第91回箱根駅伝振り返り

明けましておめでとうございます。今年もまずは箱根駅伝の振り返りの記事から書いていきたいと思う。区間エントリーの記事はこちらから→「2015年箱根駅伝区間エントリー
今大会も非常に見所の多い大会となった。特に青山学院大学の5区神野の走りは圧巻だった。順大今井、東洋大柏原に次ぐ3代目「山の神」と言って問題ない素晴らしいタイムを叩き出した。1区~4区までは5強と呼ばれた大学がいづれもほぼ想定内のレースを展開していたのだが、5区神野の快走でレースが一気にぶっ壊されたと感じた大学関係者も多いのではないだろうか?まさに今井率いる順大、柏原率いる東洋大と同じ勝ちパターンである。
それでは大学ごとに振り返っていきたい。

優勝 青山学院大学ーもちろん今大会優勝の一番の立役者は5区の神野なのだが、ここまでチームを作り上げてきた原監督の手腕も相当の物である。最近は高校時に実績を残した選手が青山学院に入学してくるケースは多いのだが、そういった土壌を作り上げたのも原監督と言って間違いないだろう。そして今回の「ワクワク大作戦」も見事にはまった。特に5区の神野である。前回大会の2区での好走にも驚かされたのだが、5区で柏原のタイムを上回って来るとは全く予想出来なかった。原監督は「78分30秒くらいで走れる。」と戦前に語っていたと思うのだが、原監督は結構三味線を弾くタイプの監督だけに良くて78分くらいかな?と思っていたのだが…1人だけ山を山と感じさせないようなスムーズなフォームの走りは見事だった(柏原の力強さというよりは今井のスムーズな山上りに近いのかな?と感じた。)。
神野以外の選手もほぼ自分の実力を発揮できたのではないだろうか?速さと強さを兼ね備えた1区久保田の見事な走りでリズムに乗り、2区一色もライバル校駒澤大学の村山のハイペースに惑わされず、しっかり67分台の好タイムで走りきって見せた。チーム内で上位の戦力ではないであろう3区渡辺、4区田村、6区村井、10区安藤辺りも区間上位で繋ぎ、4区の1年生田村に至っては区間新記録の見事な走りを見せてくれた。
復路にスピードランナーの小椋、藤川を残せる辺りに青山学院の層の厚さを感じた。総合記録の10時間49分27秒という記録もとてつもない記録である。まさか88回大会の東洋大の記録がこんなに早く更新されるとは思いもしなかったため只々驚いている。素晴らしいレースだった。

2位 駒沢大学毎年同じようなことを書いているようだが、駒澤大学も「負けてなお強し」の印象を残させるようなレースを展開してくれた。ここ数年箱根では勝てていないが、トラックでも勝負できる選手を育成できていたり、全日本大学駅伝でしっかり結果を残し続けているため指導の方向性は間違っていないと感じる。大八木監督は一昔前の黄金時代とは少し考え方を変えたのではないだろうか(以前は箱根駅伝で勝つことに重きを置いている監督に感じていた。)?
5区の馬場に関しては、ハイペースで入り過ぎたとの話もあるが、天候に恵まれていたことを感じるとそこまで速く入りすぎたとも言えないのではないだろうか?どちらかというと神野のあまりに驚異的な走りを目の当たりにして心が折られてしまったのではないか?と感じた。心理的なダメージが身体的なダメージに繋がった部分もあるのではないだろうか?しかし最後は何とか往路のゴールに飛び込むと、復路のメンバーも堅実に走り、総合2位を確保した。
他の優勝候補からマークされながらレースを進める難しさを感じた大会だったのではないだろうか?1区中村、2区村山はほぼ実力通りの走りを見せたと思うのだが、それでも他の大学を引き離すことは出来なかった。中村ー村山でリードされないよう1区2区に実力者を配した他大学の戦術が当たった形となった。それでも崩れない駒澤大学は来期以降も大学長距離界の中心に居座るのではないだろうか?

3位 東洋大学ー連覇を狙ったが、戦前から予想されていたようにここ数年に比べて戦力が劣っていたということなのだろう?それでも実力通りの走りで箱根路を盛り上げてくれた。特に1区田口、2区服部勇の2人が駒澤大学の中村、村山と対等に渡り合い、2区服部勇が区間賞を奪い、トップに躍り出た場面は見事だった。注目の3区には復路タイプかな?と感じていた上村が起用されたが、他の上位校に比べて少しスピードで劣ってしまったかもしれない。高久が走れなかったようなので仕方ない部分もあったかもしれないが、正直今回に関しては駒不足だったのだろう。それでも常に上位で勝負することが出来たため、復路のメンバーもそれなりの走りは出来たのではないだろうか?

4位 明治大学ー往路に力のあるメンバーを揃えるのは、ここ数年の明治大学のパターンなのだが、ここまで実力を出しきったのは初めてなのではないだろうか?と感じさせるほど往路は素晴らしいレースを見せてくれた。5区に襷が渡る前に首位に立ちたいという思いもあったかもしれないが、流石にそこまでは望み過ぎだろう。5区に襷が渡る時点でトップの47秒差であれば十分及第点が付けられるはずだ。個人的に心配していた文元も前回大会の横手のような状況には陥らず無難に走って見せた。それでも神野にあれだけの走りをされては…復路の面子を見渡してみると総合優勝は厳しい状況での往路2位となってしまった。それでもほぼ狙い通りのレースが出来たのではないだろうか?実力者の4年生が一気に抜けてしまうだけに来季は厳しいシーズンとなりそうだ。特に山要員を確立できるかどうかが大事になってくると思われる。

5位 早稲田大学上位4校の往路が素晴らしかっただけに耐えるレースとなってしまったが、4区まではまずまずの走りが出来ていたのではないだろうか?できれば山本に襷が渡る時点でもう1分半から2分はタイムを縮めておきたかったとは思うのだが…(この時点では「山の神」になれる可能性が高いのは神野ではなく山本と感じていたため…)山本が一気に順位を上げて来るのでは?と思っていたのだが、今大会の山本は本調子ではなかったようだ。結局区間10位の平凡なタイムに終わってしまい優勝争いからは完全に脱落してしまった。今季で渡辺監督は退任とのことだが、来季はどういった体制になるのだろうか?

6位 東海大学ー一昔前は優勝争いが出来るチームを作っていたのだが、ここ数年は不振が続いていた。そこに呼ばれたのが佐久長聖高校で監督を務めていた両角監督だったのだが、ようやくチームが上昇気流に乗りそうである。今大会は特に2区を走った1年生の川端の走りに驚かされた。好条件だったとは言え、他大学のエースと渡り合って68分台を出す辺りに長距離適性を感じさせた。先輩の村沢のような強いランナーに成長して行くだろうか?その他にも1,2年生の活躍が目立ち、来季以降面白い存在になってきそうである。

7位 城西大学ここの7位が個人的には1番の驚きだった。大エースの村山の2区での好走で波に乗った。正直村山以外に力のある選手がいないかな?という印象が強くシード争いに絡んでもちょっと厳しいかな?と予想していたのだが、山の5区6区で奮闘し、最後は10区寺田の区間賞もあり見事に7位に食い込んでみせた。シード常連になるにはまだ時間が掛かりそうだが、今回のレースに限っては良い結果だったのではないだろうか?

8位 中央学院大学こちらは往路につぎ込んだ実力者がしっかり結果を出してみせた。1区のスピードランナー潰滝が区間5位の好スタートを見せると2区海老澤が実力を出しきり、3区塩谷で一気に順位を上げてみせた。前回大会のリベンジとなった及川が5区で80分切りを達成し、最高の形で往路を終えたのではないだろうか?復路はメンバー的にも耐える駅伝となったが、中位を確保して最終的にはしっかり8位に粘って見せた。狙い通りのレースが出来たのではないだろうか?

9位 山梨学院大学ーエースオムワンバを欠き、1区で大きく出遅れた時にはシードの望みは薄いと感じたのだが、もう一人のエース3区の井上の激走でチームを生き返らせ、復路は選手層の厚さで他大学を一気に追い上げ、最終10区で9位に滑り込んだ。前回大会の事もあったと思うのだが、上田監督はよくオムワンバを外す決断をしたと思う(決断という状況ではなかったのかもしれないが…)。シードを逃した中央大学がコンディショニングの見極めに失敗し10区に多田を配置してシードを逃したのとは対照的な結果となった。留学生に頼るだけではない新たな山梨学院大学船出の年になったのかもしれない。

10位 大東文化大学ー2区市田孝、3区平塚が思ったより伸びなかったが、5区に配置した実力者市田宏の好走が大きかった。よく市田宏を5区に配したと思う。復路も非常に厳しい駅伝となったが、中央大学の失速もあって何とかシードを確保した。今年で主力が一気に抜けるだけに今回のシード獲得は非常に大きいものとなった。

11位以降のシードを逃してしまった大学では個人的に応援している中央大学の失速が非常に残念だった。89回大会の5区棄権以降完全にチームの歯車が狂い出してしまった。しかし今回は考えられ得る中では最高のレース展開を見せてくれていたと思う。正直6区終了時点で80パーセントくらいはシードを獲得できると考えていたのだが…復路のメンバーの中でも信頼がおけると考えていた多田の大ブレーキは残念だった。足の痛みをおして完走する姿は何とも切ないものだった。誰が悪いという訳ではないのだが、まだエントリー変更の枠を残していただけにファンからすると少し残念な思いに駆られたのも事実である。それでも毎回気持ちの入った走りを見せてくれる1区町沢の積極的な姿勢が連鎖するように他の選手も積極的に走っていく姿にはここ2大会では見られなかったものを見ることが出来嬉しかった。しかし今回シードを獲れなかったことにより、来季は本当に連続出場が途切れてしまうかもしれない。新庄、永井の2枚看板もいなくなってしまうだけに大ピンチであることに変わりはない。

長々書いてきましたが、やはり箱根駅伝はビッグイベントですね。私は大好きなレースなのですが、やはり世界に通用するランナーの育成という面ではちょっと苦戦していますよね。「箱根は通過点。」という言葉を放送内でもよく耳にするのですが、実際に世界で戦える箱根戦士は中々出てきませんよね。いつの日か箱根駅伝を経て世界の舞台でメダルを獲得できるような選手の出現を楽しみにしたいと思います。
また5区の距離については個人的にはそろそろ以前の距離に戻してもらいたい気持ちが強いです。流石にレース全体を見た時に5区の比重が重すぎるように感じます。(柏原が卒業した時が1つのタイミングかな?と思っていたのですが…次のタイミングは神野が卒業したときかな?)

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