八重樫東魂のボクシング

WBC世界フライ級王者の八重樫東(31=大橋)が、同級1位ローマン・ゴンサレス(27=ニカラグア)に9回2分24秒、TKOで敗れた。

 アマ87戦不敗、プロでも39勝33KO無敗の最強の挑戦者「ロマゴン」に対して、真っ向勝負。「やはりロマゴンは強かったです。打たれたら打ち返す根本的な勝負しかできなかった」と振り返ったが、打たれても打たれても、ひるまずに拳を返す姿に会場は興奮の渦に。最後はコンビネーションからの左フックでダウンを奪われて審判が試合を止めたが、ファンから「やえがしーーー!」という大きな声援は最後まで止むことはなかった。

大橋ジムの大橋会長は「これがボクシングなんですよ。強い人が強い人と戦うのが」と八重樫をたたえていた。(日刊スポーツ引用)

過去記事→「井上日本人最速王者に!八重樫はロマゴンと!」、「井岡VS八重樫 一歩も引かない激闘


間違いなく世界のボクシング界の軽量級を引っ張っているのはローマン・ゴンサレスである。そのゴンサレス相手に八重樫は泥臭く打ち合いを挑んだ。まあ2ラウンドが終わった段階でステップワークで捌ける相手ではないことが分かったから足を止めて打ち合うという選択肢しかなかったのだと思う。この選択は間違っていなかった。八重樫の気持ちの強さは本物だった。しかしロマゴンは強かった。それでも「ロマゴンは強かった。」という一言で片付けるのはもったいないような激闘だった。

3回にゴンサレスの左フックでダウンを喫してしまった所で八重樫は相当劣勢に立たされてしまった。それでも4ラウンドは足を止めて打ち合うことで乱戦に持ち込むことに成功する。非常に危険な選択ではあるのだが、ゴンサレスの多彩な角度からのブローを制限できたことは良かったのではないだろうか?ここからは壮絶な打ち合いとなっていった。
ゴンサレスのパンチの迫力はテレビ越しに見ていても相当の物を感じた。徐々に八重樫にダメージが蓄積されていくのもテレビ越しにはっきりと分かった。それでも八重樫は倒れなかった。心が折れることは最後の瞬間まで一回もなかったのではないだろうか?「もうダメか?」と思った所から何回反撃のパンチを繰り出したのだろうか?7回辺りからは自分のパンチでバランスを崩すような極限状態になりながら、ゴンサレスの軽量級としては破格の破壊力を持ったパンチを浴びながらも強い気持ちでゴンサレスに立ち向かっていった。「おっ!」と思わすようなシーンも何度も作り出してくれた。「神」扱いのゴンサレスもやはり人の子である。勝利した後の表情を見ていると八重樫のタフネスぶりに嫌気がさしていたのではないだろうか?もしくは不気味さを感じていたのではないだろうか?
これほど気持ちの強い日本人ボクサーが現代にも誕生することに驚いた。言い方は悪いかもしれないが、八重樫は昭和の時代の日本人ボクサーを思わすような雰囲気を持っているように感じる。もちろんアマチュア時代から実績を上げてきている選手でもあり、テクニックのある選手なのだが、世界初挑戦でイーグル京和に手も足も出ずに完敗に終わってから這い上がるために苦労する中で気持ちで戦うボクサーに変身していったのではないだろうか?
世界タイトルを奪取したポンサワン戦での激しい打ち合い、両目を大きく腫らしながらも井岡と最後まで打ち合った世界統一戦、ソーサをスピードとテクニックで翻弄した世界戦、そして今日のローマン・ゴンサレスとの死闘。どの世界戦も印象深い物ばかりである。
不器用な戦い方でも一歩も引かずに戦うその姿勢が感動を呼ぶ。私達に勇気を与えてくれる。八重樫東はそんなボクサーである。
今日のために身体を仕上げ、メンタルを仕上げてきたことがよく分かった。最後まで勝ちにこだわり続けた姿勢には脱帽である。

八重樫は負けてしまったが、今年の年間最高試合の候補に挙がって来るのではないだろうか?

P.S 村田と井上はしっかり勝ちましたね。村田に関しては、普段私がミドル級の試合をほとんど見ることがないので評価が難しいのだが、やはりオリンピック金メダリストのことだけあって簡単には負けない印象がある。世界的に層の厚いミドル級には強豪がゴロゴロしている訳だが、これからどこまで勝ち進んで行けるだろうか?ここからのマッチメークが難しくなってきそうである。世界戦にたどり着ける可能性は五分五分くらいの確率だろうか?
井上は改めて実力の違いを見せつけてくれた。世界戦とは思えないような実力差だった。相手のサマートレックは小柄でしかもガードを固めて来ていたため、打ち崩すのは中々難しそうに感じたのだが、多彩なブローであっという間にペースを掴んでしまった。恐れ入った。井上に見合った相手となると…最終的にはローマン・ゴンサレスとなるだろうか?井岡辺りと今すぐにやってもいい勝負をしそうである。芸術的な井上のボクシングも見応え十分である。

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