昨年はコロナウイルス感染防止のために春の選抜は中止となり、夏の選手権も交流試合という形でしか実施出来なかったため、久々の全国大会となった。複数の好投手を擁する東海大相模の優勝で幕を閉じたのだが、高校球児のハツラツとしたプレーが見れることはやはり幸せなことである。
今大会の個人的な印象としては、好投手の多い大会だったというものである。それだけ力のある投手が甲子園に駒を進めてきたということなのだと思う。将来プロに進む投手が多い大会になるのではないだろうか?コロナ禍による実戦不足により、例年以上に打者よりも投手に分があったということもあったのかもしれないが、最近の高校生投手の器用さと完成度の高さに驚かされた。打者も仕上がってくるであろう夏の大会が早くも楽しみになってきた。それでは印象に残った選手を簡単に振り返ってみたい。
投手
小園 健太(市和歌山)
・完成度の高さ、相手打線や試合展開を読んで投げるスキルという意味では、この小園の投球が際立っていた。フォーシームも素晴らしいボールなのだが、ツーシームやカットボールなど打者の手元で変化させるボールをしっかりコントロールできる所に器用さを感じた。まだまだ底を見せていない印象もあり、今後の成長が非常に楽しみである。ドラフト上位候補と見て間違いないだろう。
達 孝太(天理)
・193㎝という長身でありながら、フォームのバランスが非常に良く、将来性の高さを感じさせてくれた。ストレートも変化球も低めに集められるのが才能である。フォークの使い方もカウント球としてもウイニングショットとしても使うことが出来、高校生離れしていた。身体が出来てくるである20代中頃の年齢に達した時にどんな姿を見せてくれるのか楽しみである。こちらもドラフト上位候補である。
木村 大成(北海)
・ストレートとスライダーのキレが抜群だった。上半身を柔らかく使うことが出来、肩甲骨の可動域の広さを感じさせてくれた。現オリックスの田嶋の佐野日大高校時代と比べると投球の上手さ、制球力という部分では田嶋に軍配が上がると思われるが、投げるボール自体の質は互角だと感じた。右バッターからも空振りが奪える膝元に曲がり落ちるスライダーは一級品である。この投手も高卒即プロがあり得るのではないだろうか?
石田 隼都(東海大相模)
・甲子園ではおなじみのハイテンポでリズムを作るサウスポーが一回りも二回りも大きくなった姿を見せてくれた。優勝校のエースにふさわしい投球を披露してくれた。29回1/3を無失点で投げ切り、45奪三振、与四死球が2つのみという数字は近年の甲子園優勝投手の中でも出色の出来である。これまでは「高校球界の中では好投手」という印象だったが、今大会で大きく株を上げる形となった。完成度の高いサウスポーと言えば現中日の濱田(愛工大名電)、現ヤクルトの寺島(履正社)の名前を挙げることが出来るが、1つ1つのボールの質で石田が上回っているように感じる。とにかく今大会で残した数字が圧倒的である。高卒でのプロ入りも視野に入ってくるのではないだろうか?
畔柳 亨丞(中京大中京)
・秋以降に怪我もあったということで不安要素もあったと思うのだが、前評判通りの投球を披露してくれた。1年先輩の現中日の高橋も素晴らしいストレートを投げていたのだが、畔柳のストレートも負けていなかった。準決勝での緊急降板が気になると言えば気になるのだが、空振りを奪えるストレートという意味では今回の大会でも№1だったのではないだろうか?上背の低さも気にならない迫力のあるボールを投げていた。
花田 侑樹(広島新庄)
・現レンジャースの有原になり得る素材の投手だと感じた。強力上田西打線をストレートで圧倒した1回戦の出来が素晴らしかった。ストレート、変化球ともにコントロールも抜群であり、高校レベルであれば崩れる姿が想像出来ない投手だった。サヨナラ打を放った打撃も素晴らしく、野球センスの高さを感じさせてくれた。
西村 王雅(智弁学園)
・スリークォーターの小型サウスポーは、球速表示以上に手元で伸びるストレートを軸に相手打者と対峙してみせた。1年夏から甲子園を経験している、高校野球ファンからすると有名な投手なのだが、一冬越して、ボールに力強さが増してきた印象である。キレで勝負する小型サウスポーにとって最後の夏は非常に重要な夏になりそうである。上のカテゴリーで評価されるためには、打者も仕上がる夏にもう一度結果を残す必要がある。少し古い選手と重ねるが、10年以上前に秋田の明桜高校で活躍した二木投手を思い出した。
深沢 鳳介(専大松戸)
・内外角を広く使える技巧派サイドハンドである、外はより外に内はより内に投げることが出来る実戦派のサイドハンド右腕である。個人的に大好きなタイプの投手である。力強さという意味では現ヤクルトの市川(明徳義塾)には劣るが、ゲームを作るという意味では非常に高いスキルを持っていると感じた。即プロは難しくても大学や社会人と言った上のカテゴリーでも活躍できる姿が想像できる投手である。
毛利 海大(福岡大大濠)
・このサウスポーもキレが抜群だった。東海大相模戦では負けん気の強さが裏目に出た部分もあったかもしれないが、ストレートで打者を差し込む場面が目立った。昨年のロッテドラ1鈴木の常総学院高校時代を思い出した。タイプは全く違うのだが、1年先輩の山下(オリックス)の背中を追いかけてもらいたい。
松浦 慶斗(大阪桐蔭)
・初戦の智弁学園戦の立ち上がりにいきなり崩れてしまったのだが、がっしりとした体格に努力の跡を感じることが出来た。投球フォームも滑らかであり、先輩の高山(現日本ハム)、横川(元巨人)と比べても同じ時期の評価なら松浦の方が上なのではないだろうか?立ち上がりという部分の修正を図れれば面白い存在になりそうである。
伊藤 樹(仙台育英)
・こちらも学生球界のなかではよく知られた存在である。1年夏から甲子園を経験しているのだが、ストレートのボリューム感が増してきた。元々完成度の高い右腕だったのだが、そこに力強さが加わってきた。元ヤクルト、由規の2年夏がこんな雰囲気だったように記憶している。由規はその後一冬越してとんでもないストレートを投げ込めるようになっていたのだが、伊藤の伸びしろはどれほどだろうか?明徳義塾戦での投球は見事だった。
代木 大和(明徳義塾)
・超高校級という言葉は使えないが、クレバーでよくまとまったサウスポーである。状況応じた投球が出来るだけの引き出しを持った投手であり、並のチームではあっという間に試合を支配されてしまいそうである。今後どういったタイプの投手に成長していくのか見守りたい投手である。
【追記】一人触れようと思っていて触れ忘れた投手がいるので追記します。
若山 恵斗(東海大甲府)
・初戦で優勝した東海大相模に敗れたのだが、コントロールと緩急の使い方が非常に上手く、強く印象に残っている。サイズには恵まれていないサウスポーなのだが、打者との駆け引きで常に優位に立っていた印象である。守備、牽制と言った投げる以外の部分がきっちりこなせるのも魅力的である。
野手
池田 陸真(大阪桐蔭)外野手
・野手では大阪桐蔭池田のスイングが目立っていた。強く振ってしっかりコンタクトできる部分は左右の違いはあるが、現西武の森を彷彿とさせてくれた。サイズが小さいのは気になるが、個人的にはプロで見てみたい素材だと感じた。今大会の野手の中では最も魅力的な選手に映った。
松川 虎生(市和歌山)捕手
・小園ー松川のバッテリーは、バッテリーで記憶しておきたい名コンビである。プロということを考えると物足りない部分もあるかもしれないが、スター投手を陰で支える捕手としていい味を出していた。捕手らしい捕手だった。バッテリーセットで記憶に残っていると言えば福岡大大濠で活躍した三浦ー古賀のバッテリーである。松川も古賀のように上のカテゴリーでもチームに欠かせない捕手を目指してもらいたい。
センバツの振り返り記事でこれだけ多くの投手の名前を挙げたことはなかったのではないだろうか?フルで観戦出来た試合はほぼなかったのだが、ネットなどで動画を確認させてもらった。とにかく今どきの高校生投手の器用さに驚かされた。ストレートと1つの変化球では全国レベルでは通用しない時代になっているのかもしれない。情報量の多さを自分の中でかみ砕き、レベルアップにつなげることが出来る選手が増えてきている印象である。面白い大会だった。
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コメント
お久しぶりです。毎度高校野球の話になると出てきます。
高校野球の躍動する選手たちの陰では、その犠牲になっている存在もあります。
部活の事しか考えずに授業を手抜きする監督のせいで学習権を奪われる生徒、やりたくもない部活に関わらされて消耗し病んでいく教員、そしてその家族。
もちろん野球部だけに限らず他の部活にも共通する要素なのですが、その象徴的存在が「甲子園」なのだと思います。
どうして野球は高校という枠組みの中でやらなければいけないのでしょう?サッカーならユースのクラブチームで活躍している選手もたくさんいるのに。
まるふくさんへ
学校の部活という考え方をどこかで変えなければならないかもしれませんね。
野球人口も減り続けていますし、どこかで改革が必要な状況にはなっていますよね。