高橋奎二VS宮城大弥

日本シリーズ第2戦
ヤクルト2-0オリックス(ヤクルト1勝1敗)

昨日に続いて今日もヤクルト側から見れば「これしかない。」という展開に持ち込むことが出来た。それにしても高橋と宮城という若手サウスポー同士の投げ合いは見応え十分だった。今年の高橋は、シーズン中も味方打線が完全に抑え込まれている中で相手に得点を許さなかったゲームがあったのだが、今日も先制点を奪われてしまえば、それが1点であったとしても致命傷になる可能性が高かったゲームである。そんなゲームで先制点を許さず、宮城に投げ勝ち、そのままプロ入り初の完封勝利を飾ってしまうのだから恐れ入ってしまう。持っているボールは元々一級品だったのだが、そのボールを持っていながら、中々結果が伴わなかったのだが、これまでの高橋である。しかしシーズン後半戦での投球、CS、日本シリーズの投球を見ていると、ついに投げるボールと結果が比例してきた印象がある。奥川に注目が集まることが多かったと思うのだが、この完封で右の奥川、左の高橋という左右の二本の柱が出来上がったという評価がなされるのではないだろうか?
昨日の逆転サヨナラ負けの残像は最後まで消えることはなかったのだが、その残像を高橋が一人で吹き飛ばしてくれた。


ゲーム前半の主役はオリックスの先発宮城だった。後半戦はスタミナ切れを起こし始めている印象があり、前半戦程難攻不落の印象はなく、CSでも登板がなく、1軍での実戦登板から離れていたため、立ち上がり含めて付け入る隙はあるのではないか?と思っていたのだが、初回からボールのキレ、コントロールともに抜群であり、全く隙が無かった。長年プロ野球ファンを続けているが、高卒2年目のサウスポーでここまで完成度の高い投手はおそらく見たことがないと思う。投球の幅の広さ、引き出しの多さもあり、すでにプロで10年以上戦っているような雰囲気を身に纏っている。ヤクルトの奥川もロッテの佐々木朗もとんでもない才能の持ち主なのだが、この宮城も凄い才能の持ち主である。内外角の出し入れ、ストレート、変化球のバリエーションの多さ、打者の反応を見て、配球を組み立てられるクレバーさと投手としていくつもの才能を併せ持っている投手である。正直高橋がどこかで1点を許してしまっていたとしたら、今日のゲームはおそらく負けゲームになっていたのではないだろうか?それ程までに5回までの投球は完璧だった。
ヤクルト打線がようやく宮城から初ヒットを放ったのは、6回1アウトからだった。西浦がセンター前にヒットを放つと今日のゲームで9番に入った坂口にもヒットが飛び出し、1アウト1,2塁のチャンスを作ったのだが、ここで塩見、青木が打ち取られて先制のチャンスを逃してしまう。7回も村上にヒットが飛び出したのだが、後続が続かず、1点が遠い展開となってしまったのだが、宮城のボールのキレ、コントロールは球数が100球程になってから徐々に落ち始めている兆候はあった。そして8回に1アウトから西浦がこの日初めてとなる四球で出塁すると2アウトから塩見がヒットで続き、2アウト1,2塁とチャンスを広げてみせた。ここで青木がインコースのストレートに詰まらされながらもセンター前に落とす先制タイムリーヒットを放ってみせた。塩見のヒットも青木のヒットもおそらく宮城からすれば失投ではなかったと思うのだが、前半に比べて僅かにボールのキレが落ちていたのではないだろうか?そこを塩見、青木が捉えてみせた。今シーズンは中々打率が上がらず苦しんだ青木なのだが、大事な場面での集中力の高さは流石である。
9回は代わったバルガスから1アウト後、サンタナが四球を選ぶと続く中村は送りバントでランナーを2塁に進め、続くオスナのライト前ヒットを杉本がファンブルする間に代走で起用されていた元山がホームに返り、貴重な追加点を奪ってみせた。
近年のヤクルトはこういった粘り強い野球が出来ていなかったのだが、今シーズンのヤクルトはこういったロースコアのゲームを粘り強く戦う中で勝ち星を拾ってきたチームである。他球団ファン、特にパリーグの球団のファンはもしかするとヤクルトに関して「強力打線で勝ち抜いてきた。」というイメージを持たれる方も多いのかもしれないが、日本シリーズ第1,2戦を見て、今シーズンのヤクルトの本質を掴んでもらえたのではないだろうか?

さてここでもう一度今日のヒーロー高橋について触れていきたい。今日は、9回で133球を投げ、被安打5、与四球2での完封勝利となった。初回から5回まで毎回ヒットを浴びる苦しい投球となったのだが、力んでボールが暴れる場面は少なく、ランナーが出た後の投球もある程度安定していた。相手先発の宮城がパーフェクトピッチングを続けていたため、防戦一方といった雰囲気もあったのだが、そんな展開でも先制点を許さなかったことが大きかった。高橋がテーマとしている投球時の「脱力」がある程度出来ていたため、ボールのキレ、コントロールが安定し、無駄のスタミナの消費もなかったのではないだろうか?
味方打線が初ヒットを放った6回以降は、逆に高橋がオリックス打線を抑え込み始め、形勢が逆転することとなった。正直青木のタイムリーで先制した時点で、清水、マクガフの継投に移行していくものだと思っていたのだが、高津監督は最後まで高橋にマウンドを託した。球数が100球を超える中でプロの世界で長くても8回までしか投げていない高橋を続投させるという決断を下すことは簡単なことではないのだが、高津監督は、日本シリーズという大舞台でその決断を下してみせた。その起用に応える高橋はもちろん素晴らしいのだが、2軍時代から育ててきた秘蔵っ子を信じて、最後まで任せた高津監督の判断も素晴らしかったと感じる。
投球の組み立てなど考える余裕はなく、1球1球とにかく全力で腕を振りまくっていた高橋の粗さがいい具合に削れてきており、試合を作れる本格派左腕に成長してきたことを感じさせてくれた。
今日の投球は、ゲームの舞台、シチュエーションなどを加味して考えると100点満点中200点を付けたくなるような、そんな投球だったのではないだろうか?
ビジターである京セラドームでの2連戦を1勝1敗で終えたことによって、3戦目以降がますます面白くなりそうである。奥川、高橋の好投に他の先発投手陣は気持ちを滾らせているはずである。第3戦目はおそらく小川がマウンドに上がると思うのだが、すでにクールに青い炎を燃やしている小川の姿が想像できる。やってくれるのではないだろうか?

P.S 高橋の133球での完封劇は良い意味で想定外でした。これで第6戦、7戦目までもつれ込んだ時の投手起用が尚更読みづらくなりましたよね。流石に第6戦に中5日で高橋を起用して、第7戦に中7日で奥川起用ということはあり得ない気がするんですよね。高橋、奥川ともに第7戦に起用するとか、高橋をリリーフで待機させるとかそんな可能性もありますかね?ファンがそんな先のことを考えてはいけないのですが、高津監督をはじめとする首脳陣は様々な投手起用法を考えているでしょうね。

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コメント

  1. sabo より:

    高橋奎二がここでこれほどのピッチングをするとは!
    133球投げても150キロ出てるし、球界トップクラスのエンジン(ガソリン?)ですね
    人間的にも熱さと冷静さをあわせ持つ粘りのピッチングであれは思わず9回も託しちゃいますね
    練習は参加してるみたいなのでシリーズでまだ投げる可能性ありますね(ヤクルトが残り全勝で高橋奥川の出番が無いのが一番ではありますが)

    東京初戦は予想通り小川。交流戦では勝った組み合わせだから良いイメージで臨めるはず
    あとはとにかくベストを尽くすのみです

  2. FIYS より:

    saboさんへ

    かつての「ボールは一級品だけど…」という姿ではなくなりましたよね。安定感が出てきましたよね。前半のピンチを凌いでの完封ということで価値のある投球でしたよね。

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