「55」と「5.5」

ヤクルト7-9巨人

もし村上が55号ホームランを放たずに試合が終われば、全く違った視点でブログ記事を更新しようと思っていたのだが、最後の最後に打席が回り見事に55号ホームランを放ったため、この部分に視点を当てた記事を書きたいと思う。
私はアラフォー世代であり、王氏の現役時代は全く知らないのだが、それでも「55」という数字には特別感があった。リアルタイムで現役時代を見ていなくとも「世界のホームラン王・王貞治」は、やはり特別な存在だった。私がプロ野球を見始めた1988年当時はまだまだプロ野球界が巨人中心で回っている時代であり、王氏のシーズンホームラン記録も聖域的な扱いを受けていたように思う。アレックス・カブレラやタフィー・ローズが55本のホームランを放った時にも、王氏の記録を抜かせてはいけないという空気感が残っていた。こういった空気感については、当時から「なんだかなあ。」という気持ちを持っていたのだが、そこから徐々に空気感は変わってきていた。カブレラのシーズン55本から10年以上が経過した2013年にウラディミール・バレンティンがシーズン60本のホームランを放った際には、王氏の記録を抜かせてはいけないという空気感はほとんどなかったように記憶している(バレンティンが圧倒的なペースでホームランを重ねたからという部分もあるかもしれないが…)。
しかし日本人選手のシーズン50本塁打については、2002年に松井秀喜が50本のホームランを放ったのを最後に到達者が出ていなかった。あれから20年、50号の大台を突破したのは、22歳の村上宗隆だった。そして今日のゲームで菅野から54号ホームランを放つと、9回には大勢から55号ホームランを放ち、ついに王氏の記録に並んでみせた。やはり今でも「55」という数字は特別である。だからこそ夜のニュースでも大きく取り上げられているのだろう。高卒5年目22歳でこれだけのホームランを重ねたことも素晴らしいし、今シーズンは前半からホームランが出づらいと言われていた中で一人飛びぬけたホームラン数を記録していることも素晴らしいと感じる。
村上の背番号「55」についても、王氏のホームラン記録と関係が深いことは間違いない。王氏の記録を目指してもらいたいという意味で「55」を背負った選手と言えば、中日の大豊泰昭、巨人の松井秀喜が有名だろうか?松井が結果を残したことで左のスラッガータイプの打者が入団した時に背番号「55」を与える球団が増えていった印象がある。その松井も達成できなかったシーズン55本のホームランを達成してしまうのだから驚いてしまう。村上はすでにNPBでは図抜けた実力を持った選手になっている。残り試合は15試合、どこまでシーズンホームランの記録を伸ばせるだろうか?バレンティン越えと三冠王がはっきりと視野に入ってきている。

バレンティンのシーズン60本塁打のシーズンは、ヤクルトは最下位に沈み、バレンティンのホームラン記録という個人記録の部分に特化してファンは楽しむことが出来たのだが、今シーズンは現在首位を走っており、リーグ2連覇も見えてきているだけに、村上の個人記録だけに一喜一憂するわけには行かない状況にある。今日のゲームでは、確かに村上が2本のホームランを放ち、「55」という特別な数字に肩を並べたのだが、その一方でゲームには敗れ、2位DeNAとの差が「5.5」まで縮まってきていることも見過ごすわけには行かない。ゲーム数が少なくなってきており、「5.5」という数字は決して小さい差ではないのだが、ヤクルトは今日のゲーム前に2軍の投手8名が新型コロナウイルスに感染したとのニュースが飛び込んできており、決して楽観視できる状況ではなくなってきている。私は何といってもヤクルトファンであり、チームの勝利に喜びを感じるタイプのファンである。もちろん「55」という数字は触れるべき数字であると感じたため、今日のブログで大きく取り扱ったのだが、その陰で「5.5」という数字に引っ掛かりを持っていることも確かである。「5.5」という数字に多少不気味さを感じている。

書きたいことは、すでにある程度書けたのだが、今日のゲームの振り返りも行っておきたい。最初に村上の2本のホームランについて触れておくと、4回に菅野から放ったホームランについては、菅野がインコース高めを狙ったストレートが多少甘く入ってきた印象である。プロ1年目から村上は菅野と対戦しており、当初は手も足も出ない状態だったのだが、徐々にアジャストし、今日のゲームではついにホームランを放ってみせた。村上がプロ1年目の時の菅野は、NPBの中でも屈指の存在だったため打ち崩すことは容易ではなかったのだが、今日に関しては、完全に村上が格上の雰囲気を醸し出していた。当時は横綱菅野に挑む若武者という構図だったのだが、今は、横綱村上に挑むベテラン菅野という構図に変化してきているのかもしれない。
そして9回には今シーズンの巨人の光の1つであるクローザー大勢から外角のストレートをレフトスタンドへ運ぶ3ランホームランを放ってみせた。このホームランに関しては、おそらく大勢は、ほぼ思った通りにボールを投げ込めたと思うのだが、村上はそのコースへのストレートにしっかり反応し、逆方向へのホームランとは思えないくらいの飛距離も出した中での一発となった。
昨日エスコバーから死球を当てられてしまい、状態が心配されたのだが、そんなファンの心配を吹き飛ばす2本のホームランとなった。

試合自体で言うとヤクルト先発石川の投球が振るわなかった。初回こそ無失点で立ち上がったのだが、その後、2回には岡本和に同点ソロホームラン、4回にも岡本和に1点を勝ち越されるソロホームラン、ウォーカーには点差を広げられるソロホームランを被弾してしまった。5回は、1アウト後吉川尚、坂本に連打を浴びピンチを作ると丸にフェンス直撃のタイムリー2ベースを浴び、ここでマウンドを下りることとなってしまった。私は、このブログを書き始めてから10年以上の月日が経過しているのだが、石川の衰えという部分については、それ程触れてこなかったように記憶している。スタミナという面で多少不安を感じるくらいでボールの質はそれ程変わっていないという見立てをしていた。しかしコロナに感染し、一旦離脱した後の投球については、正直衰えというものを感じざるを得ない状況となっている。これがコロナによる離脱によるコンディション面の課題なのか加齢によるものなのかは判断できないのだが、ボールが走らない中で交わす投球に終始する姿が見られ、相手打者に嫌がられていないように感じる。今日の3本のホームランもそうだったのだが、相手打者に気持ちよくスイングされてしまっている場面が目立っている。球速に関しては、元々それ程速い投手ではないため、そんなに心配はしていないのだが、打者の反応が明らかに変わってきているところには不安を感じる。いわゆるキレのあるボールを投げ込めなくなっているように感じる。相手打者に簡単に対応されてしまう場面が目に見えて多くなった印象である。現在ヤクルトは投手の駒不足に悩んでいるため、まだ先発のマウンドに石川が上がる場面はあると思うのだが、そろそろ結果を残さなければ、苦しい立場に追いやられてしまう可能性がある。もう一踏ん張りしてもらいたい。

P.S 8回、9回の失点はもったいなかったですね。8回の代走湯浅の二盗、三盗には驚きました。流石に「機動破壊」でおなじみの健大高崎高校出身なだけはありますよね。

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コメント

  1. 超匿名 より:

     村上は負傷翌日にエースとクローザーから放った一発ですから、申し分のない活躍でしたね。三冠王やMVPとなれば、将来大リーグ移籍が確実でも、功績を称えて永久欠番とかあってもよいと思います。
     バレンティンの記録達成の時は、最下位に終わったシーズンのせめてもの慰めの様な点がありましたが、今季は村上が偉業を達成したがチームはV逸しましたでは喜べません。今季は特に優勝あっての個人記録だと思います。
     投手の側はこの日も先発が大量失点して試合を壊してしまいました。加えて試合前に追加のクラスター発生のニュースが暗い影を差しました。そのメンバーに高橋が入っていることが、もしかしたら十連戦で登板するかもという希望を摘み取るものでした。

  2. sabo より:

    村上に関して言えば、あまりに簡単に55本を達成したように見えたけど村上自身はひたすらしんどくて我慢我慢の末の達成だったでしょうね
    何と言いますが村上は野球と別のスポーツの二つを同時に行っていたようなものだと思うのです
    凄い

    試合については石川大西が良くなかったですけど、湯浅の2盗3盗を許したこと、9回塩見と山崎がお見合いしてランナー3塁行かせたことの失点につながった2つが一番の問題と感じます

  3. FIYS より:

    超匿名さんへ

    55本のホームラン、どのホームランも驚愕の一発と呼びたくなるものばかりだったように感じています。どこかで振り返れると良いと思っています。

    コロナクラスターのニュースはファンも気持ちが落ちてしまいますよね。仕方ないことではあるのですが…

  4. FIYS より:

    saboさんへ

    私は、村上が最も「野球」というスポーツに集中しているという印象を持っています。自分勝手にならない打席での姿勢にそれが表れていると思います。

    8回、9回の失点は反省材料ですよね。

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