日本シリーズ第6戦
ヤクルト2-1オリックス(延長12回)(ヤクルト4勝2敗)
この日のゲーム含め稀に見る激闘続きの日本シリーズとなった。初戦からこの日の決着まで正直気の抜ける場面が全くなかったと感じるような凄まじいゲームの連続だった。この日に関しても12回表に簡単に2アウトを取られた時点で、今日の勝ちは難しくなったなかな?と感じていたのだが、そこから塩見のヒットと相手のミスが絡んだ中でチャンスを作り、ヤクルトの切り札川端が決勝タイムリーを放つのだから驚いてしまう。
おそらくヤクルトファン以外のプロ野球ファンはこの激闘シリーズを1試合でも多く見ていたいと感じている人の方が多数派だったのではないだろうか?今日が引き分けに終わっていれば第8戦にもつれ込む可能性や今年のシリーズのルールであるタイブレークに持ち込まれる可能性もあったため、そういったシチュエーションが頭をよぎったファンの方もいるのではないだろうか?しかしそうならないからこそ、筋書きのないドラマなのだと思う。日本一を達成し、グラウンド上で涙を流す選手達を見て、93年の日本シリーズを思い出したオールドファンの方もいるのではないだろうか?93年と今年のチームでは開幕前の置かれている状況が全く違ったため比較はできないのだが、ほぼほぼ日本一の経験がない選手達が必死に戦って手にした日本一という部分に関しては、共通項があったのではないだろうか?セリーグ覇者のヤクルトスワローズ、パリーグ覇者のオリックスバファローズ、どちらも素晴らしいチームだった。お互い力を出し切った日本シリーズだったのではないだろうか?そんな素晴らしいシリーズでヤクルトが20年ぶりに日本一に輝いたことを大いに喜びたいと思う。ヤクルトファンの皆様おめでとうございます!
第6戦の先発投手はヤクルト高梨、オリックス山本というマッチアップとなった。私自身は高橋の中5日も奥川の中7日も考えづらいと思っていたため、予想通りの高梨先発となった(元々は第5戦が高梨、第6戦が原という予想でしたが…)。ほっともっとフィールド神戸でのナイトゲームということで寒さが気になるゲームとなったのだが、オリックス先発山本は、初回から球威、コントロールともに抜群であり、コンディションの悪さなど吹き飛ばすような投球を披露していた。そうなると高梨には想像以上にプレッシャーが掛かったと思うのだが、初回のピンチを脱するとそこからは、粘りのピッチングでオリックス打線に得点を許さなかった。ボールの迫力、精度では山本に軍配が上がるのだが、野球というスポーツは投げるボールの優劣を競う競技ではなく、どちらが多く得点を上げるのかを競うゲームであるため、高梨がオリックス打線を抑え込めば抑え込むほど、ペース的にはヤクルトが握っているような展開に持ち込むことが出来ていた。
結局高梨は、味方が先制した直後の5回裏に福田にタイムリーを浴び、ここで降板となったのだが、対山本というプレッシャーの掛かるマウンドで最低限の働きはしてくれたように感じる。荒れ球に危なっかしさは感じるのだが、それでいて緩急と高低の使い分けで三振を奪う高梨の長所は発揮してくれていた。
1-1というスコアの5回裏2アウト2塁という場面から継投に入ったのだが、まずはスアレスがしっかり役割を果たしてくれた。宗を三振に斬って取り、流れを切ると、6回、7回もマウンドに上がり続け、オリックス打線を抑え込んでみせた。第3戦に登板した時は思ったようにボールをコントロールすることが出来ず、苦しいマウンドとなったのだが、今日はしっかり修正し、ロングリリーフも出来るという強みも活かしてくれた。シーズンとは違い延長が12回まであることを考えると、スアレスが2回1/3をしっかり投げてくれたことが、チームにとって大きかった。
1-1というスコアで試合が推移する中で、スアレスの後を継いだ清水も8回、9回と2イニングを投げることとなった。1点でも取られてしまえば負けとなってしまう9回のマウンドも任されたのだが、ピンチを迎えながらも代打ジョーンズを冷静な判断で歩かせ、続く福田をきっちり打ち取って2イニングを無失点で抑えてみせた。
10回は田口をマウンドに送り、宗、吉田正を抑えたところで、マクガフを投入してきた。この継投は驚いた。このシリーズで2敗を喫しており、先日の第5戦では同点の場面でジョーンズに決勝ホームランを浴びていたため、この試合のマウンドに上がるとすればチームがリードをしている場面もしくは延長12回の1イニングの登板になると予想していた。しかし高津監督は10回の2アウトランナーなし、打者杉本の場面で起用してきた。ここで杉本をきっちり三振に仕留めると、11回のマウンドでも三者凡退に抑え、普段であればマクガフの仕事はこれで終了になったと思うのだが、この日は、1点を勝ち越す中で12回もマクガフがマウンドに上がった(同点でもマクガフ続投の雰囲気でしたが…)。1アウトから途中出場の山足に嫌な形での死球を与えてしまったが、続く福田、宗をきっちり打ち取り、日本一を決めてみせた。
今シリーズは激闘続きであり、私のようなファンであっても最後の最後まで緊張しながらゲームを見続けていたのだが、おそらく最もプレッシャーの掛かる場面で起用され続けたのがマクガフだと思う。第1戦での逆転サヨナラ負けがあり、その後のマウンドも厳しいシチュエーションばかりだった。第5戦ではジョーンズに決勝ホームランを浴びるなど、ここまで2敗を喫していた。おそらくマクガフ自身極限の心理状況でマウンドに上がっていたと思うのだが、そんな中での1勝2Sという数字は見事な数字だと思う。中村のMVPに異論はないが、個人的には2敗を喫しながらチームの勝利に貢献したマクガフがMVPでも全く異論はなかった。今日の2回1/3の投球は、クローザーとして最高の仕事をしてくれたと思う。勝っても負けてもマウンドでは表情を変えず、淡々と投げ続ける姿に精神面の強さを感じさせてくれる。
またマクガフを信じ続けた高津監督の起用法も印象的だった。
打線は、今日も山本の前に苦しんだ。初回、2回とストレートでガンガン押してくる山本を捉えられず、このまま手も足も出ずに抑え込まれてしまう可能性もあるのかな?と思っていたのだが、3回は0アウト2塁、その後2アウト1,2塁、4回は0アウト2塁、その後1アウト3塁、5回は1アウト2塁、6回は0アウト1,2塁、その後2アウト3塁、7回は1アウト2塁、その後2アウト1,2塁と相手のミスもあったのだが、想像以上にチャンスを作ることに成功した。しかしピンチになるとギアを上げてくる山本の前に思うように攻撃することが出来ず、結局5回2アウト2塁の場面で塩見が放った先制タイムリーヒット以外は、得点を奪うことが出来なかった。3回のチャンスでの宮本のバント空振りからのオスナの走塁死や4回の1アウト3塁からのサンタナ、中村の連続三振、6回の2つのエラーで貰ったチャンスでのサンタナのダブルプレーなど、後一歩で得点を奪えそうな場面を潰し続けてしまったのだが、これはオリックスの大エース山本を褒めるべきなのだと思う。逆に5回は、2アウトだったのだが、塩見が良くしぶといバッティングでタイムリーを放ってくれた。たかが1点、されど1点である。この日はおそらくロースコアのゲームでなければ勝つことが出来ないという中で高津監督はゲームマネジメントを考えていたはずである。そう考えるとこの先制点は1点以上の価値がある1点だったはずである。
結局山本には、若月との息の合った組み立てもあり、9回まで投げ切られてしまうのだが、それでもリードを許さずにマウンドから下ろすことが出来たのだからヤクルト側から見れば、どちらかというと理想的な試合に持ち込むことが出来ていたのではないだろうか?
10回からは、オリックスも継投となったのだが、当然山本以上の投手はいないため、ここからは、ようやくヤクルトが攻勢をかけられる展開となった。しかしオリックスリリーフ陣も簡単には得点を奪わさせてくれなかった。9回まで山本が投げ切ったこともあり、10回以降の投手リレーは非常に小刻みなものとなった。10回は平野、11回は能見と比嘉、12回は冨山と吉田凌というリレーとなった。その小刻みな継投に僅かな綻びがあったのが、12回2アウトからの継投だった。おそらくオリックスベンチは川端を起用させないためにもどうしても塩見でこのイニングを切りたかったのだと思う。敢えて左の冨山から右の吉田凌にスイッチしてきた。しかしここで塩見がヒットで出塁すると代打川端の場面でバッテリーミスもあってランナーが2塁に進塁する。一打勝ち越しの場面を作ると川端がフルカウントからの7球目のスライダをレフト前に落とすタイムリーヒットを放ってみせた。決して良い当たりではなかったが、前進守備のレフトとショートの間に落ちる貴重な一打となった。今シーズンは川端の一振りで試合を決めることが多々あり、川端が出てくるだけの球場の雰囲気を変えることが出来ていた。このシリーズではゲーム展開と川端を起用する場面がマッチせず、この打席が2度目の打席だったのだが、その中で決勝タイムリーを放ってしまうのだから驚いてしまう。第5戦の初打席でも平野のボールをしっかり捉えていたのだが、この日の打席でも初見では難しい吉田凌の独特のスライダーに打席の中でアジャストすることに成功してみせた。代打という仕事は非常に難しい仕事だと思うのだが、今シーズンの川端はその難度の高い仕事を完璧に遂行してくれた。この日のゲームのような「どうしても打ってもらわなければ困る。」と感じる場面での打率は体感的には5割くらいあったのではないかと感じさせるくらいの凄みが今シーズンの川端にはあった。最後の最後も美味しい場面で一本出してくれたのだが、打てなければまだまだシリーズが分からなくなる場面での一本はこれまで以上に特別な一本となった。
あまりの激闘続きで何を書いていいのか分からない状況になっている。6戦ともにリリーフ勝負に持ち込んだ先発陣も凄いし、リリーフ陣もオリックスに負けていなかった。MVPの中村は、攻守に大きく貢献してくれたし、野手陣もオリックスの好投手の前に苦しみながらも日替わりヒーローが誕生する形で勝利を拾ってみせた。
オリックスはオリックスで想像通りの全員で戦う数字以上に強さを感じさせるチームだった。そんな両チームががっぷり四つに組んだ今シリーズは、長い日本シリーズの歴史においても名勝負に数えられるであろう素晴らしいシリーズになったと思う。92年、93年、95年の日本シリーズを少年時代に経験しており、その時の激闘は当然印象強いものとなっているのだが、今年のシリーズもそれらのシリーズと同列に語っても良いようなシリーズになったと思う。日本一が決定した第6戦が延長12回、5時間近くの熱戦になったこともこのシリーズを象徴しているようで面白かった。
コロナ禍によるコンディショニングの難しさ、オリンピックによる変則日程、ホーム球場の変更、11月末の日本シリーズと選手、首脳陣、関係者にとっては昨シーズン同様に非常に難しい1年になったと思うのだが、そんな大変な1年を吹き飛ばすような日本シリーズとなった。
ヤクルトファンとしては、20年ぶりの日本一を見届けることが出来、最高の1年となった。このブログで日本一となったことを記すことが出来ることに感謝したい。皆さん本当におめでとうございます。そしてありがとうございます。
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コメント
個人的にMVPは皆に与えたいですね。
監督とかスコアラー含めて皆の勝利かなと。
いいチームですね。
感動をありがとう。
レギュラーシーズンに続き、シリーズでも下馬評を覆しての日本一はお見事です。初優勝や初めて常勝森西武に土を付けた93年も価値が高いと思いますが、久しぶりにセリーグに日本一の旗を取り戻した今回も非常に価値があると思います。
六度の日本一はなにげにダントツの巨人に次ぎリーグ二番目なんですよね。人気や伝統は阪神・中日・広島といったところに及ばなくても誇らしく思います。近年最下位が多いので強豪チームと言いずらい面もあるので、実績のヤクルトとするのはどうでしょうか?
最後に今年も全試合更新お疲れ様でした。
こちらのブログも日本一です!
日本一おめでとうございます!
日本一が決まった瞬間、青木や中村、村上、そしてキャプテン山田の涙を見て、私も思わず号泣してしまいました。
私はラグビーファンでもあり、2019年ワールドカップのラグビー日本代表も素晴らしいチームで感動しましたが、今年のヤクルトも、若手・中堅・ベテラン・外国人・監督コーチ、結束力のある本当に良いチームだと思いました。
最後は代打の神様、川端が決める所が今年を象徴するようで嬉しかったです。
相手エース山本を打ち崩した訳ではないですが、チームとして粘って粘って後半勝負に持ち込めた辺り、最高の勝ち方だったんじゃないでしょうか。
MVPが中村という事も嬉しく思います。来季は背番号27を付けて、古田も正式にコーチに加わってもらいたいものです。
最後になりますが、FIYSさん、今シーズンもお忙しい中毎試合欠かさずブログの更新を頂きありがとうございました。おかげさまで毎日良い時も悪い時も楽しく読ませて頂きました。そして最高のシーズンになりました!
来年も良いシーズンになるよう、引き続きよろしくお願い申し上げます。
日本一おめでとうございます!
今年のチームはシーズン、CS、シリーズと戦っていくなかで、本当にまとまりのあるいいチームになっていったと思います。勝って涙する選手たち、忘れられない光景になりました。
コメントは2年ぶり(?)ですが、ブログは毎日拝見しています。
今年も1年間、ありがとうございました!
日本一おめでとうございます!
長かった…シリーズも長かったですけどペナントシーズン含めて五輪もあり本当に長く感じましたね
もっと観ていたいという人もいるかもしれないですが私は絶対6戦目で終わって良かった
正直疲れましたもの(笑)
この日本シリーズについて一番感じるのはペナント終盤のマジックを減らせず足踏みしたあの苦しみを味わっておいて良かったという思いですね(笑)
あの苦しみと比べれば日本シリーズのどちらが優勝するか分からない接戦を見守ることが出来た気がします
選手たちがどう感じているかは分かりませんがやはりペナント終盤の方が苦しかったのではないでしょうか
山本は現世代で比べる投手がいないレベルの最強投手ですね
第一戦含めてよく1点取ったなと
ウチの高梨は今シーズン通りのナイスピッチングでしたね
高梨先発登板時の勝率9割は健在
結局はリリーフ運用と代打で決着が付きました
中嶋監督の采配もジョーンズの使いどころ以外は悪くなかったと思うのですが高津監督は投手出身という部分で違った野球が見えてましたね
つまり回跨ぎや球数に対する考え方ですね
私としては引き分けに魅力を感じなかった正直次の日も試合があるかもしれないのにこんなに投げさせて大丈夫か、という気もしましたが勝負師高津の采配的中でした
期待に応えたリリーフ陣も流石
川端は狙ってあそこに打球を落としたのでは無いでしょうけど、これまで何度もあそこに落とすのを見てましたし
身体が覚えていたように見事に内野と外野の間に落としましたね
それとここまで当たってなかった塩見が遂に2安打1打点1得点と重要な働きをしたのも良かったです
オリックスは下位打線も強かったな。粘りがあったし。代打もいるし、1~4番だけじゃなかった。何より若い選手が多くて伸びしろがすごそう
これからお互い3連覇なんてこともありえますよね
MVP中村は納得ですね。チーム打率一位だし
7戦目があれば高橋だったかもしれませんが
選手たちにはゆっくりと休んでもらってメディア出演などでお金も稼いでもらって英気を養ってもらいたいですね
とにかくおめでとうございます&お疲れ様です
優勝おめでとうございます!そして、1年間大変お疲れ様でした。皆さんもそうだと思いますが、私も試合出てる訳では無いのに、正直かなり疲れました(笑)選手、首脳陣、スタッフの皆様の努力には感服しますね。本当に1年間感謝・感謝・感謝です。
また、FIYSさんに置かれても、今年も1年間本当にお疲れ様でした。こちらのブログを介して、スワローズファンの皆様と繋がれて一緒に一喜一憂出来ていることを、心を込めて深謝申し上げます。コロナ禍において暗いニュースや生活の中で苦しい場面も少なくなかった中、私個人にとっては本当に心の支えとなる大きな楽しみでした。ご苦労も多いと思いますが、願わくば来シーズンもよろしくお願いします。
また、最終的な結果はさて置き、コロナ禍の厳しい世情の中、両リーグの前年度最下位チームが逆境を跳ね除け勝ち進み、これだけ多くの方に感動を与えたことは凄いことですよね。そして、最後を締めくくったのが、どん底から這い上がって来た川端慎吾と、オリンピックから辛酸を舐め続けた男マクガフというところにスポーツの不思議なチカラを感じます。
※ 川端にとっては、首位打者を獲った2015より今年がBest seasonだったのでは無いでしょうか。
来年もどんなドラマが待っているか、今から楽しみです。
オニさんへ
選手の嬉し涙を見ているとこちらもグッと来てしまいますよね。本当にいいチームですよね。
超匿名さんへ
久々にヤクルトだけでなく、セリーグにチャンピオンフラッグが戻ってきますね。色んな意味で価値ある日本一かと思います。
まるふくさんへ
お褒めの言葉ありがとうございます。でもそんなことはないですよ。いつも読んで下さり、ありがとうございます。
闘将さんへ
若手も中堅もベテランも噛み合っていましたよね。高津監督のマネジメント力が際立っていましたよね。よくこれだけ一枚岩のチームを作ったと思います。
山本という大エースを擁すオリックスにしっかり勝利出来ましたね。見事な日本一です。
2896さんへ
お久しぶりです。そして日本一おめでとうございます。素晴らしい光景を見せてもらえましたよね。
saboさんへ
本当に長いシーズンでしたよね。実際もう12月ですからね…
見応えのある日本シリーズでしたよね。ペナント終盤の苦しさは両チーム共々ですよね。そんなシーズンがあったからこその激闘という見方も出来るかもしれませんよね。
JEF九郎さんへ
私も疲れました(笑)。しかし疲れが吹き飛ぶような見事な日本一の光景を見ることが出来、ファンとして嬉しい気持ちでいっぱいです。素晴らしいシーズン、CS、日本シリーズでした。
このブログに対してのコメントもありがとうございます。こういったコメントが私自身の励みになります。