第90回箱根駅伝振り返り

今年も復路はほぼ見れなかったのだが、第90回箱根駅伝を振り返ってみたい。「2014年箱根駅伝区間エントリー発表」の記事も合わせてご覧下さい。

優勝 東洋大学ー見事としか言いようのない圧勝劇だった。特に手薄になるのでは?と思われた復路で復路新記録を叩き出すなど駒沢大学をはじめとした他の大学に付け入る隙を与えなかった。88回大会の優勝も物凄かったのだが、今回は「山の怪物」柏原なしでのものであり、88回大会と同等の評価をして良いと思う。
往路は、エントリーの段階で補欠に回っていた設楽兄弟を3区に悠太5区に啓太という形で配置してきた。駒沢大学の配置や当日の気象状況を見て決めたということだが、このような戦略は層が厚い大学でなければ難しい。(設楽兄弟と言う実力の抜けた選手が2人いたことも大きかった。)酒井監督はまだ37歳と若いが、駒澤大学の大八木監督に負けず劣らずの指導者になりそうだ。
今回の総合優勝に関しては、もちろん3区、5区の設楽兄弟の区間賞が大きかったと思うのだが、レース展開的な部分から言うと1,2区の田口、服部勇馬が駒沢の中村、村山から大きな遅れを取らなかったが大きかったように思う。正直この2人がここまで走るとは思っていなかった。特に田口はハイペースの1区で区間3位で走ったことには驚いた。
1区~10区までほぼノーミスで走り抜いたと言って良いだろう。出雲、全日本を制覇してきた駒沢を実力で倒したところに東洋の強さを感じた。

2位 駒沢大学ー駒沢も流石の襷リレーを見せてくれた。ブレーキもなくいかにも駒沢らしい駅伝だったのだが、敢えて言うなら2区の村山と9区の窪田で合計2分くらいは記録を縮めたかったのではないだろうか?それほどまでに強いランナーだと感じていたのだが…それでも毎年のように好チームを作り上げてくる駒沢大学には脱帽である。以前は強過ぎたり、大学を卒業後に力を発揮できない選手が多いように感じてどこかアンチ的な目線で見ている自分がいたが、最近はトラックでも結果を残し、卒業後も記録を伸ばし続けているランナーを育成している印象もある。これなら高校生も駒沢大学に進学したいという気持ちになるのも頷ける。特殊区間である5区、6区でも馬場、西澤が良い走りを見せており、来年も優勝候補筆頭と見て良さそうだ。今回は東洋に力負けした格好になったが、今後も楽しみな大学である。

3位 日体大ー東洋、駒沢があまりに強かったため穴が目立ってしまったが、それでも3位と言う成績は褒めて良い結果なのではないだろうか?1区山中の区間賞は、大迫、中村、田口らを押し退けてのものであり記録的にも素晴らしい。かなり価値のある走りだった。このまま流れに乗れればと思ったのだが、2区本田、3区勝亦で失速してしまった。主力と言っても良い選手がこの成績では優勝は遠ざかってしまう。また5区の服部も1秒差で設楽啓太に及ばず、区間賞を逃してしまった。もう1分半~2分くらい良いタイムで走れるのでは?と見ていたが、そんなに甘いものではなかった。柏原の偉大さが改めて分かった気がする。それでも6区鈴木の快走、9区矢野の区間賞などで早稲田を逆転しての3位確保で意地を見せてくれた。

4位 早稲田大学ー5区候補だった山本の欠場、1区大迫の失速で苦しくなるのでは?と思ったのだが、2区の高田が区間賞の走りでチームに勢いを与えると武田、平の1年生コンビも素晴らしい走りを見せ、復路でも山下りの三浦、今季不調だった柳が結果を残してみせた。復路でも戦えるのが近年の早稲田の特徴である。大迫以外は来年も残るのでここに山本が加わるとかなり面白いチームになりそうである。価値ある4位である。

5位 青山学院大学ー青山学院も素晴らしかった。久保田など主力が欠場するなかで終始5位前後でレースを進めそのまま最後まで走りきってしまった。原監督の「補欠の選手で戦ってもシードが獲れた。」という言葉にチームの層の厚さを感じた。1区一色の積極的な走りと耐える区間になるのでは?と感じていた2区の神野の安定した走りが印象に残った。東洋、駒沢の壁は高いかもしれないが、この2強を崩せるようなチームを作ってほしい。

6位 明治大学ー昨年に続いて大きなブレーキを出してしまい、実力を発揮できなかった。残念な結果となってしまった。1区~4区まではほぼ想定通りの走りが出来たのではないだろうか?しかしスペシャリスト大江が抜けた5区で横手が区間19位に沈んでしまった。横手は元々走力はあるだけにはまれば面白いのでは?と感じていたのだが裏目に出てしまった。復路も6区の廣瀬が素晴らしいタイムで山を駆け下り区間賞を獲得したが、この勢いを持続できず10区のブレーキもあり6位という結果になってしまった。来年は6区廣瀬が抜けることもあり、山要員の育成と大ブレーキをなくすことがテーマとなりそうだ。個々人の走力は高いだけにもったいないレースとなってしまった。

7位 日本大学ー日大の7位は良い意味での驚きだった。5区キトニー起用は当たらなかったが、他のランナーが実力通りの走りを見せてくれたのではないだろうか?キトニーが区間10位でも総合で7位に食い込めるとは…自分たちの走りに集中したことが好結果を呼んだのではないだろうか?今大会のポジティブサプライズである。

8位 帝京大学ーここは前回大会から順位を落としてしまったが、中野監督がしっかりチームを作り上げている印象がある。高校時代からの有力ランナーがいなくてもこれだけ戦えるということは素晴らしいことである。1区2区の出遅れから立て直せないチームが多い中で2区終了時点で16位だった順位を8位にまでジャンプアップさせたところに帝京の底力を感じた。2区、5区を攻める区間にできるような選手が登場すれば優勝戦線に顔を出してもおかしくないチームになりそうだ。

9位 拓殖大学ー前々回大会の大敗からチームが崩れてしまったように感じていたのだが、そこは名将岡田監督、しっかり立て直してきていた。区間1桁で走ったのは2区ダンカン、4区佐護、5区尾上だけだったが、7位の日大同様堅実な走りでシード獲得となった。来年もシードを獲得できれば上昇気流に乗ってきそうだ。

10位 大東文化大学ー往路に主力を並べる形が上手くハマった。市田兄弟でレースの流れに乗り、5区片川でシードを引き寄せた印象だ。復路に駒を残しておらず、厳しいかな?とも思ったのだが、復路も良く粘っていた。チームとしてイメージしていたレースが出来たのではないだろうか?

シード争いに関して言えば、日大、拓殖大、大東文化大のシードは「良く獲れたな。」といった印象である。レースの波に乗り、全員が最低限の走りをすればそこそこ戦えることを示してくれたのではないだろうか?

シードを獲れなかった大学の中では、山梨学院大学に関しては、オムワンバが疲労骨折で途中棄権ということで非常に残念だったが、棄権となった以降の選手もしっかり走っていたのが印象的だった。オムワンバ、井上が残った中で年末の高校駅伝を制した付属高校の選手達が入学してくることを考えると今後の飛躍が期待される。
中央学院大学、東京農業大学は、もう少しシード権争いに加われると思っていたのだが、中央学院は主力の小ブレーキで波に乗れず、東農大は1区で大きく出遅れてしまったのがあまりにも痛かった。

応援していた中央大学は見せ場なく15位に沈んでしまった。2区終了時点で最悪でも10位の背中が見える位置に付ける作戦だったと思うのだが、新庄、相場で波に乗ることが出来なかった。復路の代田、多田、須河辺りも機能せず、2年続けてシードを落とす結果となってしまった。来年本戦に戻れるかどうかも怪しいものである。奮起してもらいたい。

箱根駅伝の戦術にも流れがある。今回は1区が全てと言っても良いくらいだった。大迫という力のあるランナーに付いて行って結果を残した東洋、駒沢、日体大はやはり力のあるチームだったのだろう。
以前は1区はスローペースで進むことが多かったが、最近は1区を重視するチームも増えている。5区の距離が伸びてから「山を制する者が箱根を制す。」状態が続いているが、シード権争いを考えた中では序盤に大きく出遅れてしまうと非常に厳しくなってしまうことを感じさせる前回、今回の箱根駅伝となった。

絶対王者の風格があった大八木監督率いる駒沢大学に若い酒井監督率いる東洋大学が力勝負を挑んで見事に勝利したこと今回の箱根駅伝は見応えのあるものだったと思う。
来年も間違いなく面白いレースとなるだろう。

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