言わずと知れたオリックスのエースである。と紹介したいのだが、金子千尋の知名度は野球ファン以外にはあまり浸透していないのではないだろうか?
今シーズンも29試合の登板で223回1/3を投げ、15勝8敗、防御率2.01という素晴らしい成績を残している。29試合の登板はすべて先発であり、完投した試合が10もあり、完封も3つある。そして奪三振数200は、リーグトップの数字である。そしてこれらの数字は、沢村賞の選考基準を全て上回っているということである。それでも今シーズンは楽天の田中が24勝0敗、防御率1.27という圧倒的な記録を残しているのでどうしても金子千の記録は霞んでしまう。
この金子千尋、今シーズンだけ素晴らしい成績を上げている訳ではない。08年シーズン~11年シーズンまでは4年連続2ケタ勝利を達成しているし、10年シーズンには最多勝のタイトルを獲得している。プロ入り前から肘の故障に悩まされているという部分はあるのだが、パリーグの他球団のエースと比べても引けを取らない存在であることは間違いない。しかしどうも影が薄く感じてしまうのは私だけだろうか?
この金子千尋、同郷の同世代(1学年下)ということで非常に注目していたのだが、まさかここまでの投手になるとは思ってもみなかった。
長野商業時代は、1年の秋から一気に注目を集めることとなる。当時の長野県の高校野球事情としては、松商学園、佐久長聖という私学2校を中心に回っており、公立高校がこの2校の牙城を崩すのは非常に難しいことだった。そこに突如として表れたのがこの金子千尋だった。長野商業は長野県の古豪ではあったのだが、当時甲子園からは遠ざかっていたはずだ。しかしこの金子を中心に(エースは1学年上のサウスポー内田だったと記憶しているが…)秋の大会を勝ち上がり、そのままセンバツにまで駒を進めた。
1年生ながら130キロを超えるストレートを投げるということで一体どんなごつい投手なのか?と思っていたらテレビでインタビューに答える金子投手は、細身の身体に丸顔色白の童顔で舌足らずな話し方をする可愛らしい少年だった。この少年がそんなに凄いボールを投げていることが衝撃的だった。
当時は私も野球部に在籍していたため、あまり試合を見る機会はなかったのだが、キレの良いストレートと大きな縦のカーブが印象的な投手だった。また当時からコントロールは安定していた印象がある。この金子3年生になると身体も出来上がってきており、最後の夏の準決勝塚原青雲戦で見た時はストレートのスピードは140キロ近くまで出ていたのではないだろうか?下級生時代に比べて間違いなくパワーアップしていた。しかしその塚原青雲に0-1で敗れ最後の夏の甲子園は逃している。塚原青雲にも長谷川という速球派の投手がいたのだが、いかにも力を込めて投げ込む長谷川と無理のないフォームでキレの良いボールを投げ込む金子の対比が面白かったように記憶している。
そんな長野県の高校球界には中々現れない完成度の高さを見せつけていた金子は、高卒で社会人の名門トヨタ自動車に進む。ここからはあまり情報も入ってこなかったため分からなかったのだが身体が出来上がるともにそのまま投球にも凄みが出て来たようで、04年のドラフト自由枠でオリックスに入団する。あの金子が自由枠でプロ入りということでここでも驚いたことを覚えている。
そんな金子はプロ入り後も私達長野県の同世代の高校球児を驚かす活躍を見せてくれる。綺麗な投球フォームはそのままにストレートのスピードは150キロを記録するようになり、変化球もカーブだけではなくカットボールやスライダー、シュート、フォーク、チェンジアップ、ツーシーム、シンカーとありとあらゆる球種を高レベルで操るとんでもない投手に成長していた。あまりテレビで見る機会がないのは残念なのだが、調子が良い時の金子を打ち崩すのは至難の業である。決して強豪チームではないオリックスで安定した勝ち星を上げ続けられるのは、金子の凄さを表している。
金子が活躍した同時期には、にソフトバンクの和田、杉内。日本ハムのダルビッシュ。ロッテの成瀬。西武の涌井、岸。楽天の岩隈、田中など素晴らしい先発投手が混在していた。そんなパリーグにあってこれらの投手に引けを取らない活躍を続けている金子千尋に今こそスポットライトをあてて欲しい。玄人が唸るだけでなく、あまり野球を知らない人が見たとしても凄さが伝わる投手だと思う。
身体が出来上がってくるとともに投手としての実力も上げていった成長曲線は、野球少年のモデルになるのではないだろうか?ヤクルトのルーキー小川も最終的にはこの金子千尋のような数字を残せる投手になってくれたら嬉しいのだが…
金子千尋投手が今後も怪我なく投げ続けられることを陰ながら応援しています。
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コメント
特に投手の場合、チームの成績が印象に影響することがありますよね。
オリックスが弱くて地味に見えるかも知れませんが、バネがあり、スピードもキレもある投手だなと見ています。
始めまして。
読ませていただきました!
私も長野県民であり、金子投手が高校野球で活躍している時は中学生だったのですが、まさに背番号10のエースという金子投手が憧れでした。
当時のエース、速球とスライダーが素晴らしい内田投手との二枚看板はとても記憶に残っています。
金子投手の今後の活躍を長野県から応援しています。
新潟出身と紹介されるのが歯痒いですが。。
> パインさんへ
そうですね。チーム成績もあってかイマイチ知名度が上がって行かない印象があるんですよね。怪我もあって日本代表などにも選出されていないこともあって地味に映るのかもしれませんね。
> 優さんへ
初めまして。コメントありがとうございます。金子2年次の松商学園との決勝戦も激闘でしたよね。当時の長商は公立高校とは思えないような強力メンバーでしたね。
新潟県民も長野県民も一緒になって応援していきましょう。
センバツには東海大三が選ばれそうですね。楽しみにしましょう。