第98回箱根駅伝振り返り

今年の箱根駅伝は、往路で主導権を握った青山学院大が、選手層の厚さも活かして横綱相撲で逃げ切る盤石のレースを見せてくれた。2位と大差が付いていても攻めの走りに徹した、9区中村、10区中倉の区間新記録に青山学院大の強さを見た。
2位以下のチームに関しては、戦前の予想通り目まぐるしく順位が入れ替わる混戦となった。今年は青山学院大が他大学を圧倒したが、ほんの少しのことでレース展開が大きく変わってしまうのが箱根駅伝の怖さであり、面白さである。来年以降も面白い戦いが繰り広げられそうである。
過去記事はこちらから→「第98回箱根駅伝ポイント
それでは各大学ごと振り返っていきたい。

優勝 青山学院大学
・エントリーメンバー全員が10000m28分台のタイムを保持しているという層の厚さで、他大学を圧倒してみせた。エントリーを見た段階では、岸本、佐藤辺りを往路に回してくるのでは?と予想したのだが、両者は復路での起用となった。1区志貴、3区太田に関しては、どうなのかな?という気持ちもあったのだが、こういった選手が優勝に大きく貢献するのが青山学院らしさの1つである。志貴は吉居がハイペースで飛び出した1区で優勝候補として100点の仕事を果たしたし、結果的に優勝を決定付ける走りとなった太田の快走は見事だった。主導権を握れたことによって、復路の走者は、高い能力を如何なく発揮することが出来たのではないだろうか?岸本、佐藤を復路に回せたこと、中村、中倉という9区、10区にも区間新記録を達成できるような走者を配置できたことに青山学院大の強さを感じることが出来た。見事な圧勝劇である。

2位 順天堂大
・1区平が大きく出遅れたことによって、非常に難しい展開になったと感じたのだが、2区三浦が難しいシチュエーションでも23.1キロという最長区間を無難に走り切ったことで、レースから取り残されなかったことが大きかった。3区伊豫田、4区石井という力のあるランナーがしっかり結果を残し、順位を大幅にジャンプアップさせると、順天堂大の武器の一つと考えられた5区四釜も区間上位でまとめ、往路を5位で終えることが出来た。
復路は6区牧瀬、8区津田の区間賞の快走もあり、2位に喰い込んでみせた。1区であれだけ大きく出遅れながらもしっかり巻き返したところに順天堂大の強さを感じた。来年は青山学院大に挑戦する年となりそうである。

3位駒沢大
1区唐沢、2区田澤がほぼ完璧な走りを見せ、2区終了時点では、駒沢が主導権を握ったように見えたのだが、3区安原の失速と4区花尾の消極的にも映る走りで一度は握ったように見えた主導権を手放してしまった。3区安原、8区鈴木という強いランナーがブレーキとなっても3位に喰い込めるということはやはり実力のあるチームだと感じさせてくれるのだが、それだけにもったいなかった。5区金子、6区佃もしっかり走れていただけに、「もし3区安原、4区花尾がもう少し粘れていたら…」という想像はしたくなってしまう。青山学院との激しいデッドヒートが繰り広げられていた可能性もあるのではないだろうか?

4位 東洋大
・スーパールーキー石田が欠場となり、ある程度上位で終えたかった往路で9位に沈んだことから、シードも危うくなったかな?と感じたのだが、復路のランナーでじわじわと順位を上げ、最後は3位にあと一歩の4位でゴールしてみせた。東洋大学の伝統、箱根駅伝でのノウハウがしっかり活かされていると感じた。2区松山の好走も印象的だったが、それ以上に20キロ以上の距離をしっかり走れる選手を育成できる部分に素晴らしさを感じた。青山学院と比べると霞んでしまうのだが、東洋大も選手層の厚さを見せてくれた。

5位 東京国際大
・たらればの話をしたくなってしまうのが箱根駅伝なのだが、もしY.ヴィンセントが2区で快走していたら、今年の箱根駅伝は全く違ったレースになった可能性がある。足の違和感からヴィンセントが本来の状態からは程遠い走りとなってしまったのだが、それでも3区丹所の区間賞で上位に付けると、不安視されていた5区、6区を何とか凌ぎ、7区以降は再び攻勢を強めてみせた。競り合いの中でもしっかり走り切れる勝負強いランナーが育ってきていることを感じることが出来た。ヴィンセントというワールドクラスの大砲がいることを考えると来年の箱根駅伝は青山学院大を脅かす存在になる可能性もありそうである。

6位 中央大
1区吉居の完璧なスタートダッシュで10年ぶりのシード権を手繰り寄せてみせた。戦前の記事では、吉居が1人でハイペースを演出することは難しいのでは?ということを書かせてもらったのだが、そんな私の予想を覆す、見事な区間新記録での快走となった。吉居が期待通りの走りを披露したことにより、苦戦が予想された2区を何とか乗り切り、久々に箱根路で噛み合ったレース展開を見せてくれた。苦しい時期にチームを支えた藤原監督に拍手を送りたい。
吉居に5区阿部、6区若林が残る来年はもう一段階段を上りたいシーズンになりそうである。

7位 創価大
・昨年のような快走とは行かなかったのだが、それでもしっかりシードを確保し、昨年の快走がまぐれではなかったことを証明してみせた。1区葛西が出遅れてしまったものの、昨年、一昨年とヒーローになっていた4区嶋津が今年も見事な走りで区間賞を獲得し、チームを上位に押し上げてみせた。5区三上は思うように伸びなかったが、往路に比べて力が落ちると思われた復路のランナーがしっかり結果を残し、往路8位から1つ順位を上げてゴールしてみせた。東京国際大にも感じることなのだが、留学生の力だけに頼ったチームではなくなっている。これからも楽しみな大学である。

8位 國學院大
・島崎の欠場、木付のブレーキもあり、らしくなり凸凹駅伝になってしまったのだが、それでもしっかりシードを獲得できたところに個々のランナーの力が付いてきていることを感じさせてくれた。2区伊地知、3区山本、9区平林は、國學院大学という枠に収まるランナーではなく、今後学生長距離界を引っ張っていけるだけの力を持った素晴らしいランナーだと感じる。藤木、島崎、木付、殿地といった力のある4年生は抜けてしまうのだが、それでも上位で勝負出来るだけの選手は揃ってきている。特に9区で快走した平林の今後には大いに期待したい。

9位 帝京大
・どうしても苦戦してしまう、1区、2区で今年は小野、中村が素晴らしい仕事をしてくれた。小野はハイペースの1区にしっかり順応してみせたし、中村は他大学のエースに喰らい付き、1時間7分10秒という素晴らしいタイムで花の2区を駆け抜けてみせた。2区終了時点で5位に付けたことにより、3区遠藤、5区細谷という稼げるランナーを有効利用することが出来た。4年連続で3区となった遠藤は今回も安定した走りを見せたし、細谷は2年続けての5区区間賞と強さを感じさせる走りを見せてくれた。
しかし例年は強さを見せる復路で大きく順位を落としてしまったところに不安も感じた。特に左ひざにテーピングをした状態の橋本を使わざるを得なかった所に苦しさを感じた。良くも悪くも例年とは違った帝京大の姿を見ることとなった。

10位 法政大
・このブログでも何度か書いてきているのだが、法大のポジティブサプライズは、いつも心地良いものである。今年に関しては、1区内田、2区鎌田、3区小泉でレースの流れに乗れたのが大きかった。それでもシードは苦しいかな?とも思ったのだが、6区武田が区間2位の快走で後のランナーに勇気を与えると、常にシードが伺える位置でレースを進め、最終10区で川上がシード圏内の10位に順位を上げてみせた。全日本でも粘りの駅伝が出来ていただけにもしかするとシードもあるかな?という気持ちも持っていたが、各ランナーが本当に良く粘れていたのではないだろうか?見事なシード権獲得である。

シード以外の大学ではやはり明大の失速が意外だった。昨年同様に往路の序盤で躓きそのままシード圏内に上がることなくレースを終えることとなってしまった。力のあるランナーを擁しながら2年続けて同じようなレースを繰り返してしまったことを来年に活かさなければならない。
早大も1区井川、2区中谷、3区太田という27分台トリオが本来の力を発揮出来ず、レースの流れに乗り切れなかった。久々に早大の脆い部分が表出してしまった印象である。
東海大は、苦しい展開の中でも1区市村、5区吉田、7区越が想像以上の走りを見せ、あと一歩でシード権獲得というシチュエーションを作ったのだが、10区吉富のブレーキにより最後の最後でシード権を逸してしまった。非常に惜しいレースとなってしまった。

青山学院の強さが目立つ結果になったのだが、2位~14位辺りまでは、ちょっとした出来事で順位が入れ替わるようなタイム差でゴールしていることも見逃せない。青山学院の強さは来年以降も続くと思うのだが、レース展開によってはどう転んでもおかしくないレースが繰り広げられそうである。今年の箱根駅伝も楽しませてもらった。

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コメント

  1. sabo より:

    青学は2位に10分以上離す大会新記録で圧勝でしたね

    中大は最後順位を落としましたが6位は万々歳ですね。今年はシード権が目標だったと思うのですが来年は上位に食い込むのを目標にできそう。若くて速い選手が結構いますからね

    2位以下はほんとにコロコロ順位が変わり面白かったです
    ほんとにどう転んでもおかしくなかった

  2. FIYS より:

    saboさんへ

    青学は横綱相撲でしたね。

    中大はシードを獲ったことで、来年以降箱根に照準を合わせやすくなるというプラスポイントがありますからね。楽しみですよね。

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