でした。長いイニングを投げてチームを勝たせてと思っていたのですが、完投、完封を飛び越えノーノーを達成してのけるとは、良い意味での想定外でした。これで本人もチームも再びのっていって欲しいものです。 
     調べてみたら、国鉄時代を含めればヤクルトはノーノーの達成回数が3位タイという、回数の多い方の球団だったのが意外でした。
     

  3. FIYS より:

    JEF九郎さんへ

    確かに最高のタイミングでのノーヒットノーランとなりましたね。チームを蘇らせる投球になりましたかね?

    現地観戦、気を付けていってらっしゃいませ。

  4. FIYS より:

    超匿名さんへ

    このノーノーは想定外ですね。見事でした。

    ノーノーの達成回数は3位タイなのですか?それは意外です。

  5. sabo より:

    この一週間ずっと小川のノーヒットノーランの余韻に浸りながら過ごしてました(笑)

    私の記憶では2015の春に9回途中までノーヒッター未遂していたはずと思い調べたのですが管理人さんが毎試合日記にしてくれているおかげもあって見つかりました!

    2015.4.17(神宮)ヤクルト3-1DeNA
    ヤクルト小川惜しくも完封未遂……

    ”完封未遂”を”ノーヒットノーラン未遂”に記憶を美化してしまうとは人の脳とは恐ろしい(笑)こんな間違い私だけかもしれないが(笑)

    しかしこの2015.4.17の小川のピッチングは実際凄かったですよね。7回1死までは完全試合でしたし、いつか必ずや小川が完全試合かノーヒットノーランの偉業を成し遂げると思ったのです。そして私がイメージする理想の小川はずっとこの日の小川でした

    ただそのあとはケガや不調で思うような成績をあげられない年が続いてましたから、正直こんな偉業を成し遂げるとは全く想定外でした

    しかし小川はついに2015.4.17の自分自身を超えて見せました。2020.8.15の小川こそが私にとって理想の小川であると更新されました
    一番の成長はスタミナですよね。気力と言ってもいいかもしれない。新人王最多勝の2013年も含めて135球も投げて球威と制球が落ちない肉体と精神ではなかったと思います
    でも小川は5年以上成績は下降し続けていても身体を鍛え続けたから135球もあれだけの球威と制球を維持できる

    努力の人であることに感服しました

  6. FIYS より:

    saboさんへ

    過去最高の小川の姿だったかと思います(2桁奪三振が初めてだったということにも驚きました。)。2015年4月のゲームは私は記憶から抜け落ちていました。

    このタイミングでノーヒットノーランは私も想定外でした。

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