上野裕一郎

今日は陸上長距離の上野裕一郎選手について書いてみたい。長距離選手としては珍しく目立ちたがり屋のイメージがあるランナーである。好き嫌いは分かれるかもしれないが、個人的には大好きな選手である。女子の福士選手や一昔前に長距離ランナーのイメージを変えた徳本一善選手のような存在感のあるランナーである。

佐久長聖高校時代から注目される存在であり、高校３年時には、渡辺康之氏が持っていた１万メートルの高校記録を更新した。しかしこの頃は、ヒョロッとした体形に坊主頭、丸メガネがトレードマークというルックスであり、どこか田舎臭さを感じるランナーだった。（個人的な印象です。）
しかし中央大学に進学すると髪を染め、派手なサングラスをかけて大会に出場するようになった。どこかチャラチャラした雰囲気を漂わせ、正に大学デビューと言った感じだった。高校時代とのギャップに驚いたものである。しかし外見がチャラくなったからと言って競技生活を疎かにしていたわけではない。天性のスピードを活かした走りは魅力的なものだった。箱根駅伝では大ブレーキや体調不良もあり、実力を出し切ったレースは大学３年時くらいだったと思うのだが、他の三大駅伝やトラック競技では素晴らしい成績を残してくれた。
個人的に印象に残っているのは、大学１年時の箱根駅伝大ブレーキからの都道府県駅伝での快走である。兵庫のライバル北村とのスパート合戦はすさまじいものだった。一旦は離された上野が最後に猛然と追い込み、抜き去る姿が印象に残っている。
その後も中央大学のエースとしてまた長野県のエースとして活躍した上野は、ヱスビー食品に在籍後も主に５千メートル、１５００メートルで活躍し、世界陸上の日本代表にも選ばれた。
そんな上野が今回の都道府県駅伝では、東京都代表として最終７区に登場した。トップの兵庫北村とは、タスキが渡った時点で１分以上の差があり、またすぐ後ろには愛知の宮脇がいたため、苦しい展開が予想されたが、なんと上野は宮脇を振り切り、トップの北村との差をじりじりと詰めていったのである。しかし残り５００メートルを切った時点でまだ２０秒以上の差があり、兵庫の優勝は決定的となったのだが、そこから上野が物凄いスパートを見せ、最後は５秒差まで迫って見せたのだ。ラストスパートのキレ味は全く衰えていなかった。
高校、大学時代にしのぎを削り四天王と呼ばれた上野、北村、松岡、伊達も２０代後半の年齢に突入してきた。高校時代の実績からすると伸び悩んでいる印象もあるが、上野には今後も大いに期待してみたいと思う。できれば３０代前半でマラソンに挑戦してもらいたい。

豪快なラストスパート、持ち前のスピード、派手な外見、パフォーマンス、波の激しさ、落ち着きのないレース運び、どれもこれも上野裕一郎というランナーの魅力である。今回の都道府県対抗駅伝を見て改めて上野選手の面白さに気付かされた。これからも私たちファンを楽しませてほしい。


にほんブログ村