12月29日に各大学の区間エントリーも出揃ったため、今年も箱根駅伝の戦前ポイント記事を書いておきたい。
①往路の主導権争い
・今回の箱根駅伝は、駒大、青山学院大の2強対決と言われているが、他大学も特徴あるチーム作りを行うことが出来ており、レースの流れによっては、多くのチームに上位進出の可能性がある大会となりそうである。前回大会で決して前評判の高くなかった創価大が、往路で主導権を握り、ゴール直前まで首位を守ったことも、今回の箱根駅伝の戦略を考える上で参考にする大学が多いのではないだろうか?
厚底シューズの登場以降、これまで以上に高速化が進み、各大学、当たり前のように5000m13分台、10000m28分台の選手を揃えてきている。以前のように5000m13分台、10000m28分台を持っていれば、大学長距離界では、トップクラスの実力を有しているという時代は完全に終了した印象である。それに伴い、前回の創価大のように先頭で大きなストレスなく走ることが出来れば、記録以上に区間上位で走り切れるランナーも増えてきているように感じる。それだけに往路の主導権争いには大いに注目したい。
・前回大会の覇者駒沢大学は、田沢という大黒柱がおり、選手層も厚いため、往路、復路トータルで考えてメンバーを配置してきている印象はあるが、前回大会で創価大に逃げられてしまったことも頭の片隅には残っているはずである。もしかすると補欠に回った鈴木、花尾を往路に投入し、横綱相撲で逃げ切ることも頭の中では描いているかもしれない。
・駒大の対抗として名前が挙がっているのはここ数年結果を残し続けてきている青山学院大である。エントリーメンバー全員が10000m28分台を記録しているという層の厚さは、今大会№1である。全日本大学駅伝で田沢と競り合った近藤が2区にエントリーされていることも心強い。駒大をターゲットにレースを進め、往路終了地点で少しでも駒大より先にゴールしたいという青写真があるのではないだろうか?
・前回大会で往路優勝を果たし、総合でも2位に入った創価大は、前回大会以上に駒が揃ってきている印象がある。しかし前回大会は1区~9区までの流れがあまりにも出来すぎていた部分もあったように感じる。もちろん前回大会のことがあるため、優勝候補の1つとして名前を挙げてもよいのだが、他大学からマークされた中でのレースは、「前回大会のように流れに乗れるか?」という部分については不安もあるのではないだろうか?本当の力が試されるレースになりそうである。
・昨年3位に入った東洋大は、2区松山、5区宮下のコンディションがどこまで上がってきているか?という部分が大きなポイントになりそうである。もし松山、宮下のコンディションが戻ってきているのであれば、1区児玉、3区前田、4区石田というような並びで往路優勝も十分に狙える選手は揃っている。前回大会の創価大のようなレース運びが理想の形になるのではないだろうか?
・全日本大学駅伝で3位に入った順天堂大もオリンピアン三浦という切り札を擁して、あわよくば総合優勝を狙いたいという思いはあるだろう。区間エントリーを見渡した中では、三浦、四釜、野村の使いどころという部分がポイントになりそうである。1区三浦、2区四釜という配置が最もオーソドックスだと思うのだが、2区三浦、5区四釜という配置もあり得なくはない。主力にアクシデントが発生していない中で戦略的に三浦、四釜を補欠に回しているのであれば、駒大、青山学院大にとっても脅威になりそうである。
・国学院大も今シーズンは、駒が揃った印象である。本来のエース格藤木、中西大が思うような結果を残せなかった全日本でも伊地知、平林という下級生がエース区間で想定以上の結果を残し、上位に進出してみせた。激坂王で結果を残した5区殿地、6区でも1区でも期待できる島崎、平地区間ならどこでも対応可能そうな木付という最上級生とマッチすれば総合優勝も夢ではない。土方、浦野というWエースが卒業して2年でここまでのチームを作ってきたことは称賛に値する。
・予選会で圧勝した明大もレースの流れにさえ乗ってしまえば、個々の実力はあるだけに面白い。オーソドックスに2区に鈴木を投入出来るのであれば、その後の区間も上位チームに引けを取らない可能性はある。明大は元々トラックのタイムが駅伝にリンクしてこないことが多いチームではあるのだが、上位でレースを進めることが出来れば、他大学と勝負できるだけの戦力は有しているはずである。
・大学長距離界№1ランナーのヴィンセント擁する東京国際大も3区までに大きな貯金を作ることが出来れば、後続のランナーがイメージした通りのシチュエーションで走れることとなり、実力以上の結果が付いてくる可能性もある。出雲駅伝を初出場で制した実力は侮れない。まずは1区山谷が出遅れずにヴィンセントにタスキを渡すことが大切になってくる。2区ヴィンセント、3区丹所というコンビは今大会でも№1の布陣である。大いに往路のレースを掻き回してもらいたい。
・古豪早稲田大は、10000m27分台トリオの中谷、太田、井川の走りにまずは注目である。太田が3区に入り、中谷、井川は補欠に回っている。普通に考えれば1区、2区で井川、中谷を起用してくると思うのだが、敢えて補欠に回した意図が見えづらい部分もある。鈴木、山口といった主力も補欠に回っていることが若干引っかかる。アクシデントが起きていなければ良いのだが…。本来であれば1区~3区で27分台トリオを並べ、復路でも鈴木、山口でタイムを稼ぐという戦略が理想的だと思うのだが、どんな区間配置になるか当日の注目である。
個人的には総合優勝の可能性があるのは、ここまでの9大学だと感じている。
・その他のチームで注目したいのは、まずは主力の怪我もあり、今シーズンは苦しんでいる東海大である。いわゆる黄金世代が卒業後の苦しい時期に差し掛かっているとは思うのだが、各選手は5000m、10000mのタイムは良いタイムを持っている。前評判は高くないだけにシード獲得が現実的な目標になると思うのだが、往路の高速レースに喰らいつければ上位進出のチャンスもあるはずである。
・帝京大もここ数年上級生中心の骨太なチームを作ってきているのだが、エース格の橋本が8区に回っているのが気になるところである。3区遠藤、5区細谷という勝負をかけられる駒はあるのだが、今回は東海大同様シード獲得が現実的な目標になるだろうか?3区にタスキが渡る時点でどこまで上位に喰らいつけるか?という部分が大きなポイントである。
・私が応援している中央大もシード獲得に向けてギリギリの戦いとなりそうである。1区吉居で他大学を振り落としたいという藤原監督の狙いは伝わるのだが、吉居1人でハイペースを演出するだけの力はまだないと思われる。1区で勝負を賭けたいと思っているであろう中央学院の栗原や当日エントリーで1区の可能性がある順天堂大の三浦、駿河台大のブヌカ辺りと引っ張り合いながらハイペースに持ち込みたいという所ではないだろうか?1区でこけてしまうと前回同様往路が非常に苦しくなる可能性が高い。吉居に掛かる期待とプレッシャーは非常に大きなものになりそうである。
ここまで12大学の名前を挙げたのだが、この12チームの往路の区間配置とレースの流れは、大いに注目してみたいと思う。今大会の往路は例年以上の激闘が予想される。
②9区、10区に実力者を残せるか?
①のポイントとは相反するポイントになるのだが、優勝争い、シード争いを考えたときに9区、10区がチームの9番手、10番手の選手になってしまうと苦しい展開になってしまう可能性がある。おそらく今大会は、上記の通り、往路の主導権争いが最初のポイントとなり、そのために各チーム例年以上に往路を重視するはずである。その中で確実に実力者を残せる大学は、駒大、青山学院大くらいである。その他の大学は、9区、10区にはどのような選手を配置するだろうか?例年通りであれば上級生が配置されることが多いのだが、どうなるだろうか?
極端な話、10区勝負を見越して、順天堂大の三浦のような実力者を10区に投入するようなこともあり得るような時代に突入してきているのかもしれない?ラスト勝負で勝ち切れるランナーの10区投入というものが今後のトレンドになることもあり得るだろうか?
③シード権予想
・青山学院大、駒沢大、国学院大、順天堂大、創価大、東京国際大、明大、東洋大、早大、帝京大の10チームにしたいと思う。しかし青山学院大、駒大以外の8チームは1つの大きなミスがあれば、あっという間にシード権を失ってしまう可能性もある。それ程までに熾烈な優勝争い、シード権争いになりそうである。
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コメント
往路が終わった時点ですが青山、駒大がしっかり強かったですね
帝京が2位には驚きました
東京国際大も速かった
去年の快進撃を考えると創価大はどうなんでしょう。去年は出来すぎかな
そして中大は往路6位は結構良いのではないでしょうか
復路にどれだけの選手が残っているのか詳しくないのですがシード権かなり期待です
正直、吉居の1区だけが見どころなんてならなくて良かった
速かった吉居と4区の中野が2年で5区の阿部が1年と若いのはかなり未来は明るいなと感じました
saboさんへ
青山学院大の盤石さが目立った大会になりましたね。
中央大は吉居の走りで波に乗りましたね。来年以降が楽しみですね。